見え隠れする!?ジャパンC、ジャパンCダートともに日本勢大圧勝という”シナリオ”

 今週は毎年恒例となったジャパンCウィーク。土曜日のメーンがジャパンCダート、日曜日のメーンがジャパンCという豪華番組、そして日本馬との力関係が不明な海外招待馬との対決はもはや秋の風物詩だが、今年は日本馬優勢で、終わってみれば、ジャパンCジャパンCダートとも日本勢の大圧勝というシナリオが見え隠れする。そのシナリオとは―。(週刊ミルキー編集委員・シエ尻馬文)

 近年は日本馬優勢の傾向が強かったジャパンCだが、昨年はファルブラヴサラファンによる外国馬の決着となった。

ジャパンCは、ある程度周期的に日本馬の優位と海外招待馬の優位が繰り返される傾向がある」

と分析するのは、海外競馬専門紙の有力関係者だ。なるほど、ジャパンC創設直後は外国馬優勢が続いたものの、その後カツラギエースシンボリルドルフが連勝。その後再び外国馬優勢となり、外国馬が6連勝。92年にトウカイテイオーが優勝した後はレガシーワールドマーベラスクラウンと日本勢が3連勝した後は、95年から97年までが外国馬、98年から2001年までが日本馬と周期的に勝ち負けが入れ替わっている。ところが、昨年はひさしぶりに外国馬が勝っている。外国馬、日本馬とも勝ち負けが1年だけで入れ替わった例はなく、この論法でいくならば、今年も外国馬の優勢が続きそう、ということになるだろう。

 しかし、そうは問屋が卸さないのが今の日本競馬だ。別の海外予想紙有力記者は、次のように反論する。

「今の日本馬のレベルは、過去の常識が当てはまらないほどに向上した。今年も日本馬だろう。」

 この記者によれば、世界的大種牡馬サンデーサイレンスの産駒がデビューした後の日本競馬には、従来の常識はもはや当てはまらないという。

 サンデー産駒が3歳を迎えた95年から97年までは外国馬が勝っているが、この3年間でジャパンCに出走したサンデー産駒のG1馬は、バブルガムフェロー牝馬ダンスパートナーのみ。巡り合わせでサンデー産駒の真の一線級の出走が乏しかったために外国馬につけいられたが、その後は日本馬が連勝。20世紀の競馬を一新したサンデー産駒と、サンデー産駒と戦うことによってレベルアップした他の日本勢の前に、外国馬たちは歯が立たなかった。

 昨年は外国馬が勝ったとはいえ、中山開催という特異な条件があったことを忘れてはならない。まぎれの起こりやすい中山コースならともかく、馬の実力がストレートに反映される府中なら、日本馬優位は動かない。

 まして、外国馬を迎え撃つ日本馬は、近年にない黄金のオールスターズだ。栄光の二冠馬ネオユニヴァース、そのネオの三冠を阻止した久々の強い菊花賞ザッツザプレンティ、未完の大器サクラプレジデントサンライズペガサス、マル父最強古馬ツルマルボーイ、そして総大将格のシンボリクリスエスと多士済々。エリザベス女王杯で死闘を繰り広げたアドマイヤグルーヴスティルインラブの両女王の出走がないのは残念だが、それを除けばこれ以上ない顔ぶれが揃っている。

 それに対し、外国馬たちの顔ぶれはいまひとつだ。今年の目玉とされるのはブリーダーズCターフの覇者ジョハーだが、さほどハイレベルとはいえないメンバーで、しかも人気薄の気楽さを生かしてやっと同着Vというのでは、過大評価はできない。さらに、今週の火曜日に突然馬場入りを中止し、体調不安もささやかれる。JRAが設けたブリーダーズCターフ、JCの連勝馬への1億3000万円のボーナスに目がくらんでの参戦だろうが、日本競馬はそんなに甘くはない。ブリーダーズCフィリーズを勝ったイズリントンも、前走が目標でお釣りはなく、典型的な「危険な人気馬」だ。一部で穴人気となっているアンジュガブリエルも、見かけの実績は立派だが、相手関係の手薄なG1、G2を選んで好走してきたというのが実態で、凱旋門賞では9着と馬脚を現している。

 日本馬優位なのは、ジャパンCだけではない。ジャパンCダートも、ダート界に舞い降りた超新星サイレントディール、そしてサンデーサイレンス産駒アドマイヤベガの半弟として注目された、「サンデー門下生」ともいうべきアドマイヤドンの両雄の圧倒的な力を脅かす存在は、日本馬、外国馬とも現れていない。

 こうして有力馬を眺めても気づくのは、サンデーサイレンス産駒の圧倒的な強さである。これまでのダート競馬では「サンデー産駒はG1を勝てない」というジンクスがあったが、それはサンデー産駒の一線級が芝にこだわってダートを使わなかったから。ダート競馬の地位が向上し、サンデー産駒の一線級もダートに参戦するようになると、ゴールドアリュールがダートG1を勝ちまくり、さらにサイレントディールも現れた。芝がサンデー産駒に追随することでレベルアップを果たしたのと同じ現象が、ダート界でも起こりつつあるのだ。サンデーサイレンスが20世紀最後のスーパーサイヤーと呼ばれるのは当然だろう。

 今年のジャパンCウィークも、「終わってみるとサンデー産駒」の決着になる可能性が極めて高い。

「馬券勝ち組になれるかどうかの境目は、サンデー産駒をどこまで疑わないでいられるかによって決まる」

という馬産地関係者の指摘は、的を得ている。問題はもはや、サンデー産駒を残すだけでは絞りきれない馬券をどう絞るかでしかないのだ―。

 この連載はフィクションであり、夕刊●ジ編集委員・シエ尻●文氏に捧げます。