2002年宝塚記念(GI)優勝馬ダンツフレームが、公営荒尾競馬で現役復帰へ

 2002年の宝塚記念(GI)を勝ち、昨年9月に故障のため現役を引退したはずのダンツフレーム(牡6歳)が、公営荒尾競馬で現役復帰する方向で調整されていることが明らかになった。同馬は、既に9月1日付で検疫を受け、荒尾競馬場(宇都宮徳一厩舎)に入厩済みで、10月のレース復帰を視野に入れて調整されているとのこと。

 ダンツフレームは、父が名種牡馬ブライアンズタイム、母が1993年のオークストライアル(GII)で4着したインターピレネー(母父サンキリコ)で、全兄に2001年の京都ジャンプS(JGIII)2着のゼンノペッパーがいるという血統構成。北海道・浦河町の信岡牧場による生産で、馬主は山元哲二氏。

 旧3歳の6月に栗東・山内厩舎からデビューし、折り返しの新馬で初勝利。3歳時はアーリントンカップ(GIII)で重賞初制覇を果たしてクラシック路線に乗ると、皐月賞(GI)、日本ダービー(GI)とも2着と健闘。その後も常にトップクラスで上位を賑わしながらも、あと一歩で栄冠をつかみ損ねていたが、4歳時の宝塚記念(国際GI)で、ついに待望のGI制覇を達成した。

 その後、昨年の9月17日、調教中に右前浅屈腱炎を発症。すぐさま同年9月24日付で馬名登録を抹消された。当初は、種牡馬入りを予定していると伝えられていたが、結局、行先未定のまま北海道・静内町のヤマダステーブルで繋養されていた。

 今回の現役復帰に際しては、当初は公営浦和競馬の岡田一男厩舎で復帰する予定だったが、南関東の規則で長期休養中の馬の新規入厩ができないとされているため、荒尾で1走して南関東への入厩の権利を取ることになった模様だ。【荒尾競馬公式】【Google News】

 ダンツフレームの登録抹消後の動向については、当初種牡馬入りと伝えられていたにもかかわらず一向に種牡馬登録される気配がなく、一時は行方不明などとも言われて一部で懸念をもたれていたが、結果として現役復帰ということになった。GI級勝ち馬でこうした経緯をたどる馬は、報道でも言われているように最近では非常に珍しいことと思われる。

 登録抹消後の動向が判然としなかった点については、おそらくあまりに急な登録抹消だったため(注記1)、水面下では(種牡馬としての売却を含め)その後の予定について話が進められていたのが表立って来なかったということであろう。

 今回、現役復帰となった経緯については、一部で推察されているように種牡馬入りの条件面で折り合いがつかなかったということもあり得るだろうし(注記2)、現役競走馬としてまだまだやれると思っていたにもかかわらず登録を抹消してしまったため、地方競馬で再起を図ることにしたという可能性もある(注記3)。

 ダンツフレームが、全盛期に比べてどれだけの能力を維持しているのかは、現時点では窺い知ることはできないが、願わくば再び強いレースを見せてくれることを期待したい。また、ジャングルポケットクロフネらとともに一時代を築いた馬にも拘らず、非社台系というだけで種牡馬にもなれないというのであるとすると、父がサンデーサイレンスでさえあれば障害馬でも条件馬でも種牡馬入りできることと対照して、あまりにも寂しいことではあるわけで、なんとかその血を残す道が開けることを期待したいところだ。

 注記1:
 大抵の場合、このクラスの馬であればその後の予定を詰めた上で登録抹消となるはずであるが、9月という時期から察するに、(全くの邪推ではあるが)とりあえず新しい2歳馬を入れるためにさっさと登録を抹消したかったのであろうか。

 注記2:
 少しでも客観的な資料を抽出したいと考え、集めてみた。
 *国内の主要スタリオンステーションにおける2004年度の父ブライアンズタイム系の種牡馬配置は下記の通り。
 日本軽種馬協会繋養:なし
 早来町社台スタリオンステーションタニノギムレット
 門別町ブリーダーズスタリオンステーション:なし
 門別町日高軽種馬農協門別種馬場:なし
 新冠町・ビッグレッドファームマイネルマックス
 新冠町・優駿スタリオンステーションマヤノトップガンシルクジャスティス
 静内町レックススタッド:なし
 静内町アロースタッドブライアンズタイムサニーブライアントーホウエンペラー
 静内町静内スタリオンステーション:なし
 浦河町日高スタリオンステーションフサイチブライアン
 浦河町イーストスタッド:なし
 浦河町社台スタリオンステーション荻伏:ビワタケヒデ
 *なお、浦河町内国産種牡馬のシンジケートが組まれたという話題は、最近聞かない。
 *また、浦河町で繋養されているシンジケート種牡馬は、輸入種牡馬を除くと、メイショウドトウリンドシェーバーオースミジェットヤシマジャパンサンデーウェルの5頭のみ。スーパークリークについては、2003年度はシンジケート所有馬となっているが、2004年度もシンジケートが存続しているか未確認。
 *ちなみに、2004年供用開始の新種牡馬でシンジケートが組まれたのはアグネスデジタルシンボリクリスエスグランデラムーンバラッドワイルドラッシュの5頭のみ。
 *日高軽種馬農協種牡馬として繋養されるためには、組合へ売却するか、個人所有のまま預託する方法がある。
 *日本軽種馬協会種牡馬として繋養されるためには、協会に売却する必要がある。なお、山元氏の持ち馬からはダンツシアトルが買い取られた前歴がある。

 注記3:
 現に、最近のJRAの調教師は厩舎の回転を重視するため、故障で長期休養を余儀なくされる馬がすぐに抹消され、まだやれると思っている馬主(あるいは生産牧場)側が地方競馬をステップに再起を目指すというケースはままあるようだ。