第71回日本ダービー(東京優駿)(GI)は、キングカメハメハが優勝

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳牡馬牝馬限定:東京・芝2400m:定量・晴・良]

 今年の競馬の祭典日本ダービー(GI)は、単勝一番人気に推されたキングカメハメハ(牡3歳)[安藤勝己騎手、松田国英厩舎(栗東)]が、道中中団追走から勝負所で進出。直線外から一気に抜け出し、後続の追い込みを楽々と振り切って優勝した。勝ちタイムは、東京競馬場改修後のコースレコードであるとともに、従来のダービーレコードを大幅に縮める2:23.3。

 レースは、京成杯(GIII)2着馬のマイネルマクロスが暴走気味の大逃げを打ち、ホッカイドウ競馬から挑戦の皐月賞(GI)2着馬コスモバルクが3番手で追走する流れ。キングカメハメハは道中中団で折り合いをつけ、勝負所で外から青葉賞(GII)勝ち馬ハイアーゲームが進出してきたのに合わせてスパート。直線で外から一気に抜け出し、後続の追撃を楽々と振り切った。

 道中後方2番手追走から直線だけの競馬に賭けた京都新聞杯(GII)勝ち馬ハーツクライが、ハイペースの展開にも恵まれて2着。終始キングカメハメハをマークしていったハイアーゲームは、勝負所で強気に仕掛けていったものの、直線半ばで振り切られ、最後はハーツクライにも交わされての3着。

 皐月賞(GI)勝ち馬ダイワメジャーは、好位追走から直線を向いて先頭に立ちかけたが、そこで脚色がいっぱいとなり6着。

 ハイペースの流れを追走したコスモバルクは、4角で早々と先頭に立ったものの、直線は完全にいっぱいとなり、懸命の粘りも及ばず8着に終わった。

 勝ったキングカメハメハは、 勝ったキングカメハメハは、父Kingmambo、母マンファス(母父Last Tycoon)で、半兄に2000年のサンタアニタダービー(米GI)勝ち馬のThe Deputyがいる血統。昨年11月の京都開催でデビュー勝ちし、続くエリカ賞も勝って2連勝。年明け緒戦の京成杯(GIII)こそフォーカルポイントの3着に敗れたが、その後すみれS(OP)、毎日杯(GIII)と連勝。皐月賞をスキップして臨んだNHKマイルカップ(GI)をレコード勝ちしてここに臨んでいた。

 NHKマイルカップをレコード勝ちしての中2週が懸念されていたが、パドックで見た限りではNHKマイルカップほどのデキではないにしても好調を維持している印象だった。レースでは中団からやや早目の進出となったものの、後続の追撃を全く寄せ付けない完勝で、桁違いのパフォーマンスといっていいものだった。生ぬるいダート馬が大半を占めるものの、エルコンドルパサーや1999年のベルモントS(米GI)勝ち馬Lemon Drop Kidに見るように、一流馬となればとことんまで強いというのが父Kingmambo産駒の特徴だけに、このまま無事で行けば歴史的名馬に近づく活躍も期待できそうだ。これまで、松田国英厩舎は2001年のジャパンカップダート(GI)勝ち馬クロフネ、2002年の日本ダービータニノギムレットなど、素晴らしいパフォーマンスを発揮しながら、道半ばで故障による引退に追い込まれた馬がいるだけに、その経験を糧にして今後の活躍につなげてほしいものである。

 そして、今年の牡馬クラシック路線の主役を務めてきた岡田繁幸総帥率いるマイネル・コスモ軍団についても触れないわけにはいかない。ダービーの結果はコスモバルクの8着が最高で、昨年の朝日杯フューチュリティS(GI)勝ち馬コスモサンビームがレース中に骨折して12着。共同通信杯3歳S(GIII)勝ち馬マイネルデュプレが好位追走も直線失速して13着。マイネルマクロスはオーバーペースで暴走した挙句の16着。きさらぎ賞(GIII)勝ち馬マイネルブルックは故障を発生して競走を中止し、予後不良となるという散々な結果に終わってしまった。

 コスモバルクの敗因は、オーバーペースのマイネルマクロスの逃げを深追いした作戦ミスに尽きるだろう。焦れ込みや東京の暑さが堪えたなど状態面に求める声もあるが、パドックで見た限りでは確かに多少暑さが堪えているのかと見えなくもなかったが、それでも能力が発揮できない状態には見えなかったし、気性面でも皐月賞と比べればひどいようには見えなかった。マイネルマクロスのあの逃げをどうして深追いしてしまったのか(そしてなぜ4角でやたらと後を振り返っていたのか。あれで馬がバランスを崩したようにも見えたが。記者は、手応えが怪しいのでせめて直線で併せる形に持ち込む相手を探そうとしていたと推測するが、真相は不明)は当事者以外には図りかねるが、やはりダービーという大一番でのプレッシャーに加え、皐月賞で前残りを許してしまったこと(さらには一連のGIでの前残り続き)によるトラウマのようなものがあったのだろうか。皐月賞の内容は、結果として前残りを許したものの、同じ内容のレースをすれば、東京の2400mなら確実に差し切れるというものだっただけに、中間陣営からかなり前を意識した発言がなされたことに、前を深追いしての自滅という懸念を記者の心中に生じさせていたが、結果としてその不安が最悪の形で的中してしまった。その意味で、コスモバルクが大外枠を引いてしまいスローで外外を回る形だけは避けたかった皐月賞で出遅れてスローペースを引き出してしまい、今度は好枠を引いて、自分のペースで競馬をすれば(いっそハナに行ってもよかった)ダービーでは暴走気味の逃げを打ってしかもコスモバルクに追いかけさせてしまった(しかも皐月賞の結果からコスモバルク陣営にダービーのレース前から過剰な前に対する意識を生じさせてしまった)マイネルマクロスが、皮肉なことにコスモバルクの敗戦を引き出してしまったといえようか。いずれにしても、今回は決して力負けではないだけに、捲土重来を期待したいところである。

 その他の馬に関し、2着に入ったハーツクライ横山典弘騎手お得意の腹を据えての決め乗りが嵌まった感じ。ただ、この乗り方ではツルマルボーイ同様いつまでたってもGIでは2着どまりの懸念はある。末脚にさらに磨きをかけるか、レース振りに幅を持たせるかしないと厳しいだろう。ハイアーゲームは完全に力を出し切ってのもので、キングカメハメハには完全に力負け。ダイワメジャーは、展開が向かなかったこともあるが、やはり距離が長かったのだろう。血統面からもベストは1600m〜2000mと見る。