[中央]第41回新潟記念(GIII)|優勝:ヤマニンアラバスタ|父:ゴールデンフェザント|生産:新冠町・錦岡牧場

 8月28日に新潟競馬場で行われた名物ハンデ重賞の新潟記念(GIII)は、単勝3番人気のヤマニンアラバスタ(牝4歳)[江田照男騎手、星野忍厩舎(美浦)]が、道中中団追走から直線で外に持ち出すと、一気に抜け出して快勝した。勝ちタイムは2:00.1。2002年12月に中国に輸出されたゴールデンフェザントの産駒は、初年度産駒のトキオエクセレントが1997年の青葉賞(GIII)を制して以来、8年ぶりのJRA重賞制覇となった。また、騎手時代に障害の名手として活躍した星野忍調教師は、開業8年目での嬉しい重賞初制覇となった。鞍上の江田照男騎手は、デビューした1990年にサファリオリーブで制して以来、実に15年ぶりの新潟記念勝利となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳以上:新潟・芝2000m:ハンデ・曇・良]

 レースは、逃げ馬不在のなか本来差し脚質の昨年のダイヤモンドS(GIII)3着馬タニノエタニティがハナを切り、1000m通過62.2秒のスローペース。ヤマニンアラバスタは道中中団で折り合いをつけ、直線を向くと外に持ちだし、追い出されてからは1頭違う脚色で抜け出して快勝した。

 激戦となった2着争いは、道中後方待機から直線で内を衝いた七夕賞(GIII)3着の父Machiavellian産駒グラスボンバーが、勝ち馬から2 1/2馬身差離されたものの2着を確保。安藤勝己騎手騎乗のヴィータローザが3着。出遅れて後方追走から直線外を回って追い込んだ昨年のカシオペアS勝ち馬エリモマキシムが5着。昨年の目黒記念(GII)を制した父マヤノトップガン産駒のチャクラは、好位追走から内目を早めに進出したものの、2着争いの中では決め手で見劣り6着。

 人気を背負った2頭は、一番人気に推されたダイワレイダースが、中団追走も折り合いを欠いて直線失速の8着と惨敗。2番人気に推された昨年の京成杯(GIII)勝ち馬フォーカルポイントは、終始掛かり気味の先行となり、直線バッタリの10着に終わった。

 勝ったヤマニンアラバスタは、父が1991年のジャパンカップ(GI)勝ち馬で種牡馬としては1997年の青葉賞(GIII)勝ち馬トキオエクセレントなどを輩出し、2002年に中国に輸出されたゴールデンフェザントで、母は1995年の函館記念(GIII)を2着したヤマニンリコール(母父タマモクロス)という血統構成。「ヤマニン」の冠号でお馴染みの北海道・新冠町の錦岡牧場の自家生産馬で、名義上の馬主は土井肇氏。2歳の8月に新潟でデビューし、3戦目で初勝利。2歳暮れのホープフルS(OP)で牡馬相手に2着と好走するなど、早くから頭角をあらわし、3歳時はフラワーカップ(GIII)でダンスインザムードに肉薄する2着と好走。しかし、クラシック路線では輸送により馬体減に苦しんだほか、秋初戦の紫苑Sでは圧勝劇を演じながら進路妨害で降着の憂き目に遭うなどの不運も重なって不発に終わった。自己条件からの再出発となった今期は今一つのレースが続いていたが、一息入れての降級戦となった前走の佐渡Sを快勝して復活の兆しを見せていた。

 ヤマニンアラバスタは、当初予定していたクイーンS(GIII)を除外になったため新潟ー札幌間の往復の輸送を挟むこととなっただけに馬体減が心配されたが、しっかり追った上での+6kgなら上々。もっとも、下見で見た感じではもっとフックラしてきても良さそうではあったが。レースでは他馬が折り合いに苦労するなか中団でピタリと折り合い、直線では決め手の差を見せつけた。今回は得意の新潟コースでハンデに恵まれたこともあったが、それでも牡馬相手に決め手の差を見せつける完勝は見事。スイープトウショウを除けば古馬牝馬路線は今一つの状況が続いているだけに、課題の輸送と馬体の維持がクリアできれば、エリザベス女王杯(GI)でも十分チャンスが回ってきそうだ。

 グラスボンバーは、前走に続いての重賞好走でGIIIクラスには完全に目処を立てた格好。切れるタイプではないだけに、現状一線級相手となるとどうかだが、GIIIクラスでは今後も堅実な活躍が期待できそうだ。ここ二走は2000mもこなしているが、本質的にはもう少し短い距離が良さそう。

 ヴィータローザは、GIIクラスでも好走できる割にはGIIIで勝ちきれるわけではないという善戦マンに嵌まりつつある。今後も重賞で勝ちきるには展開なり馬場の助けなりが必要となりそうだ。

 エリモマキシムは今回も出遅れが全て。ここのところ出遅れが癖となってきているのは分かっていただけに、福永騎手にはもう少し何とかならなかったかと言いたいところだが、まあ仕方がないだろう。チャクラは見せ場は作ったものの、2000mはやや距離が短かった。とはいえ休み明けとしては悪くない内容だろう。

 人気のダイワレイダースは、七夕賞を勝ったとはいえ、もともと2000mはやや長いと思われていたクチだし、折り合いに課題のあった馬。逃げ馬不在の今回はスローになるのが確実で、折り合い面を考えればこの結果も十分予測できる範囲。今回は、他に主軸となる馬がいなかったと言うこともあったのだろうが、人気になりすぎだろう。フォーカルポイントは下見から相当イレ込んでおり、レースに行ってどうかと思われたが、案の定折り合いを欠いての自滅。力負けというわけではないし、今回だけで2000mは長いとは決め付けられないが、本来脚を矯めての決め手勝負が持ち味だった馬だけに、まずは折り合いをつけてのこの馬の競馬ができるか、もうしばらく様子を見たいところだ。(文責:ま)