種牡馬オグリキャップの笠松競馬場での展示は期間限定になる方向で調整中(差替)

 1990年JRA年度代表馬オグリキャップ(牡20歳)[父ダンシングキャップ、母ホワイトナルビー(母父シルバーシャーク)|三石町・稲葉牧場産]が、昨年度の供用(種付け頭数は6頭)を最後に種牡馬を引退することが確実な情勢となった。今後は、存廃問題の渦中にある公営笠松競馬の利用客誘致に貢献するため、早ければ2005年4月から笠松競馬場にて展示馬として余生を過ごすことになる。【中日新聞3月11日付記事】 [初稿:03/11、追記:03/15、差替03/23]

 中日新聞によると、存廃問題の渦中にあり2005年度は単年度黒字計上を条件に試験的存続となった公営笠松競馬(岐阜県)の目玉として、1990年の現役引退後も根強い人気を誇るオグリキャップに改めて着目した笠松競馬の関係者が、馬主の佐橋五十雄氏に対してオグリキャップ誘致を申し出たこところ、佐橋氏は3月10日に笠松競馬場を来訪し、「競馬をしない人でも、オグリキャップは知っている。笠松競馬の存続の応援になれば」として移動を了承したとのことである。

 笠松競馬場では、場内に専用馬房を設け、24時間態勢で同馬の世話のため人員を配置する予定だという。同馬を記念して施行されているオグリキャップ記念(統一GII)[04/29]に合わせて、一般公開を開始する見通し。ただし、北海道から岐阜県まで長距離移動させた上、競馬場内で一般公開されることは、20歳と相当の高齢に徹している同馬にとっては身体的負担が軽くはないだけに、この点を懸念する声もあるようだ。

 [03/15追記] オグリキャップ☆サポーターズクラブでは、3月14日からBlog「オグリキャップを守ろう」を開設し、同馬の繋養地移動の是非について意見を求めている。オグリキャップ☆サポーターズクラブは、父オグリキャップ産駒を生産・共有する目的で結成された有志による任意団体であり、馬主の佐橋氏と繋養先の新冠町・優駿スタリオンステーションから公認も受けている。ちなみに、同馬の種牡馬シンジケートは既に解散しており、現在、同馬の所有権は佐橋五十雄氏による個人所有。

 [03/15追記] 北海道新聞3月15日付記事によると、公営笠松競馬サイドは「笠松にいる期間は決まっておらず、夏には一時的に新冠に戻ることもあり得る」と説明しているとのことで、繋養先の新冠町・優駿スタリオンステーションも「馬産地として競馬場を一つでも残すために協力しようと決断した」と同馬の移動に同意している模様。

 [03/23追記] 日高管内選出の北海道議会議員・藤沢澄雄氏(静内町・藤沢牧場代表)の公式ウェブサイト・掲示板に掲載された藤沢澄雄氏からのアナウンスによると、オグリキャップ笠松競馬場での展示は期間限定の一時的なものに変更される方向で、関係者間の協議が進められていることが明らかになった。これに伴い、同馬の種牡馬登録についても、必ずしも抹消されるとは限らない状況になったといえそうである。

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―同馬の現役生活―

 同馬の現役時代―「オグリキャップ・ブーム」というものは、それはそれは凄かったのである。特に、同馬のラストラン(1990年有馬記念)に至っては、数字や言葉では再現することが難しいくらいの常軌を逸した雰囲気―世相というものが、確かに存在したのである(故・大川慶次郎氏の「ライアン!」とか、「中山に涙で虹がかかった」という都市伝説とか)。当方如きが何を述べようとも、それはそれは陳腐な言葉になってしまうので、同馬の現役時代を直接には知らない人は、下記の参考資料などに触れてみるほか、各自手探りで想像してみてもらいたい。

  netkeiba.com 競走成績
  JRA50周年記念 時代を駆け抜けた名馬たち「オグリキャップ―炎の記憶」
  JRA50周年記念 思い出の名レース「平成2年有馬記念(GI) オグリキャップ」
  JRA50周年記念 アーカイブス「顕彰馬オグリキャップ」
  JRA競馬博物館
  馬自北方来〜馬の北方より来る〜 顕彰馬列伝「スーパースター オグリキャップ」

 参考文献としては、渡瀬夏彦『銀の夢―オグリキャップに賭けた人々』(講談社、1992年・1996年)がある。同著の完成度については極めて評価が高く、第14回講談社ノンフィクション賞、第6回JRA馬事文化賞を受賞している。同著を一読することを是非勧めたい(ちなみに、「『銀の夢』を超えることは不可能である…」として、Retsuden.comにおいても『オグリキャップ本紀(仮称)』の執筆は断念されているという)。また、漫画としては、よしだみほ『馬なり1ハロン劇場 オグリキャップ編』(アクションコミックス)を無視することはできない。

 映像資料としては、DVD『オグリキャップ―魂の激走』(ポニーキャニオン)が手頃だろう。それから、ぬいぐるみも流行った(たとえば静内の「馬っ仔ハウス」さんでは現在も扱っているようだ)。


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―同馬の種牡馬生活―

 同馬の産駒成績は2005年3月6日現在、JRA通算884戦48勝二着66回三着62回。JRA重賞は未勝利、JRAオープン特別1勝。直近の産駒勝ち上がりは2002年8月18日・3回小倉4日目7R・障害未勝利戦におけるコアレスキャップ。

 主な勝ち鞍は、1994年ききょうS(OP)[オグリワン]。主な戦績は、1994年小倉3歳S(GIII)2着[オグリワン]、1995年クイーンS(GIII)2着[アラマサキャップ]、1994年福島3歳S(OP)3着[アラマサキャップ]、1996年エルフィンS(OP)4着[ツルマルビジン]。代表産駒は、ランスルーターフ(牡・1995年生)[JRA平地3勝、JRA障害1勝]、ノーザンキャップ(牡・1992年生)[JRA平地3勝]、ツルマルキャップ(牡・1992年生)[JRA平地3勝]、ゴールデンチャイナ(牡・1992年生)[JRA平地3勝]、アラマサキャップ(牝・1992年生)[JRA平地2勝、1995年クイーンS(GIII)2着]、オグリワン(牡・1992年=オグリキャップの初産駒)[JRA平地2勝、1994年ききょうS(OP)、1994年小倉3歳S(GIII)2着]。

 ちなみに、同馬産駒最後の中央競馬所属予定馬は、オグリキャップ☆サポーターズクラブが出資者を募って生産した幼名「はるかちゃん」(牝・2003年5月20日生)[母ツジノチェリー(母父サクラユタカオー)、新冠町・新冠本牧場産]になるものと見込まれている。

 種牡馬チャート(オグリキャップ)

 ※1走当たり賞金額とは、平均値の約135万円を上回れば上回るほど、種牡馬として産駒1出走ごとのコストパフォーマンスに優れていることを示す数値。