「ドリーム競馬」司会の宮川一郎太氏、HPで「正直、ホントにもう障害なんてやめましょうよ」と発言

 【宮川一郎太HP】 関西テレビの競馬中継「ドリーム競馬」の司会を務める宮川一郎太氏が、自身のHPで、竹本貴志騎手の死亡事故を契機に「正直、ホントにもう障害なんてやめましょうよ。」と発言している。

 これは、宮川氏のHP「Shrine River」内にある「ドリーム競馬」のコーナーにおいて4月4日付で発言したもの。

 宮川氏は、同日の「ドリーム競馬」の番組内で、前日に亡くなった竹本騎手のニュースを伝えたことを受ける形で、「正直、ホントにもう障害なんてやめましょうよ。」と発言。さらに、「かねてから『障害廃止論者』」であったとも述べている。

 その論拠として、「多くの騎手が障害の免許を返上する」こと、「JGIを制した騎手がスターになるわけでもな」いこと、「障害を勝ちまくった馬が種牡馬になる事もない」こと、「昼食を取る人が分散するように、5Rに障害が組まれている」との話を挙げ、「今の科学なら軽くて非常に頑丈なフルフェイスのヘルメットやプロテクターを作るのは簡単で」あり、「せめて障害の騎手はそれを身につけて、レースに臨む」ことが必要であるとしつつ、「イギリスのような名誉も与えられず、単に「平地で勝てなかった馬(馬主)の救済システム」でしかない日本の障害」は、あくまでも最終的にはやめるべきであるとまとめている。

 竹本騎手の死亡事故を契機に、改めて騎手という仕事の危険性が認識されるとともに、日本の障害レースのあり方についてはいくらかの議論が見られたようです。とりわけ、免許取立ての新人騎手が障害レースに騎乗することの是非については2chなどで激しく議論されたようです(この点について、記者は明快にはコメントしかねます。障害も含めた騎手免許試験を直前に受かってきた新人騎手と、免許取得後長らく平地のみに乗り続け、かなりのブランクがあった騎手が初めて障害に騎乗するのと、いずれがより危険か判断いたしかねないためです)が、「障害競走をなくせ」と、競馬関係者、競馬メディア関係者からおおっぴらにコメントされたのは、宮川氏が初めてであると思われます。

 しかし、宮川氏の発言について、記者としてはいくらかの疑問を呈さざるを得ません。まず第一に、ヘルメットやプロテクターの問題については、騎手会等の関係者の努力で可能な限り安全性の高いものが既に装着されているはずであり(現に、現在平地も含めたJRAの騎手が身に着けているプロテクターなどは、障害騎手が海外に遠征した際に日本に持ち帰ったものが元になっていると聞いております)、確かに、今回の事故によってそれでも足りない部分はあったかもしれないにせよ、それは当然今後に活かされるべきであって、障害をやめる云々の問題とは切り離して考えられるべきです。

 次に、宮川氏がおそらくは最大のよりどころとしている、「危険であるにもかかわらず地位が低い障害レースはやめるべき」論についてですが、これもいささか短絡的であるといわざるを得ません。危険であるにもかかわらず、地位が低いという事実認識そのものには(個々人の価値判断に依存する部分が大きいとはいえ)、一般の認識と大きな齟齬はないと思われますが、それが「地位向上を図るべき」という結論につながるのであればストレートに理解できるとしても、なぜそれがやめるという話になるのか。どうも宮川氏の言動からは、障害騎手たちは危険な割に報われないが、自分の生活のため、もしくは馬主のために嫌々障害レースに騎乗しているという認識が支配しているように感じられますが、それは障害騎手及び障害を応援しているファンに対してあまりに礼を失しているのではないでしょうか。また、もし宮川氏の言うように危険でありながら報われない競馬は即やめるべきというのであれば、いつ故障するかも分からないような馬でレースに騎乗しながら、格安の騎乗手当てと賞金に耐えなければならない地方競馬JRAの障害に比べてもはるかに厳しい状況であり、即座にやめるべきということになるはず(例えば、武豊騎手がハルウララ嬢に騎乗したレースなど、宮川氏の論理からすれば、まさに「あってはならない」のでは?)です。しかし、宮川氏からそのような発言がなされたとは過分にして聞いたことがありません。

 さらに、「かねてから「障害廃止論者」」であったという物言いもいかがなものでしょうか。宮川氏が実際、「障害廃止論者」であったかどうかはさておき、そのような言行は特にこれまで見受けられなかったように思われます。記者は関西在住ではなく、「ドリーム競馬」の視聴をしておりませんので、事実認識に誤りがあるかもしれませんが、少なくともグリーンチャンネルの「炎の十番勝負」に出演されていたときには、「障害廃止論者」であることをおくびにも出さずに、普通に中山大障害などの予想をしていたように記憶しております。かねてからの「障害廃止論者」であるなら、そのような機会に全く発言せず、今回このような発言をするのは、自説を述べるにあたって竹本騎手の不幸な事故を利用しているととられてもおかしくはなく、いかにも配慮を欠いているように思われます。

 強調しておきますが、竹本騎手の不幸な事故を契機に、障害レースのあり方(安全配慮や地位の向上など)について、改めて真摯に考えなければなりません。しかし、今回の宮川氏の発言は、あまりに軽率であり、「ドリーム競馬」という関西の主要競馬中継の司会を務めている立場からすれば、配慮に欠くものではないでしょうか。

 追記:なお、この件につき「負け馬@馬耳東風」さんにおいて極めて的確と思われる論評(「埋め草のための1着5000万のGIIを組んだり、海外から騎手が来たりとはとても思えない。」)がなされていることを後日知りました。こちらを参考にされるほうが遥かに有益と思われますのでこの件に興味のある方は一読をお勧めします。