第7回中山グランドジャンプ(JGI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 今年も年に一度のジャンプレースの国際招待GI、中山グランドジャンプの季節が巡ってきた。今年は勝ち馬のメルシータカオー屈腱炎を発症して無念の直前回避となったのを筆頭に、昨年暮れの中山大障害(JGI)の上位馬の出走が少なく、迎え撃つ日本勢のラインナップが少々寂しいが、その分オセアニア勢に強力な2頭がおり、実に楽しみな一戦となった。

中山グランドジャンプ(JGI)―出走馬の紹介と分析―

メジロアービン(牡6歳)[嘉堂信雄騎手、大久保正陽厩舎(栗東)](父:ダンスインザダーク、生産者:メジロ牧場)
障害通算:7戦1勝2着2回落馬0回(主な勝ち鞍:特になし)平地成績:35戦3勝
分析:平地では2歳時に2勝し、その後オープン、1000万下では頭打ちとなるも、4歳夏に500万下に降級すると、上位争いをするように。その後、秋に入障するも3戦して勝てず、再び平地へ。その後、昨秋に再入障してようやく初勝利。オープン入り後は2戦とも大敗し、前走は平地の1000万下を大敗。障害に強いメジロ牧場に大ベテランの嘉堂騎手の組み合わせだが、ここまでのレース内容から力不足は明らか。ここでは厳しいだろう。(期待度:E)

スファンクスデュベルレ(セ6歳)[ファブリス・バラオ騎手、F・M・コタン厩舎(仏国)](父:ニコス、フランス産)
障害通算:31戦7勝2着3回落馬3回(主な成績:ヴィル・ド・ニース大賞(仏GIII)2着)平地成績:2戦0勝
分析:フランスでは障害で堅実に走り7勝を挙げるも、重賞ではワンパンチ足りない成績。父のNikosは現役時代エドモン・ブラン賞(仏GIII)を勝ったB級マイラーで、代表産駒が2001年のエドモン・ブラン賞で親子制覇を達成したGolaniという程度の下級種牡馬だが、その父が1991年の有馬記念(GI)勝ち馬ダイユウサクや1987年のアルゼンチン共和国杯(GII)などGIIを3勝したカシマウイングなどを出して成功したノノアルコとなると、日本の馬場に適性がある可能性は十分。あとは日本の障害のペースに対応できるかどうかだろう。関係者によると重は苦手とのこと。(期待度:C)

フサイチジハード(牡8歳)[田中剛騎手、岩戸孝樹厩舎(美浦)](父:ジェイドロバリー、生産者:ノーザンファーム)
障害通算:17戦2勝2着4回落馬2回(主な成績:2003年東京オータムジャンプ(JGIII)3着)平地成績:18戦3勝
分析:平地時代は3勝を挙げるも1000万下で頭打ちとなり6歳時に入障。3戦目で勝ちあがり、その後も堅実な成績を残していたが、昨年のこのレースで落馬して以来ややスランプに。今期は春麗ジャンプSで2着と久々に好走するも、その後は2戦大敗が続いている。前に行けるスピードがあるし、2勝は中山で挙げているようにこのコースも悪くない。ただ、昨年のこのレースで落馬しているようにどうしても飛越のリスクがつきまとう馬。ちょっとアテにはし辛いが、鞍上の田中剛騎手の腕に期待か。(期待度:C)

フォンテラ(セ7歳)[クレイグ・ソーントン騎手、K・マイヤーズ厩舎(新国)](父:キングステナム、ニュージーランド産)
障害通算:10戦5勝2着5回落馬0回(主な勝ち鞍:ワイカトハードル、ペガサスジャンプS2着)平地成績:28戦2勝
分析:ニュージーランドの障害で9戦してオール連対の成績を引っさげて来日。緒戦のペガサスジャンプSでも終始抑えきれない手応えで先行し、最後は勝ち馬に内をすくわれて惜敗も、内容的には勝ったも同然のレース内容だった。迎え撃つ日本勢が手薄なだけに、この勢いで本番も期待がかかるところだろう。ペガサスジャンプSで折り合いにやや苦労していたように見受けられただけに、距離延長が鍵となりそう。(期待度:B)

カラジ(セ10歳)[ブレット・スコット騎手、E・マスグローヴ厩舎(豪国)](父:カヤージアイルランド産)
障害通算:13戦6勝2着1回落馬0回(主な勝ち鞍:オーストラリアンハードル、南オーストラリアグランドナショナルハードル、ペガサスジャンプS3着)平地成績:61戦7勝
分析:平地、障害通算で今回が75戦目となる大ベテラン。前哨戦のペガサスジャンプSでは好位追走からしぶとく脚を伸ばして接戦の3着に入った。そのレース振りからも、父が英、愛ダービーを制し、アスコットゴールドカップ(英GI)勝ち馬のEnzeliを輩出しているKahyasiという血統からも、間違いなく距離延長はプラスに出るはず。大障害コースさえクリアすれば、チャンスは十分だろう。(期待度:A)

