さようなら〜2002年供用停止種牡馬外伝その18「ザグレブの場合」

 JRHR日本軽種馬登録協会から2002年供用停止種牡馬一覧が公表されたのを受けて、MilkyHorse.comではニュースコンテンツ「文芸欄」の企画として、まよ氏@MiljkyHorse.comの執筆による供用停止種牡馬の馬生を簡単に振り返る外伝を連載します。

 ザグレブ[Zagreb(USA)]→2002年8月15日、アイルランドへ輸出

 1993年生。父は日本ではヒシアマゾンらを輩出してお馴染みのTheatrical、母は日本に輸入され金鯱賞勝ち馬のマロングラッセなどを輩出したウォローを父に持つSophonisbe。母系はドイツの名門牝系で、近親にBCマイルを勝ったSteinlenや凱旋門賞馬Sagaceなどがいる名血。

 3歳になってからデビューし、デビュー戦を圧勝。早くも3戦目でのクラシック挑戦となったアイルランドダービーでは、さすがに単勝21倍という伏兵扱いだったが、パット・シャナハン騎手を背に待機策から残り2ハロンの地点で一気に抜け出し、2着に入ったフランスダービー2着馬のPolaris Flightに6馬身差をつける圧勝を演じた。1番人気に支持されたウォーニングの半弟でイギリスダービー2着馬のDushyantorは伸びを欠いて4着に終わった。

 なお、この年は前年のラムタラに続き、キャリアの浅い馬のあっと驚くダービー制覇が続発。デビューからわずか2ヶ月半でアイルランドダービーを制したザグレブだけでなく、イギリスダービーもデビュー3戦目のShaamitが優勝。さらに、日本のダービーを制したのもデビュー3戦目のフサイチコンコルドだった。

 ザグレブはその後休養。ぶっつけで臨んだ秋の凱旋門賞では3番人気に支持されたものの、エリシオの13着に大敗。結局脚部不安のためそのまま引退した。

 日本で種牡馬入りし、日本の競馬向きとされるTheatricalの仔で、しかもキャリアの浅い段階で活躍しただけに、父同様の活躍が期待されたが、これまで3世代の産駒はスタミナは持ち合わせるものの、ズブくて全くのスピード不足というものがほとんど。残念ながらヨーロッパのクラシックタイプの種牡馬が日本で失敗する典型的なパターンに嵌ってしまった印象だ。

 その意味では今回のアイルランドへの輸出は本馬にとってはむしろ良いことかもしれない。この手のタイプの種牡馬はたまたま素軽さを持ち合わせた仔が出れば、スタミナと底力には不足ないはずなので、残された産駒から一頭くらいは大物を出してくれるものと期待したい。

 ちなみに、ザグレブと入れ替わるように、日本でリース供用された、同じTheatricalを父に持つジェリの産駒が今年からデビューする。はてさてこちらはどうなりますか。