10・23展望!!―日本競馬界・最大の謎をも吸い込むであろう「衝撃の瞳」、その正体とは?!

 2002年8月に急逝して世界の競馬ファンに深い衝撃と絶望をもたらした永遠のスーパーサイヤー・サンデーサイレンスだが、産駒たちの旋風はとどまるところを知らない。2003年のクラシック戦線では二冠馬ネオユニヴァース牝馬三冠馬スティルインラブを輩出しただけではなく、ネオユニヴァースの三冠を阻止したのも孫のザッツザプレンティと事実上クラシックを独占し、2004年もダービー(キングカメハメハ)以外のクラシックを子と孫で全勝したサンデーサイレンスは、まさに世界に並ぶものなき最強の種牡馬との名に恥じない。一時期サンデーのライバルと呼ばれたブライアンズタイムもこれでは形無しで、まさに「死せるサンデー、生けるブライアンズタイムを走らす」といったところだ。(夕刊ミルキー編集委員・シエ尻馬文)

 だが、既に歴史上最高の種牡馬であることに疑問の余地が無いほどの実績を築いたサンデーサイレンスが、2005年にそれ以上の快挙を成し遂げるとまで予測した競馬関係者は、さすがにほとんどいなかっただろう。無敗の三冠馬ディープインパクトの輩出である。

 毎年当然のように産駒からクラシック馬を送り出してきたサンデーサイレンスだが、不思議なことに、これまで三冠馬だけは送り出すことができなかった。スティルインラブ牝馬三冠は達成したものの、「最もファンの関心が高い牡馬の三冠馬が出ていないことは、日本競馬界の最大の謎」というのが、従来からささやかれてきた競馬ファンの声だった。しかし、そんなねじれ現象が解消される日がやって来ようとしている。それが、今月23日の菊花賞なのだ。

 JRA史上、無敗のまま皐月賞、ダービー、菊花賞を制したのは、84年のシンボリルドルフしかいない。だが、「84年と今の競馬を比べると、同じ『無敗の三冠』といっても、その価値は全然違う」と、競馬界OBは指摘する。

「84年当時といえば、日本に入ってくる種牡馬は欧米で既に失敗したか、血統的にも競走成績としても二流だったために最初から種牡馬の墓場と呼ばれた日本へ売られたかのどちらかだった。だが、今は違う。血統的にも競走成績も超一流の馬が、いきなり日本で供用される。米国年度代表馬サンデーサイレンスがいい例だ。いまや、日本の繋養種牡馬の水準は世界一と言ってもいい」

 「種牡馬の墓場」の時代の馬産ならば、その中で抜きん出た実力を示すことは容易だが、世界一の種牡馬大国の馬産の中で圧倒的な実力を示すことは、至難の業だ。そんな難業をも当然のように成し遂げたサンデーサイレンスは、まさに不世出の偉大な種牡馬なのだ。

 史上最強馬ディープインパクト光臨の陰に隠れがちだが、今年の菊花賞は、実はサンデーサイレンスの凄みを何よりも顕著に物語っている。出走する16頭のうち、サンデー産駒が実に7頭、サンデーの孫が4頭(うち1頭は母の父)と、サンデーの血族が実に69%を占めているのだ。前記OBは、断言する。

「今年のクラシック世代の実力は、例年にも増してレベルが高い。その中を圧倒的な強さで勝ち抜いたディープインパクトは、おそらく日本競馬史の中で最も優れたサラブレッドと呼ばれることになるだろう。」

 そんな現馬神ディープインパクトには、もはや現役を続行する意味すらなさそうだが、厩舎関係者の間でささやかれているのが、そんな難題を吹き飛ばす仰天サプライズ計画だ。

「来年のディープは、日欧米ドバイGl完全制覇を目指すようだ」

 今秋にジャパンC有馬記念を圧勝すれば、ディープインパクトが国内で勝つべきレースなど残っていない。そこで、来年はドバイワールドCキングジョージ&エリザベスS、凱旋門賞ブリーダーズカップターフを完全制覇すべきだというのである。

 いくら日本の馬産が世界最高レベルに達したといっても、これだけのアウェーのレースを移動の不利も抱えたまま勝ち続けるとすれば、さすがのディープインパクトとはいえ相当に高い障壁だ。なればこそ、それを達成した時の価値も絶大なものとなる。日本代表ディープインパクトの名前は、父である世界のサンデーサイレンスの名前とともに、不朽の栄光の象徴として語り継がれることだろう。

 この場合、ディープインパクトの黄金の蹄跡は、有馬記念で締めくくられるという。

「2006年のクラシックといえば、2002年8月に死亡したサンデーサイレンスが、倒れる直前に種付けして生まれた最後の世代が主役になる。その中からは、ディープインパクトに匹敵する強豪が生まれても、なんら不思議はない」

 永遠のスーパーサイヤーの最後の傑作が、世界のディープインパクトに挑む。これほどドラマティックな展開は、他には考えられない。

 人気の低下が叫ばれる競馬界だが、もしこのウルトラDが実現すれば、一転して人気が沸騰するに違いない。この世にいないサンデーに頼らなければ人気回復のめども立たないJRAは情けないが、サンデーはそれほどに偉大だったということである。恐ろしいのは、サンデーサイレンス産駒がいなくなる2007年クラシックでの失望と凋落だけだ。