第24回ジャパンカップ(国際GI)、第5回ジャパンカップダート(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 今年も年に一度の国際招待レースの週末がやってきた。今年はJRA50周年ということで、ジャパンカップ(国際GI)、ジャパンカップダート(GI)が同日開催。例年に比べてやや小粒のメンバー構成となってしまったものの、バラエティーに富んだ馬が集まり、好レースが期待できそうだ。

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ジャパンカップ(国際GI)―出走馬の紹介と分析―

ポリシーメイカー(牡4歳)[ステファン・パスキエ騎手、エリ・ルルーシュ厩舎(仏国)](父:サドラーズウェルズ)
通算成績:11戦6勝(主な勝ち鞍:シャンティ大賞(仏GII)、フォワ賞(仏GII)、サンクルー大賞(仏GI)2着)
短評:フランスの名門ヴィルデンシュタインファミリーが馬主。3歳時はドーヴィル大賞(仏GII)を制したものの、凱旋門賞(仏GI)は10着と大敗。4歳となった今期は、一叩きして臨んだシャンティ大賞(仏GII)を制したものの、サンクルー大賞(仏GI)ではGamutに完敗の2着。秋はフォワ賞(仏GII)を制して凱旋門賞に臨んだが、今年も19着と大敗。一線級を相手にして頑張れるタイプではないし、父サドラーズウェルズ産駒らしい、欧州向きのパワータイプの印象。かつてオードで2着したこともあるヴィルデンシュタインファミリーが送るだけに、全く無視というわけにもいかないが、常識的には重馬場にでもならないと苦しそうだ。(期待度:D)

リュヌドール(牝3歳)[ティエリ・ジャルネ騎手、リチャード・ギブソン厩舎(仏国)](父:グリーンチューン)
通算成績:7戦4勝(主な勝ち鞍:リディアテシオ賞(伊GI)、ポモーヌ賞(仏GII)、マルレ賞(仏GII))
短評:昨年の11月にデビューし、3戦目となった今年6月の一般戦で初勝利をあげると、そのまま3連勝でマルレ賞(仏GII)、ポモーヌ賞(仏GII)を制覇。勢いに乗って臨んだヴェルメイユ賞(仏GI)は10着と大敗したが、続くリディアテシオ賞(伊GI)でGI初制覇。GI勝ちがイタリアの牝馬限定戦のみと、実績面では見劣るが、そのリディアテシオ賞の勝ちタイムや内容は悪くない。父のグリーンチューンは日本には馴染みが薄いが、父父はエイシンプレンストンを輩出しているグリーンダンサーだし、母系にもファバージ→ラインゴールドやLuthierといった日本向きの血が入っているだけに面白い存在。(期待度:B)

ハーツクライ(牡3歳)[武豊騎手、橋口弘二郎厩舎(栗東)](父:サンデーサイレンス)
通算成績:8戦3勝(主な勝ち鞍:京都新聞杯(GII)、日本ダービー(GI)2着)
短評:今年の1月に新馬勝ち。若葉Sを勝って臨んだ皐月賞(GI)は14着。京都新聞杯(GII)を勝って臨んだ日本ダービー(GI)では、キングカメハメハハイアーゲームが前を全て薙ぎ倒してくれた展開も利して、後方から追い込んでの2着。秋は神戸新聞杯(GII)が3着、菊花賞(GI)が7着。後方一辺倒の競馬しかできない馬だし、ダービーは2着したものの本来はスローの上がりの競馬を得意とする馬。現状では展開の助けがないとどうか。(期待度:D)

ナリタセンチュリー(牡5歳)[柴田善臣騎手、藤沢則雄厩舎(栗東)](父:トニービン)
通算成績:18戦7勝(主な勝ち鞍:京都大賞典(GII))
短評:脚元の問題や気性の問題もあって出世が遅れたが、5歳となった今期は完全に本格化。3連勝でオープン入りし、中京記念(GIII)2着。天皇賞・春(GI)でも5着と健闘。この秋は緒戦の京都大賞典(GII)でゼンノロブロイを楽々と差しきったが、前走の天皇賞・秋(GI)では前残りの馬場と展開にないて6着どまり。馬だけを見れば前走がいかにも距離伸びてと思わせる内容だっただけに面白い存在。ただ、問題は乗り慣れた田島裕和騎手から柴田善臣騎手への乗り替わり。陣営は「府中コースを熟知する関東一の騎手」と大喜びのようだが、JRAGI66連敗中、東京・芝2400mのGI成績が[0/0/0/29]という数字を見せられると・・・。掲示板は堅いと思われるが勝ち負けは微妙か。(期待度:C)

