さようなら〜2002年供用停止種牡馬外伝その06「エアダブリンの場合」

エアダブリン(JPN)→2002年12月13日、韓国へ輸出

 三冠馬ナリタブライアンと同期という「同世代の悲劇」に見舞われた、アンラッキーな超良血ステイヤー

 父は初年度産駒がクラシックを席捲したトニービン、母はNijinsky産駒の良血ダンシングキイ、所属が関西の名門・伊藤雄二厩舎ということでデビュー前から評判となった。その評判通り、新馬2戦目で勝ち上がり、続くエリカ賞も連勝して勇躍クラシック路線に乗る。しかし、皐月賞の出走権を賭けた若葉Sでは詰めを欠いてよもやの4着に沈み、皐月賞本番は無念の除外。それでも、この年から重賞に格上げとなった青葉賞を快勝し、ダービー本番でもナリタブライアンには千切られたものの、しぶとく伸びて2着を確保。夏を越し、距離が伸びればの期待を残す。

 ところが、期待を集めた秋緒戦のセントライト記念では、重馬場にも足をとられたか、伏兵ウインドフィールズの3着。2戦目の京都新聞杯では、1.0倍の断然人気に支持されたナリタブライアンが伏兵スターマンに差されて場内が騒然となる中で蚊帳の外の感の3着。本番の菊花賞では痛恨の出負けから流れに乗り切れずに終わり、ナリタブライアン三冠達成の露払いにもなれぬままの3着に終わった。

 それでもなお1番人気に支持されたステイヤーズSで、いよいよ本領発揮とばかりに従来のレコードタイムを5秒以上短縮する大レコードを叩き出すと、続く年明けのダイヤモンドSでも59kgを背負いながら快勝。いよいよ天皇賞での打倒ナリタブライアンに向けてのお膳立てが整ったかに見えた。

 しかし、ナリタブライアンは突然の故障でリタイヤ。ならばと1番人気に支持された春の天皇賞では、押し出された形での主役の座が重荷だったのか、ライスシャワー的場均騎手による乾坤一擲の大駆けの前に5着に沈む。

 次走の宝塚記念3着後、脚部不安で2年近く休養。休み明けのメトロポリタンSを斤量59kgという厳しい条件で2着に入るものの、その後1番人気に支持された目黒記念ではまたしても人気を裏切る3着に終わり、結局そのまま現役を引退した。

 現役時代はここぞというところでの勝負弱さを露呈した感もあったが、父がトニービン、妹にダンスパートナー、弟にダンスインザダークを持つ良血ぶりと、リーズナブルな種付け料が人気を呼び、種牡馬入り後はいきなり150頭以上の交配を集める人気種牡馬となった。

 しかしながら、現在のところ上級馬はまったくといっていいほど現れておらず、今のところは失敗と言われても仕方がない成績に甘んじている。幸い、輸出先となった韓国では、繁殖牝馬の数に比して種牡馬の数が不足気味とのこと。新天地での捲土重来、良血開花に期待したいところである。