第39回スプリンターズS(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 今年もJRAの秋のGI戦線の開幕を告げる短距離王決定戦、スプリンターズS(GI)の季節がやってきた。今年も日本勢は昨年とほとんど変わり映えのしないメンバーとなってしまったが、香港から強力スプリンターが2頭参戦し、レースを盛り上げてくれそうだ。

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 日本勢が昨年と変わり映えのしないメンバーである以上、やはりポイントとなるのは香港馬の取捨ということになりそうだ。

 迷った末に、中心には◎サイレントウイットネスを挙げておく。安田記念(GI)で巷ではまったく馬鹿にされていた中でこの馬を本命に推し、見せ場たっぷりのレースを見せてもらった身としては、やはりここでは本命に推さざるを得ないだろう。その安田記念では初めての海外遠征で大幅に馬体が減っていたことに加え、初の左回り、そして本来守備範囲外ともいえる1600mでの大健闘。距離短縮、遠征2度目の慣れ、右回りになることを考えれば、巷の評価が一転サイレントウイットネスの断然ムードのなるのも当然といえる。世界最強スプリンターの強さを見せて圧勝までも考えられそうだ。

 とはいえ、中山の芝1200mが極めてトリッキーなコースであり、そのせいかこのレースで外国勢が軒並み苦戦を強いられてきたことは否定できない事実。それだけに遠征2度目で右回り、距離短縮なら当然に断然と言い切れない部分があるのも確か。いかにもパワーのありそうなタイプだけに、存外坂は苦にしないようにも思うし、安田記念で府中の坂をこなしただけに大丈夫とは思いたい。とはいえ、中山の旧坂となるとまた変わってくる可能性もあり、能力面から圧勝まである一方で、鉄板とまでは言い切れないのも事実だろう。

 となると、現在対サイレントウイットネス10連敗中の○ケープオブグッドホープにも逆転の望みが出てくるともいえそうだ。昨年は初めての中山の芝1200m3着。勝ったカルストンライトオには離されたものの、2着のデュランダルとの着差は僅かにクビ。その後今年に入ってオーストラリアS(豪GI)、ゴールデンジュビリーS(英GI)を制覇したように、さらに力をつけているのは間違いないところ。もちろん、これまでの単純な能力比較ではサイレントウイットネス上位は間違いなく、その点で2番手に評価を落としたが、昨年敗れたカルストンライトオは昨年の勢いになく、デュランダルとの力関係はこの1年の成長で逆転したと見れば、日本勢との比較で言えばこの馬が上位に来るのは当然だろう。中山コースの経験がある分、連軸としての信頼性はこちらが上。あとはサイレントウイットネスが坂を苦にしたとして逆転があるかどうかだ。

 日本勢は昨年から新たに新星が加わったわけでもなく、正直香港の強力2騎に対するには役者不足の観は否めないようにおもう。ただ、とりあえず逆転の可能性がある馬があるとすれば、ここへ来て2連勝中の▲シーイズトウショウを挙げておきたい。ここ2走の内容は完全に本格化した印象を与えるし、まともならここも好勝負と期待したいところ。問題は前走後に一息入り、調整過程の不安が伝えられているところだ。坂そのものは父サクラバクシンオーということを考えれば、そうも苦にするとは思えないし、仕上がってさえいれば上位争いを期待できるのだが。

 大穴を挙げるとすれば△ギャラントアローなどはどうだろうか。前走のセントウルS(GIII)は、そうも強力でない相手に4着となり、常識的にはどこにもないと思えるところ。しかし、その前走は本来の形でない控える形での消極的なレース運びがあの結果に繋がったように思う。中山コースは2戦2連対、今回は横山典騎手への乗り替わりで思い切ったレース運びが期待できそうだし、存外前に行った馬が残るのがこのレースの特徴でもある。カルストンライトオ、サイレントウイットネスがいるだけに、そもそもこの馬の形に持ち込めない可能性も大だが、展開次第では一発があってもおかしくないのではないか。

 ここ2年好走しているデュランダルは、相手関係がそうも変わっていないだけに、今回も単純な能力比較では上位争いをしてもおかしくない。ただ、勝った一昨年はこのレースにしては緩い流れ、2着の昨年は不良馬場で時計がかかりと、直線勝負一本槍のこの馬でも届く素地があったのも事実。今年は良馬場確実な上に韋駄天が揃っただけに、1分7秒台の争いになるのは確実だろう。それだけに今年はさすがに届かないのではないか。

 それならば、1分7秒台の時計を持っている△シルキーラグーン、△ゴールデンキャストの方が、実績的には見劣るとはいえ着争いならありそうで、配当面での妙味がありそうだ。△カルストンライトオは、能力面ではこのメンバーでも上位なのだが、とにかく状態面が問題。前走のアイビスサマーダッシュ(GIII)時が酷い状態だっただけに、そこからどこまで持ち直しているかがすべてだろう。(文責:ま)