フェニックスリーチ(牡4歳)[マーティン・ドワイヤー騎手、アンドリュー・ボールディング厩舎(英国)](父:アルハース)
通算成績:8戦3勝(主な勝ち鞍:カナディアン国際(加GI)、ゴードンS(英GIII)、英・セントレジャー(英GI)3着)
短評:2歳の6月にデビュー(2着)し、その後脚部不安で一年間休養も、復帰戦を快勝し、ゴードンS(英GIII)を制して臨んだ英・セントレジャー(英GI)は3着。続くカナディアン国際(加GI)でGI初制覇を達成し、将来を嘱望されたが、今期は6着、6着、10着と一息の成績のまま休養入り。結局ぶっつけでのジャパンカップ挑戦となった。休み明けに関しては、不利とも言えるしフレッシュな状態で望めるともいえるだけに五分五分。どちらかといえば重い馬場のほうが得意と思われるだけに、常識的には厳しそうだが、潜在能力は秘めていそうなだけに、流れによっては一発もあるかも。(期待度:C)

マグナーテン(セ8歳)[岡部幸雄騎手、藤沢和雄厩舎(美浦)](父:ダンチヒ)
通算成績:36戦12勝(主な勝ち鞍:毎日王冠(GII)、関屋記念(GIII)2回)
短評:一昨年のこのレースで4着に入るなど、タフな活躍を続けてきたマグナーテンももう8歳。能力的に大きな衰えはないとはいえ、このメンバーを相手に頑張れるかとなるとどうか。ジャパンカップを逃げ切るのは至難の技だし、ゼンノロブロイのペースメーカーを務めて、あとは流れ込みでどこまで粘るかだろう。(期待度:D)

デルタブルース(牡3歳)[安藤勝己騎手、角居勝彦厩舎(栗東)](父:ダンスインザダーク)
通算成績:11戦4勝(主な勝ち鞍:菊花賞(GI))
短評:昨年の11月にデビューし、6戦目となった春の福島で初勝利。この秋は1000万下特別を勝って臨んだ菊花賞(GI)で、早めのスパートから鮮やかな勝利を収めた。ただ、その菊花賞は鞍上の岩田康誠騎手の絶妙のスパートが嵌まった感が否めない。府中の2400mで小細工なしの勝負となるとまだ力不足の感も。ダンスインザダーク産駒に乗らせたら世界一といわれる安藤勝己騎手が手綱を取るだけに不気味ではあるが、いずれにしても今回が試金石となりそうだ。(期待度:C)

エルノヴァ(牝5歳)[藤田伸二騎手、藤沢和雄厩舎(美浦)](父:サンデーサイレンス)
通算成績:24戦5勝(主な成績:クイーンS(GIII)2着、エリザベス女王杯(GI)3着)
短評:若い頃はとにかく詰めが甘く出世が遅れたが、昨秋頃から徐々に本格化し、この秋はクイーンS(GIII)を2着し、エリザベス女王杯(GI)でも上位2頭には離されたものの3着と健闘。とはいえ、これらの実績はあくまで牝馬限定戦でのもの。牡馬の一線級相手では力不足で通用するとは思えない。(期待度:E)

ゼンノロブロイ(牡4歳)[オリビエ・ペリエ騎手、藤沢和雄厩舎(美浦)](父:サンデーサイレンス)
通算成績:13戦5勝(主な勝ち鞍:天皇賞・秋(GI)、神戸新聞杯(GII)、青葉賞(GII))
短評:3歳時は春に青葉賞(GII)を勝ったものの、日本ダービーは2着。秋は神戸新聞杯(GII)を圧勝したものの、菊花賞(GI)が4着で、有馬記念(GI)は3着。今季も詰め切れないレースが続いたが、前走の天皇賞・秋(GI)では前残りの馬場を利して快勝。ただ、その天皇賞・秋(GI)は時計そのものは良かったとはいえ、展開面で恵まれたことも事実。今回2400mに伸びることもあり、絶対視できるかとなると?(期待度:C)

