[中央]第29回エリザベス女王杯|優勝:アドマイヤグルーヴ|父:サンデーサイレンス|生産:早来町・ノーザンファーム

 京都競馬場で行われた牝馬チャンピオン決定戦、エリザベス女王杯(GI)は、2番人気のアドマイヤグルーヴ(牝4歳)[橋田満厩舎(栗東)]が、中団の外目追走から直線早めに抜け出すと、先に抜け出した5番人気のオースミハルカを3/4馬身差し切って優勝した。勝ちタイムは2:13.6。さらに1 1/4馬身差の3着に4番人気のエルノヴァが入り、一番人気に推されたスイープトウショウは5着。三連単は、53,750円の波乱となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [国際・3歳以上・牝馬限定:京都・芝2200m:定量・曇・良]


 なお、3番人気に推されたスティルインラブは好位追走も伸びず9着、10番人気の外国馬ウォートルベリーは15着と大敗した。

 勝ったアドマイヤグルーヴは、父サンデーサイレンス、母が1996年のオークス(GI)、1997年の天皇賞・秋(GI)を制したエアグルーヴ(母父トニービン)という血統。北海道・早来町ノーザンファームの生産で、馬主は「アドマイヤ」の冠号で知られる近藤利一氏。昨年の牝馬クラシック戦線はすべて一番人気に支持されるも、桜花賞(GI)が3着、オークスが7着、秋華賞(GI)は2着に敗退。続くエリザベス女王杯で悲願のGI制覇を達成。今年はマーメイドS(GIII)を制し、前走の天皇賞・秋(GI)では馬場のいい内をついて3着と好走していた。

 アドマイヤグルーヴは、天皇賞・秋からの中一週で状態面が不安だったが、パドックで見る限りはむしろ天皇賞・秋のときよりも良いと思えるほどの絶好の仕上がりで、陣営の仕上げの見事さには脱帽するほかはない。レースに行ってもスローの縦長の展開を絶好位で追走し、直線も武豊騎手がうまく馬場のいいところをついて走ってきており、これなら勝って当然という完璧のレース運びだった。年内は休養し、来年も牡馬への挑戦を続けるとのことだが、牡馬相手となると今回のような楽なレースはさせてもらえないだろうし、今期の一連のレース振りを見るとどうしても最後の踏ん張りが利かない面がある。それだけに、よほど一瞬の決め手が生きるような展開にでも恵まれない限り、牡馬相手では厳しいのではないか。

 2着のオースミハルカは、2番手でうまく宥めてこちらも完璧のレース運びを見せた。最後押し切れなかったのは、やはり若干距離が長かった分だろう。昨シーズンに比べてはっきり力をつけてきており、この結果は展開に恵まれてのものではない。

 3着のエルノヴァは、展開に恵まれない面は若干あったが、ほぼ力は出し切っての内容。4着のエリモピクシーは気性的にこういうレースしかできないという面もあるのだろう。展開次第ではもう少しきわどいレースもできたかもしれないが、こればかりは仕方ない。期待したスイープトウショウは5着。出遅れはいつものことだから仕方がない。ラスト33.2で上がっているだけに力は出しているとの向きもあり、他方でオークスのときのようにある程度はついていくべきだったとの指摘もあるようだ。しかし、今日はパドックからしてイレこんで状態面一息と映ったし、馬場入りしてからの感触も良くなかった。その分、スローと分かっていてもオークスのときのように中団の馬込みに入れる競馬ができなかったという面はあるのではないか。いずれにしても、今回の負けは力負けとは思えず、まだ3歳ということも合わせれば、今後の巻き返しに期待したいところだ。

 もう一頭の期待馬メイショウバトラーは、逃げて見せ場は作ったものの8着。今の逃げ馬ほぼ全滅の今日とコースでは厳しかったか。ただ、同日の9Rでシルクネクサスは(スローの展開に恵まれたとはいえ)逃げて直線馬場の良い真ん中を通って押し切っている。結果論を承知の上で、直線内に行かずにそのまままっすぐ馬場の真ん中を通っていれば、あるいはという気もしないではない。昨年の3歳牝馬三冠を制したスティルインラブは、好位で流れに乗っていたが追ってからがサッパリで9着。完全な力負けというべき内容で、これでは言い訳が立たないところ。もともと完成度の高さとレースセンスで勝ってきたような馬でもあったし、周りの成長につれて苦しくなってきたということだろう。今後の巻き返しは期待できそうにない。