[中央]第56回朝日チャレンジカップ(GIII)|優勝:ワンモアチャッター|父:ペンタイア|生産:白老町・白老ファーム

 9月10日に阪神競馬場で行われた、秋競馬の開幕重賞の朝日チャレンジカップ(GIII)は、単勝一番人気に推されたワンモアチャッター(牡5歳)[福永祐一騎手、友道康夫厩舎(栗東)]が、好位追走から直線の叩き合いを制して優勝した。勝ちタイムは1:59.4。

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳以上・国際:阪神・芝2000m:別定・曇・良]

 レースは、アーリントンカップ(GIII)を制した3歳馬ビッグプラネットがハナに立って引っ張る展開。2003年の京都新聞杯(GII)勝ち馬で、日経新春杯(GII)2着以来の休み明けとなったマーブルチーフが2番手を追走。2002年の朝日杯フューチュリティS(GI)勝ち馬エイシンチャンプ、昨年の福島記念(GIII)勝ち馬セフティーエンペラが先団につけ、人気のワンモアチャッターは引っ掛かるのを好位で懸命に宥めながらの追走となる。日経新春杯勝ち馬のサクラセンチュリーは、例によって後方からの競馬。

 道中は淡々としたペースで流れ、直線を向くと一杯となったビッグプラネットを尻目にセフティーエンペラワンモアチャッターが抜け出しを図る。これに小牧太騎手騎乗で3番人気のツルマルヨカニセが外から、道中中団にいた函館記念(GIII)勝ち馬の父ジェネラス産駒エリモハリアーが馬群を捌いて内から迫ってきたが、ワンモアチャッターがこれらの追撃を振り切って優勝した。

 クビ差の2着にエリモハリアーが入り、3着にツルマルヨカニセ。内から伸びかかったセフティーエンペラは、ラスト伸びを欠いて5着。後方追走から直線内を衝いたサクラセンチュリーは、一瞬突き抜けるかの伸びを見せたが、結局は伸びきれずに6着まで。先行したマーブルチーフビッグプラネットはそれぞれ10着、11着に沈んだ。

 勝ったワンモアチャッターは、父が現役時代に1996年のキングジョージ4世&クイーンエリザベスS(英GI)を制して同年のジャパンカップ(国際GI)に来日(8着)。種牡馬としては昨年の函館記念(GIII)から今年の中山金杯(GIII)、AJC杯(GII)と重賞3連勝中のクラフトワーク、2003年、04年のエプソムカップ(GIII)を連覇したマイネルアムンゼンらを輩出したほか、サウスオーストラリアンダービー(豪GI)勝ち馬Pantaniなどを輩出して南半球でも成功しているペンタイア、母がスケアヘッドライン(母父パドスール)という血統構成。半兄にJRA5勝で1999年のニュージーランドトロフィー4歳S(GII)5着のインターサクセス(父アフリート)、半妹にJRA1勝(現役)のスクリーマー(父エンドスウィープ)、近親に2000年の京都新聞杯(GII)2着のマルカミラーがいる。北海道・白老町白老ファームの生産で、馬主は2002年の東海S(GII)2着馬ワンモアマイライン、1992年のカブトヤマ記念(GIII)勝ち馬ワンモアラブウェイなど「ワンモア」の冠号でおなじみの松井一三氏。2歳の9月に阪神でデビューし、折り返しの新馬で初勝利。3歳時に若草S(OP)で3着と健闘したものの、その後は条件クラスの日々が続いた。しかし、今年の5月に中京開催の小牧特別をレコード勝ちすると、続くフィリピントロフィーも快勝。勢いに乗って臨んだ前走の小倉記念(GIII)でもメイショウカイドウの僅差2着に健闘してここに臨んでいた。

 ワンモアチャッターは、ここへ来て完全に本格化した印象。道中はかなり掛かり気味の追走で、さすがにこれはダメかと思わせたが、それでも直線はしっかり脚を伸ばしてきたように、とにかく今デキが良いのだろう。ただ、やはり気性の問題を解決しないことには大きいところを狙うには厳しいのではないか。現状はGII、GIIIクラスで一杯だろうが、気性が成長すればもう一段の進境も。

 エリモハリアーは、デキ落ちに映った札幌記念(GII)のときとは違い、きっちり立て直して結果を出した。今回はうまく捌いた後藤騎手の手腕に負う所も大きいが、これまで結果の出ていなかった坂コースでも上位争いしたように、完全に本格化ムード。もともと奥行きのある血統だけに、決め手勝負になると厳しいが、底力が問われる厳しい流れなら相手強化でも頑張れるかも。

 ツルマルヨカニセは若干脚を余した印象もあるものの、かといって前に行っても味がない馬だけに、ある意味予定調和的な着順といったところ。展開が向いていなかったわけでもなく、やはりこの詰めの甘さを解消しないとオープンで勝ちきるのは厳しいか。

 安藤勝己騎手騎乗で伏兵視されたセフティーエンペラは、デキも良く映ったしレース運びもほぼ完璧といっていいものだった。これで伸びないのは能力というよりやはり坂がダメなのだろう。この後、得意の平坦コースとなる京都か福島に回れば巻き返せるように思う。

 サクラセンチュリーは休み明けでも仕上がり上々。例によっての後方追走から直線内を衝くのは昨年の鳴尾記念(GII)を制したときと同じパターン。それでいて伸び切れなかったのはやはり陣営が不安視したとおり58kgが堪えたということか。とはいえ、この相手で斤量が堪えたといっていては大きなところを狙うにはちょっと情けないというもの。一叩きと距離延長での変わり身に期待したいところだが、GIクラスの期待をするのはちょっと酷なのかもしれない。

 ビッグプラネットはマイペースで行ったように見えたがラスト失速。休み明けと距離が当座の敗因と考えてよさそうだ。今後折り合いを覚えさせて中距離路線を狙うか、スピードを生かして短距離路線に矛先を向けるか、陣営の手腕に期待したいところだ。(文責:ま)