コスモバルク(牡3歳)[クリストフ・ルメール騎手、田部和則厩舎(北海道)](父:ザグレブ)
通算成績:12戦7勝(主な勝ち鞍:セントライト記念(GII)、弥生賞(GII)、皐月賞(GI)2着)
短評:もうJRAのファンにもすっかりおなじみとなったホッカイドウ競馬の雄。2歳の秋からJRAに挑戦を続け、ラジオたんぱ杯2歳S(GIII)、弥生賞(GII)、セントライト記念(GII)と重賞を3勝したものの、クラシックには惜しくも手が届かず。今回、主戦の五十嵐冬樹騎手から、クリストフ・ルメール騎手に乗り替わっての参戦。潜在能力の高さは折り紙つきだけに、気性面と乗り替わりがどう出るかが全てといってもよさそうだ。(期待度:B)

ヒシミラクル(牡5歳)[角田晃一騎手、佐山優厩舎(栗東)](父:サッカーボーイ)
通算成績:24戦6勝(主な勝ち鞍:菊花賞(GI)、天皇賞・春(GI)、宝塚記念(GI))
短評:初勝利は3歳の5月と遅かったが、秋に菊花賞(GI)を制覇。昨年は天皇賞・春(GI)、宝塚記念(GI)を制して完全に本格化したが、その矢先に脚部不安で一年間の休養。復帰戦の天皇賞・秋(GI)では後方儘の16着に終わった。能力の高さは折り紙つきだけに、あとは一叩きでどこまで復調しているかだろう。(期待度:C)

ハイアーゲーム(牡3歳)[ミルコ・デムーロ騎手、大久保洋吉厩舎(美浦)](父:サンデーサイレンス)
通算成績:9戦3勝(主な勝ち鞍:青葉賞(GII))
短評:昨秋に新馬勝ちし、この春は弥生賞(GII)で4着に終わって皐月賞(GI)には出走できなかったが、青葉賞(GII)を勝って日本ダービー(GI)が3着。この秋の飛躍が期待されたが、オールカマー(GII)4着、菊花賞(GI)11着と散々の成績に終わっている。左回り替わりに加えてミルコ・デムーロ騎手の鞍上強化と、不気味なムードも漂っているが、この秋の2戦が、着順はともかく内容に成長が見られていないのが・・・。一変までは難しいかもしれない。(期待度:D)

トーセンダンディ(牡6歳)[江田照男騎手、森秀行厩舎(栗東)](父:ホワイトマズル)
通算成績:33戦8勝(主な勝ち鞍:オールカマー(GII))
短評:オープン入り後は長く低迷していたが、この夏から徐々に復調し、オールカマー(GII)をまんまと逃げ切って重賞初制覇。しかし、続く天皇賞・秋(GI)では同じようにマイペースの逃げを打ったものの、直線は決め手で見劣り8着まで。距離が伸びることも歓迎とはいえないし、ここは通用の根拠が見当たらない。(期待度:E)

ホオキパウェーブ(牡3歳)[横山典弘騎手、二ノ宮敬宇厩舎(美浦)](父:カーネギー)
通算成績:8戦2勝(主な成績:菊花賞(GI)2着、セントライト記念(GII)2着、青葉賞(GII)2着)
短評:昨年の9月に新馬勝ち。この春のソエに悩まされながらも青葉賞(GII)で2着に入り、日本ダービーに出走(9着)。ソエが解消したこの秋は完全に本格化し、セントライト記念(GII)2着を叩いて臨んだ菊花賞(GI)ではデルタブルースの奇襲にやられたものの、よく追い込んで2着と健闘。長く脚を使えるタイプだけに、東京の芝2400mはベストに近い条件と思われるし、勝ちきるまではどうかという気もするが、展開次第で上位争いも十分だろう。(期待度:A)

