プレ・レーステストで薬剤が検出され、香港マイルを出走取消となったサラファンの顛末

 【JAIR競馬国際交流協会】 レース前に行われる薬物検査、プレ・レーステストで禁止薬物のコルチコステロイドが陽性となり、香港マイル(港GI)の出走を断念することとなったSarafanについての事件の顛末が翻訳されて取り上げられている。

 翻訳の元となっているSouth China Morning Postの記事は、2003年12月12日付の記事で、この事件についての香港ジョッキークラブおよびSarafanの関係者の動きを解説した上で、4月のクイーンエリザベス2世C(港GI)で南アフリカ代表のEventuailが、同様に出走を断念せざるをえなかった事件との違いを取材している。

 さらに、12月17日付の記事で、Sarafanに投与されたコルチコステロイドが、米国を発つ前に投与されていたものであり、そして香港マイルに参戦する前にジャパンカップ(国際GI)に出走していたことを問題視。JRAの薬物検査態勢に対して疑問を投げかけている。

 これに対し、JAIRによる解説では、世界の主要な競馬開催国が「馬に対して一定の薬理学的作用を示す物質および隠蔽剤」を禁止薬物と規定して、具体的な薬品・薬剤名を明示し公表していないのに対し、日本では競馬施行規定あるいは競馬実施規則で禁止薬物名を具体的に明示し、薬物検査ではそれらの禁止薬物を対象とした検査しか行なわれないことを前提にした上で、コルチコステロイドが禁止薬物となっていないことを指摘。「香港における今回の議論は、そういう事情に疎いがための一方的な誤解である。」としている。

 なお、同解説内では、各国の薬物投与規制の制度が、長い歴史と多くの事例を元に、それぞれ異なった事情や法体系の元で定められていることを指摘し、その優劣を一概に決めつけることはできないとしている。また、香港で採用されているプレ・レーステストについては、検査経費が非常に大きくなること、プレ・レーステスト後の監視体制が難しいことなどを理由に、世界の主流とはなっていないとしつつ、多様な経歴を持つ、多くの競走馬が世界各国から集まる国際競走に限っては、競馬の信用を失墜させる禁止薬物陽性事例の発生を未然に防止するという見地から、プレ・レーステストを導入は一考に値するとしている。

 先日、昨年のミドルパークS(英GI)で1位入線したThree Valleysが、薬物検査で陽性とされて失格になった事件では、ガイドラインに従った投与がなされていたにもかかわらず検査で陽性となってしまうなど、競走馬に関する各国の薬物投与規制については、多くの問題が噴出してきている。競馬のグローバル化が急速に進んでいる昨今の状況から、世界レベルでの薬物規制についての一定の合意の形成が近いうちに必要とされるのかもしれない。