モノポライザーで確勝!!究極の馬を倒すのは魔物の力のみ!?

 天皇賞・秋の前日売り単勝オッズは、2002年の年度代表馬シンボリクリスエス単勝330円と1番人気に支持され、ローエングリンアグネスデジタルエイシンプレストンがそれに続く、外国産馬持込馬優勢の展開だ。その一方、今年のG1戦線で例年以上の猛威を振るうサンデーサイレンス産駒は、最近のG1戦線では5頭出し、6頭出しが当たり前だったにも関わらず、この天皇賞・秋に限ってはわずかに3頭だけ、人気も6番人気が最高、と旋風も一息といった感がある。しかし、こんなときにこそ底力を発揮するのがスーパーサイヤーのスーパーサイヤーたるゆえん。天皇賞・秋でまたもやファンをあっといわせるサンデーサイレンス産駒の真打は、既に決まっていた―。

 前日売りの単勝を見て、驚いたファンは少なくないはずだ。あるJRA関係者は、

「まさかモノポライザー単勝10倍を切るとは」

と意外な印象を隠さない。単勝890円で6番人気のモノポライザーは、これまで通算12戦5勝。前走の大原ステークスを勝っているとはいえ、このレースは準オープン。重賞出走歴は6度あるものの、最高着順はスワンステークス京都金杯の5着。途中6ヶ月の骨折休養を経た復帰2戦目の馬が、古馬の最高峰を決するレースで、国外も含めてG1を4勝しているエイシンプレストン、やはり国内G1を2勝しているイーグルカフェに迫る4番人気だというのだから、これは異例のことといえるだろう。

 しかし、その一方で正反対の説もある。

「いかにも過剰人気に見えて、実はねらい目」

 そう語るのは、誰もが予想しない買い目で勝負し、多くのレースで万馬券をゲットしてきた伝説の馬券師だ。

「サンデー産駒の1番人気、それも社台グループの生産馬で、武豊。こんな馬で単勝が10倍近くつくチャンスなんて、もう2度とない。馬連馬単のヒモさえ間違わなければ、万馬券だってありうる」

 相場の世界には「まだはもう、もうはまだ」という格言があるというが、重賞未勝利で誰もが過剰人気と思うモノポライザーこそ、究極のねらい目だというのだ。

 もともとサンデーサイレンス産駒は、本番に圧倒的に強いという特徴がある。同じ天皇賞・秋では、スペシャルウィークが前哨戦の京都大賞典で惨敗し、「終わった」と言われながら本番で鮮やかに復活し、天皇賞春秋連覇を達成したのは記憶に新しいところだ。

 まして、モノポライザーは史上最強の名牝エアグルーヴの半妹という超良血。姉は、同じ天皇賞・秋を舞台に強豪バブルガムフェローとの一騎打ちを制し、プリティキャスト以来の牝馬による天皇賞制覇の偉業を成し遂げた。エアグルーヴの父はトニービンだったが、父がトニービンから永遠のスーパーサイヤー・サンデーサイレンスに代わったとなれば、もう負ける要素は見当たらない。今年の天皇賞・秋で史上初の「姉弟制覇」が実現する可能性は高いという前掲の馬券師の主張には、説得力がある。

 もっとも、モノポライザーは昨年、皐月賞日本ダービーで人気を背負いながら惨敗した前科がある。しかし、彼の一族を見れば、エアグルーヴ秋華賞ではパドックで入れ込んだ上にレース中に骨折するという悲劇に見舞われたとおり、古馬になって初めて完成するという特徴がある。このことさえ押さえていれば、先に挙げた不安は雲散霧消する。昨年とは違ったモノポライザーの成長の証が前走の大原ステークスであり、最後方から直線だけですべての馬を差し切った豪脚は、たまたま準オープンで繰り出したというだけで、実際には超G1級と評すべきものだった。成長と完成の証をファンの前に披露したモノポライザーが出てくる以上、天皇賞・秋の結果はもう見えたようなものだろう。

 モノポライザーを送り出す橋口弘次郎厩舎からは、他にロサード、ツルマルボーイも出走する3頭出しだ。他の馬たちの動きを牽制し、モノポライザーの勝利をより確かなものとするためのラビットを2頭もつけるというのだから、橋口師の熱の入れようが感じられる。ロサードはサンデー産駒、ツルマルボーイもサンデーの子にして次代を担う種牡馬たることが確約されたダンスインザダーク産駒で、重賞勝ちもある。他の厩舎ならラビットにするということなど考えられず、むしろエースとなりうる実績と実力すら持っている。そんな彼らさえもラビットにしてしまうのが、モノポライザーの大物ぶりの証明だ。サンデーの血、エアグルーヴの一族の輝き恐るべし、といったところである。

「私は、モノポライザーを過大評価していた」

 これは、ダービーで大敗したあとの橋口師のコメントである。しかし、実際にはその後も、モノポライザーのレースはほとんど武騎手が手綱を取っている。日本で唯一世界の競馬に通用するといわれる天才騎手が見限らずここまで信じ続けた器が、ようやく開花の時期を迎えるのだ。それなのに6番人気というならば、配当的にも二度とない妙味であり、ここは買いしかないだろう。

 モノポライザーが大本命なら、対抗は同厩のツルマルボーイ。ラビットとはいっても、展開の動きによっては自ら天下を獲りに行く実力と可能性は十分だ。人気ではモノポライザーを上回っており、菊花賞と同様に「サンデーの子を止めるのはサンデーの孫」という結果に落ち着く可能性は十分ある。

 大穴にはロサード、ファストタテヤマを推すが、万が一サンデーの牙城が崩されるとしたら、もはやカンファーベストあたりが人外の力で突っ込んでくることくらいしか考えられない。カンファーベストアンバーシャダイ×シンザンという化石の生えたような血統であり、本来ならば用なし以外の何者でもないが、かつてカブトヤマ記念郷原洋司騎手の騎乗で1着入線し、しかも大斜行で降着をくらったという意外性がある。もはや究極まで達したサンデーの血による実力主義の理を崩すとしたら、それは物理では説明できない不意打ち、魔物の力を借りるよりほかに方法はない。(夕刊ミルキー編集委員・シエ尻馬文)

 この連載はフィクションであり、夕刊●ジ編集委員・シエ尻●文氏に捧げます。