"Japan's Underdogs Cheer Plucky Mare"―ハルウララ嬢が2004年3月27日付Washington Post紙の一面記事に登場

 【Washington Post】 2004年3月27日付の米国ワシントン・ポスト紙が、3月22日に武豊騎手が騎乗して106連敗した公営高知競馬・ハルウララ嬢(牝7歳)について、1面に写真付きで特集記事を掲載した。

 ※Washingtonpost.comで記事全文(英語)を参照するためには、無料の会員登録が必要です。

 記事は、「"Japan's most celebrated jockey -Yutaka Take -"が"Splendid Spring(ハルウララの馬名英訳)"に騎乗するため3月22日に"an oceanside horse track"に現れた」、「同馬が106連敗目をするレースを観戦しに"over the 13,000"が押しかけ、同馬の的中しない単勝馬券に対して"a record $1.2 million"が投じられた」、と当日の模様を伝えている。

 "Splendid Spring fever"の現況についても、"three hot-selling books, DVDs, CDs, dolls, stuffed toys, even cellular phone holders." "A beer company features the horse in a commercial. TV stations have aired documentaries about her life. A full-length movie is in the making."とメディアミックス展開の加熱ぶりを報道。

 それにしても、"Hello Kitty has become her new sponsor. "という一文の意味するところは、何だろうか。3月22日から高知競馬場などで発売を開始したハローキティー&ハルウララ・グッズといえばこれらである。2004年3月17日付毎日新聞によると、ハローキティーの発売元サンリオが「ハルウララ」の商標登録をしているとのことだが、どうやらその際に馬主側から商標権を買い取ったものと思われる。

 閑話休題

 ハルウララに熱中する日本人の心理については、現地観戦者に対するインタビューを元に"She is like so many Japanese who keep trying their best but can't manage to win deserved credit. With the recession, the competition in the workplace is getting worse, and there's always someone younger, someone faster. But we keep staying in the race anyway, just like she does."と解説。要するに、「現在の日本人はかつてない不況下で経済的・社会的な挫折に直面している。そんな中で、たとえ勝ち組になれなくても"try your best!"という心がけ自体に価値があるのだ、と日本人は自らの不遇をハルウララと重ね合わせて慰めている」ことになっているらしい。

 さらに記事は、日本の代表的な映画として「寅さん」シリーズを引き合いに出して、"Though he(Tora-san) befriends many lovely women, he never gets the girl. "という設定の「寅さん」が国民的人気を誇ったように、もともと日本人は努力しても報われないキャラクターに対して愛着を抱くものなのだ、とハルウララ・ブームの背景に日本文化ならではの特色があると指摘。

 その他にも、日本には"losers are winners"ということわざがあり、その背景として、前世紀においては第二次世界大戦での敗戦が日本人の共通経験だったように、今世紀初頭の日本人は経済的敗北を経験として共有しつつある、という旨を指摘する岸田秀和光大学表現学部表現文化学科教授(専攻は精神分析、ただし2004年3月限りで定年退職)のコメントを掲載するなど、盛りだくさんな内容となっている。

 それにしても、暗い世相を象徴させたいだけならば、馬以外の分野でやってもらいたいところではあるが、何はともあれ、この記事が、ハルウララ嬢のブーム加熱の背景を、競馬界における「優勝劣敗」観とは異なる見地から説明を試みようとしているという点で、非常に興味深い考察であることには違いない。