岩手競馬経営改善計画の大枠固まる―盛岡・水沢の2場体制を維持

 経営難に陥っている公営盛岡・水沢競馬を運営する、岩手県競馬組合の経営改善計画の大枠が、9月17日までに固まったと報じられている。現在の、盛岡・水沢の2場体制を維持しつつ、競争原理を大幅に導入したり、組合組織を縮小して直接事務を最小限の範囲に留めるなど、経営形態を抜本的に見直すことによって、2006年度末までの収支均衡を目指す内容とされる。

 岩手県競馬組合岩手県の協議はすでに大筋でまとまっており、今後構成団体の盛岡市水沢市との最終調整に入るようだ。なお、今回の改善計画は大枠の基本方針を示すにとどまっており、今後11月半ばを目処に具体的な再建案を示す行動計画を策定する方針のようだ。

 開催形態については、岩手県議会の出資法人等調査特別委員会から、現行の2場体制の見直しを含めた検討を求められていたが、地域経済への影響や、1場にした場合の収支分析などを総合的に判断して現行の2場体制を維持することとしたようだ。なお、場外馬券売場の休止・廃止も今回の計画には盛り込まれない見通しのようだ。

 一方、業務委託の大幅な拡大が可能となる改正競馬法を踏まえ、岩手県競馬組合の直接事務を、開催日時、競馬場、競走の種類の決定などに限定し、その他は公営法人や民間業者に委託する方針のようだ。これまでも、補完業務や映像、電算システムなどは岩手県競馬振興公社や関連企業に委託していたが、随意契約が採られる結果コスト高を招いた面もあり、今後は可能な限り競争入札を取り入れてコストの削減を目指すほか、場外馬券売場の運営を丸ごと民間業者に委託することや、委託費を固定せずに売上の一定割合を支払う形にすることで、民間の力で経営を改善していくことを目指すという。

 さらに、九州地区の佐賀競馬荒尾競馬との提携を推進。共同コンピューターの導入によるコスト削減や、共同での場外馬券売場の建設を目指すという。その際にも、新たな設備投資は行わず、NAR地方競馬全国協会などからの補助金や、民間資金を導入することを目指す。

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 岩手県競馬組合の経営改善計画の大枠が固まったのを受けて、このたび民間出身者から岩手県競馬組合事務局長に就任した柴田哲氏(59歳・元三井鉱山常務)が、9月17日付の「盛岡タイムス」紙面でインタビューに応じている。柴田事務局長は、就任のいきさつについて「県競馬組合を再生させる目的で来ているので必ずや再生させたい。どちらかといえばわたしの方から手を上げた」とさすがは外部出身者と思わせるだけの積極性を示すとともに、今後の経営方針について「「縮小均衡論は考えていないが、新たな設備投資による拡大路線も考えていない。競馬法改正に伴い今までより広く自由度が高まり、民間の力の活用もできる。それらを利用してより収益性の高い事業体にしたい。そうはいいながらコスト縮減はしないかというと、これもかなり思い切ってせざるを得ないと思う」と、徹底したコスト管理と増収増益策の検討を宣言。「わたしは楽観的な強気論者」だとインタビューを締めくくっており、今後の岩手県競馬の実質的な舵取りに臨む意欲を表明している。【盛岡タイムス】

 これに呼応するように、NAR地方競馬全国協会の上原勝美常務理事も9月20日に、改正競馬法の運用案に触れるかたちで岩手県競馬の経営改善策に言及。「民間が持つ競争力の導入が最大のポイント。主催者の事務は根幹部分だけで、いい意味での丸投げができる。さらに連携計画による補助金も受けられることも大きい」と地方競馬における民間委託の効能を広く解釈するとともに、「あとはいかにコスト意識を持つかだ。全国でも岩手に対する期待は大きく、法改正を生かした再生は可能」と岩手県競馬の経営再建は具体的な議論と述べている。【岩手日報】

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 岩手競馬は、景気低迷などの影響を受け、ピークの1991年度には約690億円だった発売収入が、2002年度には440億円まで減少。1980年代には約5万円だった客単価も、約1/4に落ち込んでいるという。昨年度は約39億円の赤字となり、累積赤字は既に104億円に上っている。こうした状況を受け、増田知事は、2004年度前半までに経営改善計画を策定することを条件に、2006年度までの事業継続を表明していた。【岩手日報】

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 ようやく、岩手競馬の経営改善に向けての動きが具体的に動き始めた。さしあたりは今回の競馬法改正を受けた、至極順当な内容となっているのではないだろうか。場外馬券売場の民間委託についても、既に公営福山競馬での前例があるので、こちらも参考となるだろう。今後は、具体的な行動計画と、あとは競馬界全体の改革に向けての動きがどう絡んでくるかがポイントとなってくるのではないだろうか。

 もっとも、岩手県議会の出資法人等調査特別委員会は、今年7月26日〜7月28日には岩手県競馬と連携を進めている公営佐賀競馬を視察するとともに、2003年度限りで競馬開催を廃止した公営上山競馬についても廃止の経緯を調査するため山形県上山市に県議を派遣している。【岩手県議会】 存廃両論を平行して検討している現状に違いはないので、今後も注意を喚起し続ける必要があることは無論である。