[中央]第131回天皇賞・春(GI)|優勝:スズカマンボ|父:サンデーサイレンス|生産:静内町・グランド牧場

 5月1日、京都競馬場で行われた長距離戦の最高峰、天皇賞・春(GI)は、13番人気の伏兵スズカマンボ(牡4歳)[安藤勝己騎手、橋田満厩舎(栗東)]が、中団の内で脚を矯め、直線もそのまま内を衝いて差しきり優勝した。勝ちタイムは3:16.5。

 【JRA日本中央競馬会】 [牡馬牝馬限定・国際:京都・芝3200m:定量・小雨・良]

 大阪城S(OP)、大阪−ハンブルグカップ(OP)と2連勝中ながら14番人気と全くの人気薄だった2002年の中山金杯(GIII)勝ち馬ビッグゴールドが、2番手追走から4角で先頭に立つ積極策で1 1/2馬身差の2着。さらにハナ差の3着に4番人気のアイポッパーが入り、馬単が169,320円、三連単が1,939,420円の大波乱となった。

 レースは、スタート直後にビッグゴールドが先頭に立つも、1周目のスタンド前で昨年のこのレース3着のシルクフェイマスがハナに立つ出入りの激しい展開。一番人気に推されたリンカーン、2番人気に推されたオーストラリアからの遠征馬マカイビーディーヴァは後方からの競馬となり、3番人気の一昨年のこのレースの勝ち馬ヒシミラクルは好位の外で終始掛かり気味の追走となる。4角手前でシルクフェイマスが一杯となり、一旦は2番手に控えていたビッグゴールドが直線を向いて一気に抜け出したが、中団の内で終始脚を溜めていたスズカマンボが、直線もそのまま内目を衝き、直線半ばで差し切った。リンカーンは直線伸び切れずに6着まで、マカイビーディーヴァもこの馬なりに伸びたものの7着どまり。終始折り合いを欠いたヒシミラクルは直線でばったりと脚が止まり16着、途中からハナに立ったシルクフェイマスは最下位の18着に沈んだ。

 勝ったスズカマンボは、父サンデーサイレンス、母スプリングマンボ(母父Kingmambo)という血統構成。北海道・静内町グランド牧場の生産で、馬主は「スズカ」などの冠号でお馴染みの永井啓弐氏。昨年の朝日チャレンジカップ(GIII)を制したものの、ここまでGIでは昨年の日本ダービー(GI)の5着が最高とややパンチ力を欠き、今期は緒戦の大阪−ハンブルグカップを3着してここに臨んでいた。

 勝ったスズカマンボの勝因は、とにかく終始内で脚を矯め、直線も外に出さず内を衝いてきた安藤勝己騎手の好騎乗に尽きる。もともと、一線級ではパンチ不足の嫌いがあったところを小雨の降る馬場と内を立ち回ったことでカバーした感があり、今後もGIクラスで互角に戦っていけるかどうかは微妙なところ。次走が試金石となりそうだ。

 2着のビッグゴールドは、2連勝中でも全くのノーマークだったが、その2連勝で負かした相手と、下見での気配の良さを考えれば、ここはいかにも人気がなさ過ぎた。確かに前が残る展開に恵まれた面があることは否定できないし、長距離戦得意の和田竜二騎手の好騎乗も讃えるべきであろうが、自分から勝ちに行く競馬に出ての粘りこみなのだからその内容は評価していいはずで、少なくとも脚を矯めるだけで自分から動いていけなかった今回の人気馬たちよりは評価してあげたいところ。決め手のあるほうではないだけに、今後もGIで勝ちきるまでにはある程度恵まれないと厳しいかもしれないが、積極策でしぶとさを発揮できる局面になれば、今後も侮れないように思う。

 3着のアイポッパーは、現状の能力は出しているといえるだろう。前走の阪神大賞典(GII)でもマイソールサウンドの3着にとどまっているように、まだ一線級相手に勝ち負けに持ち込むだけの能力は持ち合わせていないようだ。今後もう一段の成長があるかどうかだろう。

 惜しかったのは4着のトウショウナイト。それなりに出入りの激しい流れだったし、スムーズに流れに乗って末を生かしたのだから、内容は決して悪くはないが、もう少し積極的に乗っていれば結果はどうだったか。せっかく得意の渋った馬場になっただけに、結果論を承知の上で強気の競馬が見てみたかった。とはいえ、下見の気配が抜群だったように、今期の充実ぶりは本物。決めて比べではやや見劣りする面もあるだけに、GIを勝ちきるにはある程度条件が揃わないととは思うが、今後の活躍に期待したい。

 5着にハーツクライは、一時期のひどい状態からは脱しているものの、相変わらずレースぶりに成長がない。直線だけの競馬ではGIを勝てるほど甘くはなく、この点の変わり身がない限りどんなに頑張ってもせいぜいGIIが天井だろう。6着のリンカーンは結果論的には折り合いに専念しすぎて位置取りが悪くなった。とはいえ、抜群の手応えで取り付いて阪神大賞典が不発だったように、ここももっと前につけていたとしても勝ちきるだけの脚があったかは疑問。やはりGIを勝てるだけの力は持ち合わせていないのだろう。

 オーストラリアの名牝マカイビーディーヴァは、この馬なりの脚は見せたものの、結果的には不発に終わった。馬場が敗因なのか、展開が向かなかったのかは判然としない面もあるが、条件さえ合えばもっと走れるはずの馬だけに、残念としか言いようがない。

 11着のアドマイヤグルーヴは、やはり牡馬の一線級でははっきり力不足だし、この距離で折り合いに苦戦しているようでは問題外。限定戦に戻ってやり直しだろう。ヒシミラクルは終始折り合いを欠いてレースにならなかったし、そもそも下見の気配も全盛期に比べるとやや物足りなかった。シルクフェイマスはとりあえず馬場が敗因といったところで、能力面の衰えがあるのかは断定できない。次走が試金石ということになりそうだ。