パワーズコート(牡4歳)[ジェイミー・スペンサー騎手、エイダン・オブライエン厩舎(愛国)](父:サドラーズウェルズ)
通算成績:15戦4勝(主な勝ち鞍:タタソールズ金杯(愛GI)、プリンスオブウェールズS(英GI)2着、BCターフ(米GI)3着)
短評:ジョン・マグナー氏とエイダン・オブライエン調教師のタッグが初来日。2歳時にレーシングポストトロフィー(英GI)2着、3歳時はグレートヴォルティジュールS(英GII)を勝って、愛・セントレジャー(愛GI)3着と、早くから素質の片鱗は見せていたが、4歳となった今期に本格化。GI勝ちはタタソールズ金杯(愛GI)の一つだけだが、アーリントンミリオン(米GI)で1位入線(4着膠着)、プリンスオブウェールズS(英GI)2着、BCターフ(米GI)3着と、常に一線級で好レースを見せている。ジャパンカップ好走のための条件ともいえるアメリカでの実績を備えているし、その戦績から能力の高さは折り紙付き。左回りは内にヨレる面があるようだが、まともに走れば当然勝ち負けできる力がある。(期待度:A)

ウォーサン(牡6歳)[キアラン・ファロン騎手、クレイグ・ブリテン厩舎(英国)](父:カーリアン)
通算成績:33戦8勝(主な勝ち鞍:バーデン大賞(独GI)、コロネーションカップ(英GI)2回)
短評:ジュピターアイランドで1986年のジャパンカップを制するなど、もはやおなじみのクレイグ・ブリテン調教師の管理馬。下級条件からジワジワと出世し、昨年のコロネーションカップ(英GI)でGI初制覇。6歳となった今期は、コロネーションカップの連覇を達成し、キングジョージ4世&クイーンエリザベス2世S(英GI)では大敗したが、バーデン大賞(GI)で3つ目のGI勝ちを果たした。前走の凱旋門賞(仏GI)でも9着に終わっているように、ワールドクラスの一線級相手になると少し足りない面もあるようだが、日本には抜群の相性を誇る父カーリアン産駒だし、比較的小粒な今年のメンバー相手なら十分好勝負になりそうだ。(期待度:A)


―まとめ―

 今年のジャパンカップは、内外ともに小粒なメンバー構成となってやや寂しい感もあるが、逆に言えば非常に多くの馬にチャンスがあるということで、馬券的には難解かつ面白いレースとなった。ということで、中心は少し捻って◎ウォーサンを推してみる。欧州でGI3勝とはいえ、キングジョージ凱旋門賞で一息の成績で終わっているように、やや底力に欠くところはあるように思うが、それでも今年の低レベルなメンバーならそう見劣りはしないだろう。その凱旋門賞も、道中流れに乗れず、後方から外を回しての競馬で勝ち馬から1.2秒差の9着ならそう悪い内容ではない。凱旋門賞からジックリ調整しての参戦というローテーションもいいし、わざわざ帯同馬を連れてきての調整となれば、状態面は文句なさそうだ。キアラン・ファロン騎手への乗り替わりも、単に腕の問題だけでなく、日本の競馬に慣れているという点でも好感。時計勝負になってどうかといわれているようだが、凱旋門賞でこの馬自身も2.26.2で走っているわけだし、日本に相性のいい父カーリアン産駒となれば、極端に上がりの早い競馬にならなければ十分勝ち負けになると見る。

 能力という点で最上位なのはやはり○パワーズコートだろう。今年はやや勝ちきれないレースが続いているが、相手が強すぎたり、道中スムーズさを欠いたりしたものばかりで、能力的にはこのメンバーなら一枚抜けている。父サドラーズウェルズ産駒というのは、日本との相性を考えると確かに気にはなるが、アメリカの硬い芝で好走しているのだから関係ないと見るべきだろう。左回りでもたれる面があるということと、鞍上のジェイミー・スペンサー騎手が今期若干精彩を欠いている点が気になって一枚評価を下げたが、能力的にはこの馬が突き抜けても全くおかしくはない。

 穴馬として面白そうなのは▲リュヌドール。確かにこれまでの戦績は地味だが、まだ3歳と若いし、上り調子にかかったときの牝馬というのは侮れないものがある。血統的には日本の馬場は向いていそうな感じがするのも好感だ。さらに、内枠を引けたのもプラスだろう。内でジックリ脚を矯めて、そのまま内を衝いて捌いてこれれば、一発があっておかしくなさそう。

