[中央]第40回福島記念(GIII)|優勝:セフティーエンペラ|父:ソヴィエトスター|生産:静内町・フジワラファーム

 秋の福島開催の名物ハンデ重賞、福島記念(GIII)は、単勝6番人気の伏兵セフティーエンペラ(セ5歳)[長谷川浩大騎手、小野幸治厩舎(栗東)]が、先行策から直線で早めに抜け出し、そのまま押し切って優勝した。勝ちタイムは2:00.3。2着に9番人気のミスキャスト、3着に最低人気のラヴァリージェニオが入り、一番人気に推されたコイントスは7着。三連単は857,890円の大波乱となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳以上:福島・芝2000m:ハンデ・曇・良]

 レースは、スタートで一番人気のコイントスが出遅れる波乱のスタート。朝日チャレンジカップ(GIII)3着のメジロマントルがハナを切り、エプソムカップ(GIII)勝ち馬マイネルアムンゼンが係り気味に追走する展開。セフティーエンペラは、抜群の手応えで先行し、5番人気のエリモハリアーが外から一気に捲ってきたのに合わせて進出。若干仕掛けが早いかと思われたが、直線で早目に抜け出し、そのまま後続の追い込みを振り切った。

 ゴール前はゴチャゴチャの激戦となり、2着争いは後方待機から直線大外を回って追い込んだミスキャストが、勝ち馬からアタマ差の2着。昨年の七夕賞4着馬ながら、近二走不振で人気の盲点となっていた最低人気のラヴァリージェニオは、中団待機から直線翌追い込んだもののクビ差及ばず3着。13番人気とこちらも人気薄の2002年の中日新聞杯(GIII)3着馬エーティーダイオーが、好位追走から勝負所で手応え良く進出し、直線もしぶとく伸びて4着。逃げたメジロマントルは、直線半ばで力尽きて5着。

 以下、中山金杯(GIII)勝ち馬アサカディフィートは、後方追走から直線差を詰めたものの6着まで。出遅れた人気のコイントスは、ジックリ最後方で脚を矯め、直線勝負に賭けたが7着まで。勝負所で捲って出たエリモハリアーは、直線失速して9着。AJC杯(GII)勝ち馬ダンツジャッジは、好位追走も休み明けと18kgが堪えたのか勝負所で置かれて10着。JRAへの移籍初戦となった、羽田盃勝ち馬でダービーグランプリ(統一GI)4着のトキノコジローは、例によっての後方待機も勝負所で動いていけず12着。朝日チャレンジカップ(GIII)4着でここは2番人気に推されたカナハラドラゴンは、中団追走も直線伸びずに13着。掛かり気味に先行したマイネルアムンゼンは、直線失速して最下位の16着に沈んだ。

 勝ったセフティーエンペラは、父が、現役時代に1987年の仏・2000ギニー(仏GI)などGIを5勝し、種牡馬としては1996年の仏・2000ギニームーランドロンシャン賞(仏GI)で親仔制覇を達成したAshkalaniなどを輩出、日本では2003年のクイーン賞(統一GIII)勝ち馬メイプルスプリングなどを輩出しているソヴィエトスターで、母がJRA4勝のマチカネポッペア(母父サーペンフロ)という血統構成。2000年のフェブラリーS(GI)、ジャパンカップダート(GI)など重賞を8勝したダートの名馬ウイングアローなどの生産で知られる北海道・静内町フジワラファームの生産で、馬主はウイングアローと同じ池田實氏。3歳1月の京都開催でデビューし、8戦目で初勝利。その後は500万下で低迷が続いたが、5歳となった今期、去勢されて馬が一変。復帰戦の500万下を2着すると、そこから500万下、1000万下を4連勝で一気に突破。準OPへの昇級初戦となった前走の大原Sでも3着と好走し、ここに臨んでいた。

 セフティーエンペラは、夏の北海道シリーズで強い内容で連勝していたが、その勢いをここまで持続し、ついに重賞初制覇。去勢が良かったのか、去勢のための休養の間に馬が成長したのかは分からないが、この夏以降の充実ぶりは素晴らしく、格上挑戦でハンデに恵まれたことを考えればこれくらいは走ってもおかしくないところ。日本での産駒は淡白なスプリンターが大半となっている父ソヴィエトスター産駒の中では珍しい中距離タイプで、これは母系から受け継いだものだろうか。その母系からはタフさも受け継いでいる感じで、既に5歳の秋となるが、今がまさに本格化の時期となったようだ。血統からは平坦向きの印象があるだけに、今後坂のあるコースになった場合にどうかという気もするが、現在の充実振りからすると、今後も活躍が期待できそうだ。

 2着のミスキャストは、福島の最終週らしい外差し有利の馬場と展開に乗じて一気に差してきた。今回は馬場状態とギリギリまで脚を矯めた藤岡騎手の好騎乗に恵まれてのこの結果。もともと2番が利かずアテにならない割には人気が先行するタイプだけに、今回の好走で次回も、となるかは疑問の残るところ。ラヴァリージェニオは完全に人気の盲点となっていたが、元来が根っからの福島巧者。父カコイーシーズ産駒らしく、こういう時計のかかる芝は得意なだけに、今回の好走も全く驚かないところ。本来はもう少し距離があったほうがいいタイプだろうが、今後もある程度上がりのかかる馬場状態や展開になれば、好走が期待できるだろう。むしろ驚いたのはエーティーダイオーの激走。こちらも、福島コースに実績があり、パドックでもよく見えたが、ローカルのGIIIではこれくらい走っておかしくはなかったということか。

 メジロマントルはマイペースで逃げたものの、追ってからが案外。逃げ馬には辛い馬場状態と展開だったこともあるが、昨夏から休養を挟んでの4連勝の影響で、若干過大評価されている嫌いはある。現状はGIIIクラスで展開に恵まれればといったところだろう。アサカディフィートは、こういう荒れた馬場は不向きのようだ。良馬場となれば巻き返しがあっておかしくない。コイントスは、終いは伸びてきているし、差し馬が伸びてきた結果からみれば出遅れはさほど影響していないように思う。とはいえ、前走に続いて今回も枠内でも行儀が悪く、どうもゲート難が慢性化している印象で、今後に向けて不安材料だ。カナハラドラゴンは父アンバーシャダイ産駒だけに荒れ馬場は苦にしないかと思ったが、直線でさっぱり伸びなかった。デキは良く映っただけに、敗因は正直なところ分からない。本来は荒れた馬場は良くないタイプということだろうか。