第55回安田記念(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 春のマイル王決定戦、安田記念(GI)が目前に迫ってきた。ここ数年の短距離路線の停滞ぶりを引き継ぎ、今季も短距離路線は各馬一長一短で決め手を欠く状況。それに加え、今年の安田記念には香港から実力馬が3頭参戦。これが混戦に拍車をかけ、実に難解な一戦となった。

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 出走メンバーの能力比較も難解な今年の安田記念だが、それに加えてここ2年の安田記念がそうであったように、今年も馬場状態よる有利不利が(各馬の能力が接近しているだけになおさら)明暗を分けそうに思う。それだけに当日の馬場状態を見極めないうちの予想は無謀とも言えるものだが、馬場状態については現時点での予測という前提条件の下で考えてみたい。

 今週の東京競馬場は前2週までとは異なり、再び京王杯スプリングカップ(GII)やNHKマイルカップ(GI)が行われた週と同じAコースに戻る。その上、今週の関東地方は雨が続いているとなれば、やはりこの2週同様にコースの内側が断然馬場状態が良くなり、現時点での予測としては、内目を通れる馬が有利と考えていいように思う。

 そのことも踏まえた上で、中心に推したいのは香港のスーパーホース◎サイレントウイットネスだ。サイレントウイットネスは2003、2004年の香港スプリント(港GI)を連覇するなどデビュー以来無敗の17連勝を達成したことで、日本でもその名を知るファンは多いだろう。もちろん、それだけで盲目的に中心に推すというのは無謀な話で、初のマイル戦となった前走のチャンピオンズマイル(港LGI)で2着と敗れたように、やはり1600mの距離はギリギリだろうし、父のEl MoxieがMr.Prospector系とくれば、かつての安田記念では距離の壁、底力の差で通じないタイプだったように思う。しかし、上述したように今年の安田記念は内目を通るスピード馬が断然有利と予測されるAコース使用。実際、NHKマイルカップではMr.Prospectorエンドスウィープ産駒のラインクラフトと母の父にDanzigを持つデアリングハートという、一本調子のスピードとパワーで押すタイプの血統馬(サンデーサイレンスの血の後押しがあったという反論もあるかもしれないが)がワン・ツーフィニッシュを決めている。となれば、サイレントウイットネスがスピードとパワーで押し切ってしまうシーンも充分あるはずだ。騎手時代、1987年のジャパンカップ(GI)で断然人気の名牝トリプティクに騎乗しながら馬群を捌けず4着に終わったアンソニー・クルーズ氏が、調教師としてここで雪辱を果たすシーンを期待したい。

 相手には少し捻って○バランスオブゲームを推してみたい。ここまで、器用なレース振りでGIIまでは勝てるものの、GIではパンチ不足のため勝ちきれないレースが続いてきた同馬。しかし、現に昨年の安田記念で3着と、能力的には通用の余地は充分あるはず。その昨年は外枠を引いて外を回らされた分もあったし、今季は昨年の勝ち馬ツルマルボーイも不在。今年は4枠8番と昨年に比べれば充分すぎる好枠。鉄砲駆けのタイプだけに、前走からの間隔が空いたことは全く問題ない。この馬のスピードと器用さを生かせる舞台が整えば、上位争いの可能性は充分だろう。

 3番手以下はさらに難解も、大穴狙いなら▲ユートピアはどうか。ここまで府中のマイル戦は2戦してともに着外も、これは3歳時のNHKマイルカップ4着に昨年の安田記念4着と、決して内容は悪くない。7枠14番というのはだいぶ外だが、被されると良くないタイプだけにむしろこれは歓迎材料。サイレントウイットネスを行かせてこれをマークする形になれば、流れ次第では上手く馬場のいい所を通っていけそう。そのままスピードに乗って行ければ一発があっておかしくなさそうだ。

 △ブリッシュラックは、前走のチャンピオンズマイルでサイレントウイットネスの連勝をストップさせた強豪。父ロイヤルアカデミーIIは平坦向きの印象はあるが、日本でも活躍馬を出しているように、馬場適性はあるだろう。前走、直線でインを強襲してサイレントウイットネスを捉えたように、追込み脚質でも内を衝ける気性ならAコースでもチャンスはありそう。そのためには8枠16番と外過ぎる枠を引いてしまい、その分若干狙いを下げたが、そこはフランスで大活躍した名手ジェラール・モッセ騎手。一昨年、出遅れながら直線で馬群を裁いて猛追したイーグルカフェのイメージで競馬ができれば、直線一気があってもおかしくない。

 一方、△テレグノシスは以前に比べてマシになっているとはいえ、左回りでは外に膨れる癖があるだけに、あまり強引に馬群には入れたくないクチ。それだけにこのAコースは条件的には厳しいように思う。それでも同じAコースの京王杯スプリングカップで直線不利を受けながら馬群を捌いての3着と、やはり底力は上位。またしても外枠を引いてしまった不運を嫌って一枚評価を下げたが、ロスのない競馬ができれば、終わってみればこの馬が一番強いという結果も充分ある。この馬で様々な経験を積んできた勝浦騎手の意地に期待したいところだ。

 △アサクサデンエンは、前走の京王杯スプリングカップがレコード勝ちとはいえ馬場状態に恵まれたこともあった。とはいえ、二走前のマイラーズカップ(GII)でも直線一気の末脚で追込んで3着と、力をつけてきているのは確か。今回も京王杯スプリングカップと同じAコースだし、この馬自身1600mへの距離延長はむしろ歓迎のクチ。出遅れ癖があり、後方から外を追込む形となっては勝ち負けまでは苦しいと思えるだけに、中心に推すには危険があると見るが、スタート五分から流れに乗っていけば前走の再現も。

 マイラーズカップを勝ったローエングリンは、ここ2年の安田記念が一番人気に推されながらそれぞれ3着、5着。前走久々の勝利で復活を印象付けたとはいえ、以前に比べて極端に良くなった印象もない。ここ2年が前残りの馬場に恵まれながら勝ちきれていないだけに、今年も条件的には恵まれる可能性が濃厚とはいえ勝ち負けまではどうかという気がする。むしろ同じマイラーズカップ組なら後方からの競馬で4着に追込んだ△カンパニーの方が面白いだろう。近走は追込み一辺倒の競馬が続いているが、もともとは好位差しの競馬もこなしていた馬。今季絶好調の福永騎手をパートナーに迎え、一変があっておかしくなさそうだ。以下、前走都大路Sで5着と破れて大幅に株を落としたとはいえ、昨年のオークス(GI)で内を衝いて伸びた脚が不気味な△スイープトウショウ、香港勢では人気薄ながら父が1994年の安田記念3着のドルフィンストリートという血筋が不気味な△ボウマンズクロッシングまで、混戦だけに手広く流しておきたい。

 なお、前走で復活の勝利を果たしたダイワメジャーは、その前走がいかにも相手恵まれということと、やはりGIでは全く不振の柴田善臣騎手騎乗というのが引っかかるし、ダンスインザムードは前走の内容に気性の成長が見られない点が不安。アドマイヤマックスは近二走の内容から現在はむしろスプリントの方に適性が見られるように思う。それぞれ内有利の馬場に対応した競馬ができそうなクチだけに不気味ではあるのだが、人気ほどの信頼性があるとも思えず、今回は見送りとしたい。