[中央]第12回マーチS(GIII)|優勝:クーリンガー|父:フォーティーナイナー|生産:浦河町・浦河日成牧場

 3月27日に中山競馬場で行われたダートのハンデ重賞マーチS(GIII)は、単勝6番人気のクーリンガー(牡6歳)[和田竜二騎手、岩元市三厩舎(栗東)]が、先行策から直線でしぶとく伸びて優勝した。勝ちタイムは1:52.0。2着に8番人気の伏兵サミーミラクルが入り、一番人気に推されたタイキエニグマは12着と大敗。三連単は155,660円の波乱となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [4歳以上:中山・ダート1800m:ハンデ・晴・良]

 レースは、好発を切った伏兵のブラックコンドルがハナに立ち、昨年の南部杯(統一GI)勝ち馬が2番手に控える展開。クーリンガーが3番手につけ、根岸S(GIII)2着のハードクリスタルが好位のインを追走。出負けした人気のタイキエニグマも好位のインからの競馬となる。昨年のユニコーンS(GIII)勝ち馬トップオブワールドが中団のやや後ろからで、昨年のジャパンダートダービー(統一GI)勝ち馬カフェオリンポスガーネットS(GIII)3着のサミーミラクルが後方から追走していくかたちに。

 勝負所では59kgのトップハンデを背負ったユートピアが早めに動き、これにつれて後続もスパート。クーリンガーは3角あたりから鞍上の和田騎手の手が激しく動いて手応えは悪いものの、必死に食いついていく。一方、タイキエニグマハードクリスタルあたりは手応えをなくして一杯に。

 直線は一旦先頭に立ったユートピアをしぶとく伸びたクーリンガーが直線半ばで交わして先頭に。大勢決したかと思われたところで大外から一気にサミーミラクルが追い込んできて、クビ差まで追い詰めたもののクーリンガーが振り切って優勝した。

 2着に追い込んだサミーミラクル、3着にユートピアが流れ込み、後方から追い込んだカフェオリンポスは大勢には影響なしの5着まで。トップオブワールドは直線伸びきれず9着に終わり、ハードクリスタルは10着。人気のタイキエニグマは直線完全に失速して12着に沈んだ。

 勝ったクーリンガーは、父がダートで活躍馬を多数輩出している人気種牡馬のフォーティーナイナー、母が1989年のラスヴァージネスS(米GI)勝ち馬クールアライヴァル(母父Relaunch)という良血馬で、全姉に1999年の葵S(OP)などJRA5勝のクールネージュがいる。北海道・浦河町の浦河日成牧場、馬主の林進氏、岩元市三調教師は、中山大障害を3勝した歴史的名馬ポレールでおなじみのチーム。3歳1月の京都開催でデビューし、3戦目で初勝利。3歳春に昇竜S(OP)を制し、秋のサラブレッドチャレンジカップ(統一GIII)で重賞初制覇。5歳となった昨年は佐賀記念名古屋大賞典と重賞を連覇したほか、暮れには東京大賞典(統一GI)で3着と健闘するなど完全に本格化。6歳となった今期も好調を持続し、前走の名古屋大賞典(統一GIII)で連覇を達成してここに臨んでいた。

 クーリンガーは、これがJRAでの重賞初制覇となるが、統一重賞でのこれまでの活躍ぶりを考えれば、GIIIのここでは順当勝ちといったところか。地味なタイプながら着実に力をつけているし、とにかくしぶといのが持ち味。時計の早い馬場だと決め手で劣るはあるかもしれないが、ある程度時計のかかる馬場ならもうワンランク上を目指すこともできそうに思う。

 2着のサミーミラクルは1800mの距離がどうかと思われたが、うまく脚を矯めて末脚を生かした。実に惜しい競馬だったが、今後に向けては距離面で一定のメドがついたし、収穫のある一戦といえるだろう。ユートピアは59kgを背負いながらも積極策で一旦は先頭に。前走のフェブラリーS(GI)はあくまでも出遅れが敗因で、今なら右回りもそれほど問題がないようだ。カフェオリンポスは5着まで押し上げてきたとはいえ大勢には影響なしの内容で、位置取りが悪かったともいえなくはないが、サミーミラクルがあそこまで伸びているだけにやはり不満の残る内容。トップオブワールドは一瞬伸びかかるようなところは見せたものの、今回も結果が出ず。完全にスランプに陥っており、立て直しには時間がかかるかもしれない。ハードクリスタルはデキもよく映ったし、位置取りは悪くないと見えたが追ってからが案外で、ちょっと敗因がよく分からない。

 人気のタイキエニグマは、出負けして流れに乗れず、揉まれる形となって大敗。今回は上がり馬ということで過剰に人気になりすぎた面もあったようだ。ただ、今回は経験の差が出た面も大きく、下見でもよく映ったように目下好調なのは間違いない。次走、スムーズなレースができることを条件にもう一度期待してみたいところだ。