 迎え撃つ日本勢では、△ホオキパウェーブが府中の芝2400mに最も適性がありそうだ。日本ダービーでは完敗したが、とにかくこの秋の充実ぶりは、春とは全くの別馬のような内容。長く脚を使えるというのも、厳しいレースになりやすいジャパンカップでは好材料。どうにも勝ちきれない面が残る馬だけに、突き抜けるところまで行くかとなるとどうかという気もするが、上位争いなら十分可能性があるはずだ。

 今回も評価が難しいのが△コスモバルク。一連のレースのパフォーマンスから、潜在能力で言えばこのメンバーでもトップクラスのものを持っていることは間違いない。五十嵐冬樹騎手からクリストフ・ルメール騎手への乗り替わりは、気性的にマイナスとなる可能性もある一方で、もしかすると一変する可能性もある。ただ、今回絶対に控えるレースをすると陣営が言っている点が気になる。確かに、折り合いがつくに越したことはないが、例えば父サンデーサイレンス産駒のように、無理やりでも何でも抑えれば終いは切れるという馬とは思えず、結果的に切れ負けして矯め殺しになってしまう可能性もあるのではないか。その点が気にかかる分、少々評価を落とすことにしたが、能力的には勝ち負けしてもおかしくはない。

 △ナリタセンチュリーは、天皇賞・秋のレース後には、ジャパンカップはこの馬と思ったものだが、やはり今回の乗り替わりは買い材料とは言いがたい。柴田善臣騎手の腕がどうこう言うのではなく、やはり現実の数字としてJRAGIで結果が出ていないし、秋華賞ヤマニンアラバスタでもある意味予想通りの5着という着順だった以上、押さえ以上の評価は与えられない。他では、全くの人気薄ながら潜在能力では侮れない△フェニックスリーチと、いつ走るか分からない△ヒシミラクルまでを念のため押さえる。

 断然の人気となっているゼンノロブロイだが、天皇賞・秋の内容は確かに悪くなかったが、逆に言えばそれまでのパフォーマンスと併せても、2000mがベストの馬ということだろう。同じ厩舎で天皇賞・秋では好成績を残しながら、ジャパンカップでは結果が出なかったバブルガムフェローと非常に雰囲気が被る印象がしてならない。これまでも2000mを越えたとたんパフォーマンスが落ちており、人気ほどの信頼性があるとは到底思えない。ただでさえ一番人気が今一つのジャパンカップだけに、ここは危険な人気馬として嫌って妙味ありだろう。




ジャパンカップダート(GI)―出走馬の紹介と分析―

ナイキアディライト(牡4歳)[石崎隆之騎手、出川龍一厩舎(船橋)](父:ディアブロ)
通算成績:18戦8勝(主な勝ち鞍:かしわ記念(統一GII)、日本テレビ盃(統一GII)、帝王賞(統一GI)2着)
短評:昨年の東京ダービー馬。昨秋からややスランプに陥っていたが、この春復活し、かしわ記念(統一GII)を制して臨んだ帝王賞(統一GI)ではアドマイヤドンを最後まで苦しめて2着と健闘。秋緒戦の日本テレビ盃(統一GII)も快勝したが、前走のJBCクラシック(統一GI)ではハナに行けず大敗。今回は絶好の最内枠を引いたし、強気にハナを切ってマイペースでいければ巻き返しも。とにかく展開一つ。(期待度:B)

クーリンガー(牡5歳)[和田龍二騎手、岩元市三厩舎(栗東)](父:フォーティーナイナー)
通算成績:31戦7勝(主な勝ち鞍:佐賀記念(統一GIII)、名古屋大賞典(統一GIII))
短評:3歳時にサラブレッドチャレンジカップ(統一GIII)を制し、その後もダート重賞で堅実に活躍。今期は佐賀記念(統一GIII)、名古屋大賞典(統一GIII)を連覇したが、いずれもGIIIまで。GIクラスでは能力面でやや見劣り、勝ち負けまでは苦しそうだ。(期待度:D)