ギルデッドエージ(牡8歳)[白浜雄造騎手、松元茂樹厩舎(栗東)](父:ティンバーカントリー、生産者:福満牧場)
障害通算:25戦4勝2着3回落馬2回(主な勝ち鞍:2002年中山大障害(JGI)、2003年中山グランドジャンプ2着)平地成績:9戦0勝
分析:平地時代は未勝利で、障害入り後もオープンでは苦戦が続いていたが、5歳の秋になって突如本格化し、中山大障害を制した古豪。昨年のこのレースで人気を裏切る4着に敗れて以来のレースとなったペガサスジャンプSでは今一つ流れに乗れなかったこともあり9着と大敗。その前走ではやや体が寂しく映っただけに、輸送を挟んでの中2週でどこまで立て直してこれるか。復調なればここでは実績上位だけに期待できるのだが。(期待度:B)

トーヨーシーザー(牡9歳)[穂刈寿彦騎手、成島英春厩舎(美浦)](父:サマースコールアメリカ産)
障害通算:14戦2勝2着1回落馬1回(主な成績:三木ホースランドパークジャンプS2着)平地成績:46戦4勝
分析:平地時代は4勝を挙げ、7歳の暮れに障害入り。3戦目で勝ち上がり、その後もオープンで堅実な成績を挙げているものの、今一つパンチ不足なのも事実。前走のペガサスジャンプSは転厩緒戦ということも影響したのか10着と大敗。多少の上積みは見込んでも一変は考えにくく、この相手関係では厳しそうだ。(期待度:E)

チアズシャイニング(牡6歳)[横山義行騎手、藤沢則雄厩舎(栗東)](父:コマンダーインチーフ、生産者:長田ファーム)
障害通算:18戦3勝2着3回落馬2回(主な勝ち鞍:中山新春ジャンプS、春麗ジャンプS)平地成績:13戦1勝
分析:平地では4戦目に初勝利を挙げるも500万下で頭打ちとなり4歳時に入障。3戦目で勝ちあがり、オープンではたまに劇走を見せるも苦戦が続いていた。しかし、昨年の春麗ジャンプSで2着して以来レース振りが安定し、今年に入って中山新春ジャンプS、春麗ジャンプSと連勝した。前走の阪神スプリングジャンプ(JGII)では人気を裏切る5着と負けてしまったが、もともと阪神はそれほど得意ではなかったコース。中山コースは得意としており、既に大障害コースも経験済みというのは強み。斤量の63.5kgが鍵だが、それさえクリアすれば、今年のメンバーなら十分好勝負になりそう。(期待度:A)

ロードプリヴェイル(牡7歳)[熊沢重文騎手、池江泰郎厩舎(栗東)](父:ウッドマン、アメリカ産)
障害通算:11戦6勝2着0回落馬0回(主な勝ち鞍:京都ハイジャンプ(JGII)、阪神ジャンプS(JGIII)、小倉サマージャンプ(JGIII))平地成績:25戦6勝
分析:平地では6勝を挙げ、オープンでもそこそこ活躍していたが、6歳となった昨年の入障。夏から秋にかけては5連勝で重賞を3勝したが、一番人気に推された暮れの中山大障害では終い息切れして5着どまり。前走のペガサスジャンプSでも4着に終わったように、どうも中山コースでは終いの踏ん張りが利かないところがあるようだ。熊沢騎手悲願の障害GI制覇に期待したいところだが、勝ちきるまでは難しいかも。(期待度:C)

ローレルロイス(牡5歳)[山本康志騎手、古川平厩舎(栗東)](父:ジェニュイン、生産者:新冠本牧場)
障害通算:7戦3勝2着2回落馬0回(主な勝ち鞍:豊国ジャンプS、阪神ジャンプS2着)平地成績:18戦1勝
分析:平地時代は7戦目に初勝利を挙げるも500万下で頭打ちとなり昨夏に入障。2戦目で初勝利を挙げると、そのまま3連勝し、阪神ジャンプSロードプリヴェイルの2着。続く東京オータムジャンプ(JGIII)では一番人気に推されたが4着に終わった。現状では一本調子なレース振りで一線級に入ると力不足の印象。中山コースが未経験というのも厳しく、ここは単騎逃げが叶ったとしても難しそうだ。(期待度:D)

ナイスアルカング(牡6歳)[五十嵐雄一騎手、古賀一隆厩舎(美浦)](父:アルカング、生産者:佐々木直孝牧場)
障害通算:7戦1勝2着0回落馬1回(主な勝ち鞍:特になし)平地成績:8戦0勝(JRA)20戦5勝(NAR)
分析:JRAでデビューして6戦未勝利で佐賀に移籍し、その後当地で5勝を上げてJRAに復帰も、結局2戦して勝てず入障。障害でも前走7戦目にしてようやく勝ちあがったばかり。さすがにここで通用の余地はなさそうだ。(期待度:E)

