日本経済新聞、コラム「退屈な198秒の後で」を掲載

【日本経済新聞】 野元賢一・運動部記者による執筆。イングランディーレが逃げ切った天皇賞・春(GI)について、「まれに見る凡戦」としてレースを批判的に振り返っている。

 まず指摘しているのは、「2000年産世代のレベルに対する疑問」で、昨年のジャパンカップ(国際GI)、有馬記念(GI)、そして今回と今年の明け4歳馬が悉く大差を付けられて敗れている点を挙げ、さらに天皇賞・春での上がりタイムの悪さを挙げて、「(有力馬が牽制して動けなかったのではなく)力のない馬同士が互いを金縛りにしていた」とバッサリ。

 続いて、レースが結果として攻防のない退屈な内容になった要因として、「騎手を問題にせざるを得ない」とし、「今回の場合、最も戦略性が高いはずの乗り手(武豊)が、自分の馬の制御に汲々としていたことが大きいが、武以外に戦略性を感じさせる騎手が少ない」ことが問題であると指摘。最後に、「今回、「恥ずかしいレースをしてしまった」と語った騎手がいた。ヴィータローザ(12着、14番人気)の岩田康誠(兵庫)である。もっと反省すべき人はいたはず。岩田の発言であったことに、問題の核心がある。 」とまとめて、JRAの騎手たちのレースに対する意識の低さを批判する形でまとめている。

 天皇賞・春が結果として気の抜ける内容だったと批判されるのは仕方のないところでしょう。実際、こうした内容になったことは、野元氏の指摘する「四強」といわれた有力4歳勢が実は大して強くなかったということと、後続の騎手たちを手玉に取った横山典弘騎手の好騎乗も大きな要因であると思われますが、あっさり手玉に取られた騎手たちも、批判は甘んじて受け入れなくてはならないでしょう。また、野元氏はあまり深く踏み込んでいませんが、長距離レースの最高峰でありながら、本来中距離型のサンデーサイレンス系の馬達で有力馬が占められて行われることによる破綻という一面もあるのではないでしょうか。そして、これまた野元氏は深くは踏み込まずにいますが、今回の結果を恥ずかしいと反省を口にできるのが岩田騎手だけという状況がなぜ生まれてしまっているのか、よくよく考えてみる必要がある(最近「大事に乗る」という言葉がやたらとJRAの騎手の口をついて出ているように思うのは記者だけでしょうか)のでしょうね。野元氏にはこれらの点についてさらに深い論述をなされることを望みます。