スナークレイアース(牡9歳)[小野次郎騎手、川村禎彦厩舎(栗東)](父:アサティス)
通算成績:69戦12勝(主な勝ち鞍:白山大賞典(統一GIII)、マーキュリーカップ(統一GIII))
短評:5歳時にオープン入りすると、父アサティス産駒らしくタフな活躍を見せ、9歳となった今年もマーキュリーカップ(統一GIII)を制した。常識的にはこのクラスに入ると厳しいが、東京のダート2100mというのはベストの条件。アドマイヤドントータルインパクトといった強力な馬が前を全て薙ぎ倒してくれるような展開になればあるいは入着以上も。(期待度:C)

ジンクライシス(牡3歳)[蛯名正義騎手、土田稔厩舎(美浦)](父:サボーディネイション)
通算成績:9戦4勝(主な戦績:ヒヤシンスS2着)
短評:昨年の秋にデビューし、2戦目で初勝利。その後も、ヒヤシンスSで後にジャパンダートダービー(統一GI)を勝つカフェオリンポスの2着に入るなど堅実な活躍を見せ、前走準OPのブラジルカップを勝ってオープン入り。なかなかの素質があって将来性はありそうだが、現状はまだ成長段階でこのメンバーにはいると苦しいだろう。距離延長も疑問で、さすがに勝ち負けまでは・・・。(期待度:D)

ユートピア(牡4歳)[ミルコ・デムーロ騎手、橋口弘二郎厩舎(栗東)](父:フォーティーナイナー)
通算成績:18戦6勝(主な勝ち鞍:南部杯(統一GI)、ダービーグランプリ(統一GI)、全日本2歳優駿(統一GI))
短評:2歳時に全日本2歳優駿(統一GI)を勝ち、その後もダービーグランプリ(統一GI)を制するなど一線級で活躍。昨秋からややスランプに陥っていたが、この秋緒戦の南部杯(統一GI)で、アドマイヤドンを封じて逃げ切る大金星を挙げた。前走のJBCクラシックも逃げて4着と健闘したが、今回は内枠にナイキアディライトが入っているだけに、単騎逃げは難しそう。控えても被されなければ我慢できるとは思うが、距離の2100mも少し長いか。流れ一つで粘り込みがあってもおかしくないが。(期待度:B)

イーグルカフェ(牡7歳)[田中勝春騎手、小島太厩舎(美浦)](父:ガルチ)
通算成績:45戦5勝(主な勝ち鞍:ジャパンカップダート(GI)、NHKマイルカップ(GI))
短評:3歳時にNHKマイルカップを勝ち、5歳時にはジャパンカップダート(GI)を制したイーグルカフェももう7歳となってこれが引退レース。結果にはつながっていないとはいえ、ここへ来ても毎回最後は差を詰めているだけに、能力面で大きな衰えがあるわけではないが、さすがに全盛期の勢いはない。2100mは距離が長いし、出遅れ癖のある馬に田中勝春騎手では、やはりスタートの不利は濃厚だろう。末脚に賭ける展開で展開が向けばそこそこやれそうではあるが・・・。(期待度:C)

オミクロン(牡3歳)[アンドレアス・スボリッチ騎手、M・ホーファー厩舎(独国)](父:ジャーマニー)
通算成績:10戦2勝(主な勝ち鞍:統一ドイツ賞(独GIII)、ウニオンレネン(独GII)2着、独・ダービー(独GI)3着)
短評:独・2000ギニー(独GI)5着、ウニオンレネン(独GII)2着して臨んだ独・ダービー(独GI)が3着。この秋はバーデン大賞(独GI)を9着して臨んだ統一ドイツ賞(独GIII)で重賞初制覇。ローマ賞(伊GI)を8着しての参戦。常識的にはここでは実績不足。ジワジワ脚を使うタイプのようなので、砂を被っても我慢できれば、上がりがかかった場合にそこそこきそうだが、さすがに勝ち負けまでは難しいのではないか。(期待度:D)

