日本経済新聞、コラム「底流にあるものは何か? 春闘、皐月賞…」を掲載

【日本経済新聞】 野元賢一・運動部記者による執筆。道営ホッカイドウ競馬の「外厩制」一期生として参戦したコスモバルクが2着に入った皐月賞(GI)と、5年ぶりに開催ストの可能性が取り沙汰された厩務員春闘を題材に、筆者のかねてからの主張である、競馬界の閉鎖的な運営システムに外部の空気を取り込む必要性を説いている。

 皐月賞について、ダイワメジャーの勝利はスローペースと前残りの高速馬場、コスモバルクの仕掛け遅れが大きな要因であるという前提のもとに、「スローペース症候群の背後には、JRAの金満競馬に牙を抜かれた騎手たちの闘志不足がある」「GI30連敗中の美浦所属騎手・・・の1人が、レースの様相を変えた」「(五十嵐冬樹騎手とコスモバルクは)JRA騎手たちのつくる、緩み切った磁場に脚を取られた」と総括。

 続いて厩務員春闘について、スト通告の要因となった定昇凍結問題は、「「労使交渉の当事者たり得る」という“お墨つき”」を公取委から得た日本馬主協会連合会が、特別出走手当の支給条件厳格化や、成績不振馬の出走制限強化などによって、月2回の出走手当で預託料をペイするという公式が崩れたために、預託料の主要部分を占める人件費の引下げに動いたことが背景にあると指摘。これを、「賃下げ」が行われるには「外部」の存在が不可欠であるという独自の論理を示した上で、「外部」の存在しない中央競馬には「一律の下げは・・・そぐわない」とし、「きゅう舎従業員の給与問題は、複雑怪奇なきゅう舎システムの局部に過ぎず、そこだけを捕らえるのは短絡的アプローチ」であると批判。一方で、一部の厩舎で見られるようになった「1人2頭持ち」の慣行の見直しや、「今回の労使交渉の過程で、労働環境についての協議機関が設置される方向が決まった」ことなどを挙げて変化の兆しを指摘。最後に、「競馬にアプローチする人も、方法論ももっと多様であって良い」「内側で進む変化を加速させるには、外部の風を取り込むことが欠かせない。」とまとめている。

 今回も「閉鎖性」の打破と「外部」の取り込みという従来の主張を繰り返しておられるのですが、スローペース症候群やらステレオタイプ中国経済論やらが飛び出してくることもあっていつもながら冗漫な印象は否めませんね。それに、抽象的な議論に終始して具体性に欠けるところも気になります。一部の厩舎が変わりつつあるように、内厩制が維持されるとしても「外部」の影響を受けて変わっていくことが望ましいのか、それとも、根本的には「外厩制」あるいは厩舎制度の「自由化」が望ましいと考えておられるのか、しかしその場合にどのような過程を踏むのか、予想されるリスクをどう回避するのか、具体的な立論を期待したいところですね。