第130回天皇賞・秋(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 秋の古馬中距離GI3連戦の第一弾、天皇賞・秋(GI)が行われる。当初大本命と思われていたキングカメハメハがまさかの故障・引退で離脱。残されたメンバーは、この一年で古馬混合GIを勝った馬がツルマルボーイただ1頭という小粒なメンバー。各馬とも一長一短で、どの馬にもチャンスがあると思われる上、週末は雨模様となにやら波乱含みの雰囲気。実に難解な一戦となりそうだ。

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 抜けた馬がいないメンバーだけに、予想の組み立てが難しいところだが、今年の4歳世代の絶望的な低調ぶりと、3歳勢はキングカメハメハが抜けて、残ったのがオールカマー(GII)で大敗したダイワメジャーと、3歳牝馬としか対戦のないダンスインザムードという構成から、素直に5歳、6歳勢から主力を選んで良さそうだ。

 中でも中心に推したいのは◎テレグノシス。GI勝ちは3歳時のNHKマイルカップ(GI)のみだが、その後も昨夏にジャック・ル・マロワ賞(仏GI)に遠征して3着、今年の安田記念(GI)でも2着と能力面での衰えは全くない。むしろ、京王杯スプリングカップ(GII)2着、安田記念2着、そしてこの秋緒戦の毎日王冠(GII)快勝の内容からは、一時期の不安定さを完全に払拭したようにも思える。2000mに伸びての距離不安が言われるが、安田記念毎日王冠の内容から、スムーズに折り合えば特に問題はないだろう。10戦して5勝2着3回と得意にしている東京コースは大歓迎。2番枠という微妙の枠を引いてしまっただけに、絶対視とまでは言えないが、バラける展開になってスムーズに捌ければ上位争いは濃厚と見る。

 相手に推したいのはテレグノシスと同じ父トニービン産駒の○ナリタセンチュリー。前走の京都大賞典(GII)では内ピッタリをスムーズに抜けてきたゼンノロブロイを、外から力で捩じ伏せる強い内容。素質馬が完全に本格化した印象を受けた。府中コースは初めてだが、血統、脚質からは当然歓迎のはず。ゆったり流れに乗って末脚を生かすタイプだけに、2000mはやや忙しいのは確かだが、実際2000mでも勝ち星を挙げているように、対応できない条件ではない。マイペースで追走して、この馬の末脚が生きる展開になってくれればチャンスも充分あるだろう。

 一発逆転があるとすれば、▲ヒシミラクルあたりか。脚部不安で1年以上の休み明けに加え、中間の稽古も一息、根が叩き良化型だし、2000mの距離も忙しい印象を受ける。常識的には厳しいと考えるべきなのだろうが、キングカメハメハが抜けたこのメンバーでは、これまで戦ってきた相手に比べれば2枚も3枚も能力が落ちるのは確か。強力メンバー相手にGIを3勝してきた底力は侮れないし、これまでも常に逆境を跳ね返してきた馬だけに、全くのノーマークにするのは危険だろう。

 もう1頭の穴候補は△ローエングリンあたりでどうか。もともと素質は高く評価されていたが、今一つチグハグなローテーションやレース内容を繰り返している間に完全にリズムがおかしくなってしまった印象はあるが、前走の毎日王冠は、内容はともかくとしても差は僅か。ここ2戦、パドックではよく見せているだけに状態面には問題ないはず。それで踏ん張りの利かないレース内容を続けているだけに、アテにしにくいのは確かだが、手の合う横山典弘騎手なら上手く能力を引き出してくれるかもしれない。有力馬の中ではいい枠を引いたことでもあるし、スムーズな競馬ができれば上位争いもありそうだ。

 △バランスオブゲームは、鉄砲駆けするタイプということで敢えて毎日王冠をスキップしてぶっつけでここに臨んだ事はむしろ好感と言える。ただ、1800mとか2200mという半端な距離のGII向きという印象が抜けきらないのは事実。レースセンス抜群で常に安定して力を発揮するタイプだし、その安定感が今回のような一長一短のメンバー相手では強味として出る可能性はある。外枠を引いてしまったこともあり、勝ち切るまでは難しいだろうが、連争いの可能性は充分ということで一応マークしておきたい。

 一番人気が予想されるゼンノロブロイは、前走の京都大賞典の内容が不甲斐なさ過ぎる。好位の内ピッタリから絶妙のタイミングで抜け出しながら、差されてしまうようでは、やはり詰めの甘さは払拭できていないようだ。今回、キングカメハメハが抜けたことでこの馬にマークが集中する可能性は高いし、それでもなお押し切れるほどの力があるならとっくにGIを勝ちきっているはず。ただでさえ一番人気がアテにならない傾向にある天皇賞・秋で、この馬のように押し出されて人気となった詰めの甘い馬というのは、どう考えてもお徳用とは思えず、勝たれたら仕方ないと割り切って軽視したい。

 宝塚記念(GI)からのぶっつけとなるリンカーンツルマルボーイシルクフェイマスについてだが、昨年こそこのローテーションでのワン・ツーとなったが、基本的にはぶっつけで勝てるほど府中の芝2000mは甘くないはず。加えて、リンカーンは本来長い距離向きと思われることに加えて不利な外枠を引いてしまい、安藤勝己騎手への鞍上強化を加味しても勝ち負けまではどうか。ツルマルボーイは、昨年も同じローテーションで勝っているだけに不気味だが、蛯名正義騎手への乗り替わりということがどうか。追い込み一辺倒の分かりやすい脚質ながら、これまでGIで好走したときは全て展開が嵌まってのものと、意外に注文がつくタイプだけに、テン乗りでいきなり能力全開となるか疑問だけにここは軽視したい。シルクフェイマスは、この春のGI路線で勝てないまでも悪くないレース内容だっただけに、この3頭の中では最も不気味。ただ、府中コースを正攻法で押し切れるだけの力を有しているかどうか、まだ未知数の面もあるだけに、今回は軽視することにした。