シロキタゴッドラン(牡5歳)[柴田善臣騎手、中尾秀正厩舎(栗東)](父:ジェニュイン)
通算成績:26戦7勝(主な勝ち鞍:ベテルギウスS)
短評:昨年、準OPを勝って臨んだジャパンカップダート(GI)では、中団から流れ込んで6着。続くベテルギウスSも制したが、その後は平安S(GIII)11着、武蔵野S(GIII)12着と不振。ここではさすがに家賃が高く、一叩きしての上積みを見込んでも入着が一杯だろう。(期待度:E)

ハードクリスタル(牡4歳)[岡部幸雄騎手、作田誠二厩舎(栗東)](父:クリスタルグリッターズ)
通算成績:18戦6勝
短評:この夏ごろから力をつけ、1000万下、準OPを連勝してオープン入り。その前走の赤富士Sは形式的にはレコードだが、これは雨が降って時計の出る馬場になってのものだけに過大評価はできない面もある。ここへきての充実ぶりは認めても、さすがに勝ち負けまでは難しいか。ベテラン岡部幸雄騎手の手綱裁きに期待だが。(期待度:C)

アドマイヤドン(牡5歳)[安藤勝己騎手、松田博資厩舎(栗東)](父:ティンバーカントリー)
通算成績:20戦10勝(主な勝ち鞍:JBCクラシック(統一GI)3回、南部杯(統一GI)、朝日杯フューチュリティS(GI))
短評:2歳時に朝日杯フューチュリティS(GI)を制し、3歳時はクラシック路線を歩んだが、秋にダートに天公するとJBCクラシック(統一GI)を圧勝。その後はJBCクラシック三連覇など、ダート路線を席巻してきた。今期はややズブさが出てきていて、秋緒戦の南部杯(統一GI)では仕掛け遅れもあってまさかの取りこぼしをしたが、続くJBCクラシックをレコード勝ち。ここへきてのズブさも府中のダート2100mという条件を考えればむしろプラスかも。昨年2着の雪辱の可能性は十分だ。(期待度:A)

トータルインパクト(牡6歳)[マイク・スミス騎手、ローラ・ド・セルー厩舎(米国)](父:ステューカ)
通算成績:21戦5勝(主な勝ち鞍:ハリウッド金杯(米GI)、パシフィッククラシック(米GI)3着)
短評:チリでデビューし、2戦2勝の成績でアメリカに移籍。3歳時にUAEダービー(首GII)で2着するなど、早くから素質を示していたが、本格化したのは今年に入ってから。今期はハリウッド金杯(米GI)を制し、パシフィッククラシック(米GI)でも一旦先頭に立つ見せ場十分のレースで3着と健闘。昨年このレースを制したフリートストリートダンサーよりも能力は上だし、UAEダービーの内容から遠征も問題なさそう。あとは日本のダートの適性だけ。(期待度:A)

ヴォルテクス(セ5歳)[キアラン・ファロン騎手、ゲイ・ケレウェイ厩舎(英国)](父:デインヒル)
通算成績:28戦10勝
短評:今回初参戦となる、欧州のオールウェザーコースを主戦場とする馬。芝では17戦1勝、オールウェザーコースでは11戦9勝という成績から、圧倒的にオールウェザーコース向きなことは間違いない。欧州のオールウェザーコースのレベルが判然としないだけに予想はしにくいが、父デインヒルという血統から日本のダートは必ずしも向くとは限らないし、2100mという距離も微妙。入着候補の1頭というのがさしあたり妥当な評価か。(期待度:C)

トップオブワールド(牡3歳)[四位洋文騎手、藤岡健一厩舎(栗東)](父:シャンハイ)
通算成績:12戦3勝(主な勝ち鞍:ユニコーンS(GIII)、ダービーグランプリ(統一GI)2着)
短評:昨年の夏にデビューし、2戦目で初勝利。この春はダートで堅実なレースを見せ、ユニコーンS(GIII)で重賞初制覇。ただ、この秋はダービーグランプリ(統一GI)は2着したものの、全体に一息のレースが続いている。潜在能力ではここでもそう引けを取らないはずだが、2100mの距離も若干長く、勝ちきるまでは難しいかもしれない。(期待度:C)