フレノキャプテン(牡6歳)[金折知則騎手、田所秀孝厩舎(栗東)](父:サンシャインフォーエヴァー、生産者:北陽ファーム)
障害通算:12戦2勝2着1回落馬0回(主な勝ち鞍:淀ジャンプS、阪神スプリングジャンプ3着)平地成績:2戦0勝
分析:3歳秋に遅いデビューを果たし、2戦未勝利で入障。障害では3戦目で勝ちあがるも、オープンではややパンチ不足のレースが続いていた。しかし6歳となった今期は淀ジャンプSを勝ち、阪神スプリングジャンプでも3着と好走。前走のペガサスジャンプSは6着に終わったが、後方から追い上げたレース振りはそう悪くなかった。距離延長は歓迎のクチだろうし、うまく流れに乗ってしぶとさを活かせば入着以上も。(期待度:C)

ライトパシフィック(牡6歳)[浜野谷憲尚騎手、嶋田潤厩舎(美浦)](父:サクラバクシンオー、生産者:パシフィック牧場)
障害通算:20戦2勝2着2回落馬0回(主な成績:新潟ジャンプS(JGIII)2着)平地成績:10戦0勝(JRA)3戦3勝(NAR)
分析:今は亡き上山競馬場でデビューし、3戦3勝でJRA入りするも、500万下を10戦して勝てず障害入り。入障後はムラなレースが続き、昨夏に15戦目にしてようやく初勝利を上げたが、続く新潟ジャンプSで2着と劇走し、続くオープンで2勝目。一息入った今季は叩き3戦目の前走ペガサスジャンプSで5着とまずまずのレースを見せた。現状一線級相手ではまだ力の差がありそうで、直線芝を生かしてどこまで脚を伸ばせるか。(期待度:D)

アズマビヨンド(牡6歳)[大江原隆騎手、加用正厩舎(栗東)](父:ダンスインザダーク、生産者:日高大洋牧場)
障害通算:9戦3勝2着2回落馬0回(主な勝ち鞍:三木ホースランドパークジャンプS、牛若丸ジャンプS)平地成績:21戦2勝
分析:平地2勝で昨年障害入り。入障2戦目で勝ちあがると、その後も堅実なレースを見せ、昨年暮れからオープン特別を連勝。しかし、続く春麗ジャンプS阪神スプリングジャンプで5、4着に終わっているように、現状一線級では力差がありそう。中山が初コースというのもマイナスで、ここは厳しいだろう。(期待度:D)


―まとめ―

 今年の中山グランドジャンプは、昨年の中山大障害の上位4頭が出走していないように日本勢が正直言って手薄。一方外国勢は、3頭と頭数は寂しくなってしまったものの、オセアニアの2頭が既にペガサスジャンプSでメドを立てる内容を見せているだけに、3年ぶりに外国馬の栄冠がみられそうだ。

 中でも、◎カラジはペガサスジャンプSは着順こそ3着に終わったものの、好位追走からしぶとく追い上げた内容が光った。血統やレース内容から明らかに距離延長はプラスに出るだろうし、小柄な馬ながら前走で63kgをこなしているのだから63.5kgも許容範囲内だろう。鞍上のスコット騎手も一昨年にセントスティーヴンで大障害コースを経験しており、ここは逆転を期待したいところだ。

 迎え撃つ日本勢では中山のコース適性と順調度を考慮すれば○チアズシャイニングが最有力。もともと飛越には定評があった馬だが、ここへ来ての充実度は素晴らしいし、やや手薄の今年のメンバーなら十分チャンスがありそう。前走は5着と敗れたものの、これは不得手の阪神コースがマイナスに働いただけ。ナリタセンチュリー天皇賞・春(GI)を回避することとなり、藤沢則雄厩舎としても残されたもう一つのGI制覇のチャンスに向けて、万全の仕上げで臨むはず。中山グランドジャンプ2勝の横山義行騎手の腕にも期待だ。

 もちろん、ペガサスジャンプS2着の▲フォンテラも侮れない。前走の掛かり気味のレースが気になって、一枚評価を下げたが、一叩きで折り合いが良くなってくる可能性はもちろんあるし、そのスピードは脅威。外国人騎手で唯一中山グランドジャンプを制しているソーントン騎手の手腕にも期待が掛かり、距離と折り合い面の課題をクリアすればチャンスは十分だろう。

 以下は能力あるいは順調度の面で正直言って少なからぬ差が感じられ、2、3着争いといった印象は否めないが、ムラ馬でも中山得意でマイペースの競馬ができれば侮れない△フサイチジハード、一変は疑問も実績的には最上位の△ギルデッドエージの底力、祖父ノノアルコで意外に日本の馬場に適性がありそうな△スファンクスデュベルレ、距離延長を味方につけそうな△フレノキャプテンまでをヒモに押さえたい。