岩手県競馬組合、経営改革の実行計画を発表

 2004年度末見込みで144億円の累積赤字を抱え、経営改善が急務となっている岩手県競馬組合は、11月20日、民間委託などを認める2005年1月施行の改正競馬法を活用した事業委託を柱とする経営改革の実行計画をまとめた。

 今回の実行計画では、組合と振興公社の一体化・営業戦略による増収・改正競馬法に伴う民間委託や広域連携による商圏拡大・徹底したコスト削減・企業会計導入によるコスト管理の迅速化の5つの項目を基本方針に掲げている。

 岩手県競馬組合は、IT関連企業のライブドアを含む複数の企業と交渉を進めており、馬券の発売・払戻業務について、馬場を除く競馬場施設および9ヶ所の場外馬券場を売却・貸与した上での委託と、相手先の施設を利用した委託を見込んでいるという。民間委託が不可能な場合は、2005年度中に場外馬券場の統廃合を検討することとなる。

 また、計画には佐賀県競馬組合および荒尾競馬組合との事業連携も盛り込まれている。2006年度以降、馬券発売の共同システムを構築し、新たに三連複・三連単を導入し、共同の場外馬券場の設置も検討する。さらに、インターネットを使った馬券発売や、JRA日本中央競馬会主催レースの受託発売も順次手掛けていく計画のようだ。2005年度の開催日数は、現行より6日間多い年間延べ126日とし、水沢競馬場の開催数を増やすという。

 さらにコスト削減のため、岩手県競馬組合と、施設の管理など競馬開催の補完業務を行っている岩手県競馬振興公社の組織を統合。約120人の職員を、2005年3月末までに約3割減の80人とする大幅な人員削減に踏み切る。改正競馬法では、主催者固有の事務を開催日時の決定などの根幹部分に限定しており、出走受付や着順判定といったレースに関わる部分は公益法人への委託を認めていることから、岩手県競馬組合を法律に関わる部分だけを行う形式的な組織とすることで、今回の人員削減が可能となったようだ。コスト削減の目標は、9月に発表された基本方針の数値からさらに上積みし、2005年度からの3年間で24億年の削減を目標とする。2005年度の削減目標は17億円で、具体的には開催業務や組織の合理化で5億円、委託料の合理化で6億円のコスト削減を目指すという。

 このほか、盛岡競馬場(オーロパーク)などを活用したイベントや女性限定の競馬入門教室の開催による新たなファン層の獲得を目指すことや、パチンコ店などにおける場外馬券場の設置の検討など、積極的な売り上げ向上策も講じられている。

 岩手県競馬組合は、今回の実行計画により、2006年度の単年度収支の均衡と、2016年度の累積赤字解消を目指す。また、今回の計画では、岩手県に対し、つなぎ資金として50億円の財政支援を要請している。これは、借入れコストの縮減や安定的な資金調達のため。年度毎に一定の利子をつけて返済する方式を採る。

 なお、構成団体の谷岡裕明盛岡市長、高橋光夫水沢市長、柴田哲岩手県競馬組合副管理者とと今回の計画をまとめ、記者会見に臨んだ増田寛也岩手県知事は、計画を確実に実行に移し、軌道に乗せることが自らの責務として、改革へ不退転の決意で臨む姿勢を示した。その一方で、収支改善が見込めない場合には、2005年度あるいは2006年度中にも岩手競馬の廃止を検討する可能性もあるという考えも示している。【河北新報】【岩手日報】【岩手日報】【岩手日報】【毎日新聞岩手版】【朝日新聞岩手版】

 経営改革の実行計画がまとまったことを受け、岩手県は、11月25日、この問題について県議に対する説明会を開催したと伝えられている。岩手県は、岩手県競馬組合から要請された50億円の貸し付けについて、一般会計補正予算案として12月議会に追加提案する予定としており、それについて説明がなされたようだ。

 これに対し、県議側は、今回の融資要請が岩手県競馬組合議会に図られていないという手続上の問題や、実行計画の実効性に疑問があるなどとし、融資を納得できるような十分な資料の提出を求めた模様だ。【毎日新聞岩手版】【岩手日報】

 また、この日、増田寛也岩手県知事は、定例記者会見を行い、民間の力を取り入れられる改正競馬法を生かし、もう一度チャンスを与えて欲しいとして、議会側の理解を求めたと伝えられている。

 特に、岩手県一般財源から50億円を融資するための補正予算案について、上記のように岩手県議会内に慎重論が出ていることを踏まえ、現在、細部を詰めて検討しているとして、提出時期についても明言を避けたようだ。

 その一方、増田知事は、県議会に岩手競馬廃止派が存在することを認めつつ、これまで岩手県などの財政に貢献してきた実績があることを指摘。改革案を評価し、改正競馬法の趣旨を生かして、県議会にも理解をもらいたいと改めて強調したようだ。【朝日新聞岩手版】