日本経済新聞、コラム「検証・競馬法改正(3) 目玉は"現状追認"」

 【日本経済新聞】 野元賢一・運動部記者による執筆。競馬法改正案について検証するシリーズの第3回では、地方競馬問題以外に関する改正内容について取り上げている。

 「重勝式馬券の復活と、学生・生徒に対する馬券購入制限の見直しが盛り込まれた。いずれも、意義を否定するものではないが、必ずしも競馬界で機運が盛り上がっていたわけではなく、『なぜ今』という感がある。」

 ところで、日本競馬の重賞式馬券は、世界でも稀な独自展開の可能性を秘めているらしい。なぜならば、「理論上『同日に行われるレースなら何でも売れる』とされた」ことによって、「重勝式は、単勝複勝、連勝複式、連勝単式の4賭式(基本勝馬投票法)の組み合わせが可能」となり、「おそらく世界のどこにも売っていない“トリプルトライフェクタ”(3つのレースの3連単をすべて的中させる)も『あり』」となった。「香港には「一瞬で人生を変える馬券」と言われるトリプルトリオ(3連複重勝)があるが、それを超える馬券が導入可能となった」というのである。

 このように、重賞式馬券については、バラエティに富んだ馬券商品の提供が実現するという点で、一定のファンサービスとして評価されるべきであることには、異論のないところだ。では、これが「日本の競馬のあり方」を一新するほどの起爆剤的効果があるかといえば、そのようなことは野元記者もいう通り確かにあり得ないだろう。このようなハイリスク・ハイリターン式の馬券は、もはや宝くじ的要素が濃厚であるため、おそらくは少額購入者しか現れないであろうことが容易に想像されるからだ。

 野元記者の指摘はこのように、いちいち至極もっともなのだが、できることならば、馬券種類の改変という極めて興行的判断によるところが大きい項目についてまで、改正が容易でない法律事項に定めていた(農林水産省令や競馬施行規則で充分だたはず)、競馬法そのものの欠陥についても、言及して構わなかったのではないだろうか。

 この後、野元記者は、とうとうと学生の馬券購入解禁について字数を割いているのだが、「売り上げへの効果は未知数」どころか、皆無と思われるのだが。もっとも、野元記者はこの点でも、競馬法改正は単なる「現状追認」に過ぎず新しい効果が期待できないという趣旨であるので、管理者の指摘との間では実質的な齟齬はない。