伝説の馬券師もお手上げ!?〜父内国産馬が弱すぎると馬券が当たらない真相〜

 秋のG1戦線もいよいよ本格化しつつあるが、それと同時に加熱していくのがファンによる馬券狂騒曲。春はヒシミラクル単勝馬券を転がしたとみられる「ミラクルおじさん」が話題になったが、不況のあおりで馬券に注がれる視線も熱くなる一方だ。だが、その一方で、ある伝説の馬券師は「近年の競馬では、馬券を当てにくくなっている」と嘆いている。その真意は―。(夕刊ミルキー編集委員・シエ尻馬文)

父内国産馬が弱すぎると、馬券が当たらない」

 そう語るのは、かつて万馬券を連発し、一部から「伝説の馬券師」と呼ばれているある予想家である。もっとも、近年は馬券の的中率が下がり、不振が伝えられている彼だが、その原因は「父内国産馬が弱すぎること」だというのだ。

「余計なことを考えすぎると馬券の本質を見誤ってしまう。馬券の基本は、本来いちばん強い馬を見つけること」

 彼は、自らの馬券観についてそう語っている。なるほど、馬券は3着以内に入る馬を当てるもので、競馬の前提として「強い馬が勝つ」ということを外せないことを考えると、その意見は説得力がある。

サンデーサイレンスの仔が強いに決まっているのだから、予想の軸はとにかくサンデーの仔に集中させておけば、おのずから好結果はついてきた」

という「必勝法」も、あながち間違ったものではなかったのだろう。

 だが、その彼は、最近の不振の理由についてこう語っている。

「最近は、サンデー以外の馬、特に父内国産馬が弱すぎる。G1なのに、サンデーの子だけで7頭、8頭と出てくる。2、3頭の中の1頭が絶対の軸とわかっていれば馬券は簡単だが、絶対の軸の候補が8頭もいたのでは、馬券は難しくなるだけだ」

 競馬を支える馬券の売り上げのために、サンデー以外の馬、特に人気を背負いやすい父内国産馬にもっと頑張ってほしい、というのが馬券師の弁である。昨年8月に急逝したサンデーサイレンスだが、その血の力は、死後なお日本の競馬界を左右し続ける。まさに永遠のスーパーサイヤーの証といえるだろう。

 ちなみに、今週の菊花賞についてこの馬券師に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

「サンデーの子が6頭もいるので予想は難しいが、優れた血を持つもの同士だけに、差をつけるとしたら母系の血。母の父を見ると、ネオユニヴァースがクリス、サクラプレジデントマルゼンスキーリンカーントニービンで、3000mに対応できるスタミナの魅力を感じる」

 血統にも詳しい馬券師の見立てでは、サンデーサイレンスは母系の血の優秀さを引き立たせるという特徴があるという。人気のゼンノロブロイは、母の父がマイニングという血統が障害となって、戴冠には至らないとのことだ。ちなみに、サンデー以外の種牡馬を父に持つ12頭は、サンデーの孫を含めて用はないという。

 たとえ世界の大種牡馬サンデーサイレンスの子供たちであっても、さらに母系の適性によって選別されるというのが競馬の厳しさだ。果たして、今年の菊花賞では馬券師の指摘どおりの結果となるのか、それとも父内国産馬たちの逆襲があるのか。興味深い問題である。

 この連載はフィクションであり、夕刊●ジ編集委員・シエ尻●文氏に捧げます。