第29回エリザベス女王杯(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

 牝馬チャンピオン決定戦、エリザベス女王杯(GI)が行われる。ここに出走してくれば上位争い間違いなしと思われたファインモーション武豊騎手の悩みを解消するために回避となってしまったのは残念だが、なかなかの粒揃いなメンバーで、好レースが期待できそうだ。

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 巷の評価では昨年のこのレースの勝ち馬で、4歳代表のアドマイヤグルーヴと、今年の秋華賞(GI)勝ち馬スイープトウショウの一騎打ちムード。さしあたりこのどちらを中心と見るかがポイントとなりそうだ。

 秋華賞の時ほどの確信はないものの、今回も中心は◎スイープトウショウに期待する。前回、ローズS(GII)から秋華賞に向けてプラスはあってもマイナスはないとしたが、今回は1Fの距離延長、外回りへの変更、メイショウバトラーの存在で緩みない流れになることが予想されることからすると、追走に脚を使わされて伸び切れないという可能性も捨てきれない。ただ、池添騎手もこの馬に関してはギリギリまで矯めて決め手を生かすのがベストということは掴んでいるはずだし、今回もジックリ矯めての直線勝負だろう。それだけに、先に抜けた組に届かない危険はあっても、切れ負けする可能性は低いように思う。4戦4勝の京都コースなら、信頼性では一枚上と見た。

 一方、アドマイヤグルーヴは、確かにここ3走の内容から一時期のスランプからは脱したように見受けられるし、天皇賞・秋(GI)3着からここでは地力上位と見る向きもあるだろう。ただ、その天皇賞・秋は内が有利な馬場状態と武豊騎手の好騎乗によるものが大きく、3着を額面どおりに受け取れないのは確か。それよりも気になるのは今期の一連のレース振り。毎回のように絶好の手応えで4角を回り、直線で突き抜けるかと思わせながらそこから案外伸びを欠くというレースぶりで詰めを欠いており、今回直線の長い京都の外回りで同じようなレースとなれば、結局伸びそうで伸びきれないというシーンもありそうだ。まして-12kg後の中一週。もともと3歳時から調整に苦労していた馬だけに、やはり状態面は気になるところだ。この馬のためにファインモーションマイルチャンピオンシップに押しやっているだけに、ここで下手な負け方をしたら面子丸潰れの武豊騎手が、なんとしても勝ちに来ると思われるだけに怖いのは確かだが、人気ほどの信頼性があるとは考えにくく、思い切って軽視することにする。

 スイープトウショウを決め手で上回ることは難しいだけに、逆転候補がいるとすれば前に行って抜け出しを図る組。となると、注目したいのは府中牝馬S(GIII)の2頭ということになる。○メイショウバトラーは、今回の出走馬の中では唯一、この一年で牡馬相手の重賞勝ちがある馬だけに(それが小倉大賞典(GIII)としても)底力は侮れない。近走内容からかなり折り合いがついて鞍上の意に沿ったペース配分ができるようになっているし、負けたとはいえ最後まで粘った前走の内容から地力強化は明らか。今回も単騎逃げは濃厚だし、うまく後続の脚を使わせる流れに持ち込めば、まんまの逃げ切りがあってもおかしくない。▲オースミハルカも、この二走で重賞を連勝しているように、昨年からの地力強化が著しい。メイショウバトラーに比べると若干スタミナに難があるように思えるだけに、3番手の評価に留めたが、前走同様うまく2番手で折り合いをつけ、タイミングよく抜け出せば、そのまま押し切る可能性も十分だろう。

 差し馬勢で注目したいのは△エリモピクシー。今期は牡馬相手でも堅実に上位を賑わしているように、こちらも成長著しい1頭。ここまでは仕掛けのタイミングに難があったり展開に恵まれなかったりで詰め切れないでいるが、今回は福永祐一騎手に鞍上を強化してきた辺りに勝負気配が窺える。気性的に距離がどうかの不安はあるが、折り合いに専念して直線勝負に賭ければ何とかカバーできるのではないか。この馬の切れ味を生かす上では平坦で直線の長い京都の外回り、しかも外枠を引いたのはベストの条件だろう。展開によってはまとめて差し切るシーンまで想定しておきたいところだ。

 コース適性という点では△ヤマニンアラバスタも要注意。前走は内回りコースでスローペースの上がり勝負という、この馬にとっては辛い流れになった上に、何の工夫もなく直線だけ脚を伸ばす競馬をしてしまっただけに、切れ負けしたのも仕方のないところ。今回は1Fでも距離が伸びることに加えて、外回りコースに替わり、しかも緩みない流れになる可能性は大。スイープトウショウ相手に逆転は難しいかもしれないが、この馬にとって末脚の生きる条件は揃っているだけに、マークはしておきたいところだ。

 以下、欧州でも時計のかかる馬場で実績があるだけに常識的には厳しいが、父が日本に相性のいいNureyev系だけに一応△ウォートルベリーも押さえる必要はあるか。あとは、ズブズブの追い込み競馬になったときのことを考えて△マイネヌーヴェルまで押さえることにする。

 昨年の牝馬三冠馬スティルインラブは、昨年は全く問題にしなかったオースミハルカメイショウバトラーを相手に、58kgがあったにせよ前走の府中牝馬Sで先着されているようでは、成長を欠いていると考えざるを得ない。そこそこの人気を集めるだろうが、昨年の雪辱を果たすだけの強調材料はなく、軽視することとする。