タイムパラドックス(牡6歳)[武豊騎手、松田博資厩舎(栗東)](父:ブライアンズタイム)
通算成績:30戦11勝(主な勝ち鞍:ブリーダーズゴールドカップ(統一GII)、白山大賞典(統一GIII)、平安S(GIII))
短評:昨年のオープン入り後も堅実に活躍を続け、6歳となった今年本格化。ブリーダーズゴールドカップ(統一GII)で天皇賞・春(GI)勝ち馬のイングランディーレを破り、白山大賞典(統一GIII)では早目先頭から7馬身差で圧勝するなど、一皮剥けたレース振りを見せている。ただ、前走のJBCクラシック(統一GI)がそうだったように、後からアドマイヤドンを差すのは至難の業。かといって同厩だけに早めに動いて潰しに行くこともできないだろうし、あくまでも2着候補の1頭といった所か。(期待度:B)

ホーマンベルウィン(牡7歳)[オリビエ・ペリエ騎手、西園正都厩舎(栗東)](父:コマンダーインチーフ)
通算成績:41戦8勝(主な勝ち鞍:春待月S、エニフS)
短評:ダートで堅実な活躍を見せているが、未だ重賞未勝利。東京コースが得意というわけでもなく、正直ここは通用の要素が見当たらない。オリビエ・ペリエ騎手の手腕をもってしても、さすがに上位進出は難しいだろう。(期待度:D)

ローエングリン(牡5歳)[横山典弘騎手、伊藤正徳厩舎(美浦)](父:シングスピール)
通算成績:27戦8勝(主な勝ち鞍:マイラーズカップ(GII)、中山記念(GII)、ムーランドロンシャン賞(仏GI)2着)
短評:2歳時から素質を高く評価されながら、レースの使われ方やレース内容でチグハグさが目立ち、結局ここまでGI未勝利。今期は、状態そのものは良く見えるものの結果が出ていないあたり、気性面に問題があるのか年齢的な衰えがあるのかも。芝のオープン馬がダートに転向して一変するケースはしばしばあるし、揉まれない外枠を引いただけに一発あってもおかしくはないが、正直半信半疑。(期待度:B)


―まとめ―

 今年のジャパンカップダートも、アドマイヤドンを負かす馬がいるかどうか、予想のポイントはこの一点に尽きるだろう。そして、今期のアドマイヤドンのパフォーマンスからすると、負かすとすればアドマイヤドンより前で競馬ができる馬ということになるのではないか。ということで、中心には◎トータルインパクトを推す。昨年のフリートストリートダンサーは、ドロドロの不良馬場に恵まれたという可能性もあり、正直あれだけでアメリカの一流馬が通用すると考えるのは早計だとは思う。ただ、ロードスターリングがハイペースで逃げて頑張ったように、ある程度前で競馬を作れる馬のほうが競馬がしやすいという面はあるのではないか。その点で、トータルインパクトはどちらかというと一本調子に先行してがんばるタイプだけに、合っているように思う。馬場適性さえ問題なければ、フリートストリートダンサーよりはっきり能力が上だけに、圧勝まであっておかしくないはず。リドパレスの二の舞のリスクを考慮しても、攻めてみたい馬だ。

 相手には当然○アドマイヤドン。今年に入ってのレース振りでズブ差を見せており、その分昨年のような圧倒的なパフォーマンスはなくなってきているが、府中コースという条件を考えれば、今回に限ってはそれがプラスに出る可能性が高い。仕掛けどころを誤ったりさえしなければ、着を外すことは考えにくく、軸としての信頼性はこの馬が一番なのは間違いない。

 ▲ローエングリンは、正直評価は迷うところ。ダートで勝っているのは下級条件時代のものだけに、それだけでダート適性有りとは決め付けられないが、この手の芝からの転戦馬が一変する例はこれまでもいくつも見てきているだけに無視はできない。砂を被らないで済む外枠を引いたことは何より好感で、流れ次第ではアドマイヤドンを負かすシーンまであっておかしくない。

 △ナイキアディライト、△ユートピアは、スンナリ先行すれば、アドマイヤドンの動き次第でそのままの押し切りの可能性がなくはないだけに一応マークしておきたいところ。逆に、アドマイヤドントータルインパクトといった有力どころが前を全て薙ぎ倒すことになれば、△タイムパラドックス、△スナークレイアースといった末脚に賭ける面々が台頭する可能性もあるので、こちらも一応マークしておきたい。