アングロアラブ系単独競走の終焉―福山市営競馬開設60周年記念 アラブ特別レジェンド賞 観戦記―
お久しぶりです。日本国内におけるアングロアラブ系単独の競馬が終幕する*1ということなので,せっかく近在しているのも何かの縁だろうと思い,2009年9月27日,重賞・アラブ特別レジェンド賞が開催される福山競馬場(広島県福山市)を探訪しました。
JR福山駅からの交通手段としては,競馬開催日には福山駅前のバス停から無料送迎バスも出ているのですが,駅の南口(福山城方面ではなく,バスターミナル方面)を出てすぐの地下にある福山駅南有料自転車駐車場で1日150円のレンタサイクルが行われていますので(要・身分証),自転車を借りて街並みを散策しながら競馬場へ向かうことにしました。駅前の大通りを一本道,芦田川方面へ南下するだけですので,初めての人でも道に迷うことはまずないでしょう。自転車で駅から競馬場までの所要時間は約10分です。
競馬場の入場門で100円玉を投入すると,ゲートが開き,あっという間にメインスタンド前に到着します。入場門わきからは,専門予想紙売り場と食堂が立ち並んでいて,パドックまで至近距離です。実にコンパクトな配置です。
ちなみに,食堂の店内は,どう見ても“昭和”。うる覚えですが,おでん500円,焼きそば300円,生ビール300円,かき氷200円だったでしょうか。そういえば,ホルモン焼きそば400円なんてやつもあったなあ。…おや? ちなみに,ゴール板前とパドックや食堂の間は1分とかからず往復できますから,レースの合間に飲み食いして憩いながら,パドックをじっくり観察して,馬券購入&生観戦を繰り返しても,まったく時間にゆとりが残ります。それにしても,福山競馬場を訪れたのは数年ぶりですが,相変わらずロハスな競馬場のままでした。
たまにはオッズパークを使わなければということもあり,競馬場の中にいるにもかかわらず,あえて携帯電話から馬券購入をちまちまと繰り返しながら,第10レースを待ちます。一日の馬券を予算内で済ますためには,現金を持ち歩かないに限るんですよ(小市民的な生活の知恵)。
さて,この日のメインスタンドには,アングロアラブ系単独競走の終幕を告知する看板が掲げられていました。ちらほらと報道関係の腕章を着用した人も行き来しており,それなりに一般紙を含めて報道関係からの注目も大きかったようです(たとえば,中国新聞,福山エース。他に,RCC中国放送やNHKも見かけました)。
それにしても,この日の福山競馬場,人が多すぎ。今年度の福山市営競馬は単年度黒字の達成が極めて厳しい状況下にあるという地元紙の報道があったばかり。主催者の福山市は競馬事業継続の前提条件として「単年度収支の確保」を掲げているため,急速に来年度以降の開催に向けて不透明感が増しつつあります。にもかかわらず,この人出…。“この入場者数で赤字になるのはなぜだろう?”と思わず小首をかしげたくなります。
肝心のアラブ特別レジェンド賞のほうは,1番人気に応えてザラストアラビアンが優勝しました(NAR競走成績)。勝因は宿命的としか思えない馬名*2。本調子ならばフジノコウザンで鉄板だったのでしょうが,3週間前に捻挫した影響でこの間馬場入りできないままだったのがさすがに堪えた模様*3。それでも2着に粘るんだから,すごいぜ,フジノコウザン。さすがは“六車奈々の元恋人”だぜ!*4。3番人気に推されたホワイトモンスターは,残念ながらスタート直後に躓いて騎手が落馬寸前になった影響で4着に沈みました。
最終レース終了後は,にこにこホールでジョッキートークショー&「アラブ特別レジェンド賞」レース反省会。出席者は,“福山の魔術師”岡崎準騎手(デラノキセキ騎乗),“瀬戸内の貴公子”嬉勝則騎手(ホワイトモンスター騎乗),“福山のゴールデンスラッガー”三村展久騎手(ザラストアラビアン騎乗)。そして,表彰式で“アラブへのお手紙”*5を読み上げた六車奈々さん。
ちなみに。後検量や何やかんやでトークショーの開始に遅れてしまったと思しき三村展久騎手が,普通に構内をお客さんの中に混じってとことこ歩いてきて,会場を取り囲むお客さんの後ろのほうでその熱気に気圧されていったん弾き出されてしまい*6,180°遠回りしていたらファンの人たちに普通に捕獲されて記念撮影に応じていて,それはそれで楽しそうな感じでさらに時間が過ぎていき,その後改めてトークショーに加わった頃には一人だけ缶ビールをもらいそびれていたことは,内緒だ。
そして,そのトークショーでの会話の流れから判明したことなんですが。この日の福山競馬場の入場者数は,「正月競馬並みの大盛況」だったんだそうです。やはり,アングロアラブ競馬の最後ということで,それなりのアナウンス効果があって,全国各地からコアなファンの方々が来場されていたみたいです。この日の賑やかさは,やはり特需によるものだったわけです。
というわけで,福山競馬場の単年度黒字維持のためには,福山競馬の本場開催のときに,(1)競馬場入場者数の増加と(2)インターネット投票を含む馬券売り上げの回復が必須なことに変わりはないようです*7。今後残されたアングロアラブ系はサラブレッドとの混合競走に活路を見出していくことになりますが,サラブレッドに混じって勝ち抜いていかなければならないアングロアラブの勇姿は,そのまま福山競馬場の将来と重なり合うものなのかもしれません。(文責:ぴ)
*1:各種報道に接する限り,アングロアラブ系の生産頭数は近年ほぼ途絶えてしまい,最後の砦だった福山競馬場でもアングロアラブ系の所属頭数が40頭を割れ込むに至り,ついにアングロアラブ系単独でレース編成することが不可能になったという経緯がある模様です。
*2:断言するのかよ。
*3:ちなみに,パドックでおっちゃんたちが「トモが寂しい。駄目だこりゃ」「そのわりには馬体は引き締まっとる。もったいないのう」「なんでカバキチと複勝のオッズが同じなんだ?」なんて会話していた。
*4:この日の第7レース終了後に現地で催された“「アラブ特別レジェンド賞」レース検討会”に参加した人にしか分からないネタ。
*5:ザラストアラビアン関係者が居並ぶ前で,“いかにして私はフジノコウザンアングロアラブ系と出会ったか”を朗々と語ってくださいました。
*6:みんな前方ばかり観ているから,後ろでひるんでいる三村騎手に気付かなかった。
*7:福山市営競馬直営の場外馬券売場を独立採算に見立てると,すべての箇所で黒字を維持しているとのこと。赤字なのは,競馬場本体の収支というわけです。