第129回天皇賞・春(GI)直前展望―MilkyHorse.com本紙による分析と展開

【JRA日本中央競馬会】 今年の春の古馬長距離王者の決定戦、天皇賞・春(GI)が行われる。今年は、前年の菊花賞(GI)の1〜4着馬が揃って順調に駒を進め、特に1、2着馬が前哨戦の阪神大賞典(GII)を一騎打ちで上位を占めるなど、至って順当ムード。穴党には全く出番がなさそうに見える。

 とはいえ、それでは面白くも何ともないので、無理矢理穴予想をひねり出すとすれば、という前提で展望を組み立ててみたい。

 穴党にとって数少ないよりどころとなるのは、今年の天皇賞・春がフルゲートで行われることだろう。一般的にも多頭数の方が紛れが多くなるところだが、天皇賞・春もその例外ではないようで、ヒシミラクルが勝ち、サンライズジャガーが2着に飛び込んで万馬券となった昨年や、ライスシャワーが復活してステージチャンプが2着に入った1995年など、フルゲートになると波乱の要素は強まるようだ。そして、これらの年に共通するのは道中の展開が少なからず乱れ、上がりのかかる展開になってスタミナ自慢のステイヤーが台頭し、穴が出るというパターンである。昨年は父サッカーボーイ産駒ヒシミラクル→父リアルシャダイ産駒サンライズジャガーで決まり、1995年に到っては父リアルシャダイ産駒のワン・ツー・スリーとなっている。

 この仮定を前提にして展望すると、狙ってみたくなる穴馬は◎チャクラだろう。3歳時からクラシック路線でそうも差のないレースを続けながら、どうしても瞬発力で見劣る面があり勝ちきれなかったが、3600mのステイヤーズS(GII)で持ち前のスタミナを発揮して重賞初制覇。このレースでは上がりもまずまずまとめていて、ある程度の瞬発力勝負になっても対応できるところを見せたのは成長の証。前走の日経賞(GII)も、休み明けの上に若干距離不足だったことを思えば0.4秒差の4着は及第点。叩いての上積みと距離延長のプラス面を考えれば、少なくともゼンノロブロイあたりは十分逆転の圏内で、後はスタミナがフルに生きる展開になればだ。

 相手にはやはり○昨年の2着馬サンライズジャガーだろう。前走の日経賞はいいところがなかったが、これは仕上がり途上とスローペースで展開が不向きだったことによるもの。昨年も阪神大賞典10着から一変して巻き返しており、末脚の生きる展開になれば昨年の再現があっておかしくはないだろう。

 4歳4強の中ではやはり阪神大賞典組の2頭が有力ということになるだろうか。ただ、リンカーンは常に崩れないレースはしているものの、ここ一番で勝ち切れていないのが少し気になるところ。スタミナと底力を問われる我慢比べになると勝負弱さを露呈しそうな面もあり、できれば阪神大賞典の時のようなスローペースの瞬発力勝負に持ち込みたいのではないか。逆に、ザッツザプレンティは、スタミナ勝負になっての逆転に望みをつなぎたいクチだろう。ただ、気になるのは阪神大賞典の2着馬が天皇賞で逆転した例が近年はほとんどないということ。前走のレース内容からは展開一つで逆転と見えるのだが、実際にそう見せながら結局逆転できず、むしろ不可解な凡走に終わった例も少なくないのが引っ掛かるところだ。昨年の二冠馬ネオユニヴァースは、日本ダービー(GI)を勝って以降のレース内容に成長力が感じられないのが不満。前走の大阪杯(GII)にしても、マグナーテンに差し返されるようなところを見せているのでは正直GIではどうかと思う。菊花賞の内容から、3200mがベストとも思えず、人気になるなら嫌って妙味ありだろう。関東馬ゼンノロブロイも、菊花賞有馬記念の内容から、正直成長力に欠いているように思う。特に有馬記念は、先に動いて前を潰しに行ったリンカーンさえ捕まえられない情けない内容。こちらも中距離ベストで3200mは長いと思われるだけに、人気があるなら嫌って妙味ありだろう。むしろ、得意の京都コース、スタミナ比べ、上がりのかかる展開となれば、ファストタテヤマの方が怖いのではないか。

 上がり馬のシルクフェイマスも注目を集めている一頭だが、5連勝とはいっても一線級との手合わせがない点がどうか。それなら、むしろ同じ上がり馬でも前走でゼンノロブロイを負かしている△ウインジェネラーレの方が面白いように思う。父タマモクロスの成長力を受け継いでおり、このまま一気に頂点に行く可能性もゼロではないだろう。

 あと、スタミナタイプの乱戦向けといえば△ナリタセンチュリーあたりか。近走のズブいレース振りからは距離延長は大歓迎と思われる。実績からは明らかに一枚落ちるが、距離延長でどこまで変わるか。ただ、この馬は主戦の田島裕和騎手が大事に大事に乗っていたように、非常に難しい馬。いかな名手吉田稔騎手でも、テン乗りでいきなり能力全快と行けるかは微妙かもしれない。あと、△カンファーベストもこれまでの成績は中距離に集中しているが、父アンバーシャダイ、母父シンザンというコテコテの内国産血統は、いかにも長距離の底力勝負歓迎と見える。混戦になれば要注意だ。