北関東競馬の消滅は「既定路線」

 競馬タイムズで連載されている宇田川淳氏のコラム「競馬場廃止考」の第17回で、ここのところ存廃論議に揺れている北関東の公営宇都宮競馬、高崎競馬の問題に触れ、これはあくまで「既定路線」として解説している。

 宇田川氏の解説によると、宇都宮競馬については、平成14年11月19日に「栃木県競馬検討委員会」が「平成17年度末までに単年度の黒字が達成できなかった場合は、速やかに競馬事業を廃止すべき」、「経営状況がさらに悪化した場合は、3年間という期限を待たずに廃止すべきである」という内容の報告書を取りまとめ、足利市の平成14年度限りでの競馬廃止決定とあわせて、福田昭夫栃木県知事が報告書に沿った競馬事業への対応を明言している。

 報告書には収支改善計画が添付され、三連勝式の導入、大井と川崎のナイター場外の実施、各種経費削減といった収支改善策を実施したにもかかわらず、平成15年度は19億6000万円強の単年度赤字、16年度も7億円程度の赤字が見込まれ、3年を待たずして使用可能な基金がほとんど底をついた。これを受けて、去る8月25日の「栃木県競馬委員会」は、「平成16年度をもって廃止せざるを得ないと認められる」という意見集約を行い、知事も「真摯に受け止め、今後判断していきたい」とのコメントしている。

 一方、高崎競馬場については、平成15年4月28日、「平成15年度からの2年間で収支均衡の見通しが得られないときは、速やかに廃止の決断をすることが必要」とした報告書が「高崎競馬検討懇談会」から提出され、小寺弘之群馬県知事も「しかるべき時にはしかるべき判断をしていかないといけない」と発言した。また、平成14年10月29日の群馬県議会決算特別委員会では、廃止の目安について、群馬県の畜産課長が「累積赤字がその年度の発売額を上回るような状態になれば、非常に大きな考え方をする時期」と答弁した。

 その後、高崎競馬の運営については、群馬県)は小寺知事を筆頭に競馬に対しては積極派、高崎市は市長をはじめとする市、市議会とも競馬廃止という立場で対立していたが、農水省が今年の法改正で地方競馬統廃合という方向性を示す一方、地方競馬救済のための自治体の要望が握りつぶされるにいたり、群馬県側にも諦めムードが漂いはじめたという。収支改善策の実施によって赤字額こそ圧縮したものの、平成15年度は6億7800万円余りの単年度赤字、累積赤字は50億9000万円を突破した。今年度は、前年度並の売上げを維持しているものの、5億円前後の赤字は避けられず、ついに競馬組合議会も廃止で合意したとみられている。

 宇田川氏の見通しによれば、栃木、群馬両県とも、早ければ9月22日開会の県議会9月定例会で、知事が最終決断を表明することになるという。【競馬タイムズ】

 このように改めて解説を見ると、やはり北関東競馬の先行きについてはかなり厳しい状況といわざるを得ない。昨年の上山競馬廃止のときに比べると、諦めムードが広がっているということもあるのか、存続へ向けての動きがマスメディアも含め今ひとつ盛り上がっていないという観も否めない。これも「既定路線」という状況がそうさせているのだろうか。

 一方、今年の競馬法改正に動いた国会議員、および事実上日本の競馬界の将来について舵取りを担わなければならないJRAも、今回の北関東の存廃問題については全くといっていいほど反応がなく、傍観を決め込んでいる印象を持つ。こうした態度からすると、今回の競馬法改正のいうブロック化による生き残りというのは、結局、大井、園田といった強い地方競馬だけを残して集約することを目指しているのではなかろうか。しかし、吉田照哉氏も以前コラムで指摘しているように、JRA、大井、園田といった「強い」競馬場も、その下にある全国の地方競馬が底辺を支えることによって強さを保っている面は否定できない。単純に「強い」競馬場だけを残せばうまくいくという発想は、やや安易な気がするのは記者だけだろうか。

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