[中央]第10回エルムS(GIII)|優勝:パーソナルラッシュ|父:ワイルドラッシュ|生産:米国・Mr. & Mrs. M. L. Woo

 9月3日に札幌競馬場で行われたダート重賞、エルムS(GIII)は、単勝2番人気のパーソナルラッシュ(牡4歳)[藤田伸二騎手、山内研二厩舎(栗東)]が、道中中団追走からおっつけおっつけ進出し、直線もしぶとく伸びて粘る先行勢をギリギリ差し切った。勝ちタイムは1:44.9。パーソナルラッシュは、昨年に続くエルムS2連覇となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳以上:札幌・ダート・1700m:別定・晴・良]

 レースは、条件戦を3連勝してここに臨んだ父スキャン産駒の上がり馬ワンダーハヤブサがハナを切り、道営ホッカイドウ競馬から参戦のシルバーサーベル、昨年のジャパンカップダート(GI)3着馬ジンクライシスが先団を追走。昨年のこのレース5着のカイトヒルウインドが好位につけ、マリーンSを勝ってここに臨んだ一番人気のハードクリスタル、2番人気のパーソナルラッシュは中団からの競馬となる。

 勝負どころにかかるとワンダーハヤブサシルバーサーベルは一杯となり、ジンクライシスが早めに先頭。これをマークするようにカイトヒルウインドも進出。パーソナルラッシュは鞍上の藤田騎手がおっつけどおしながら外を回って進出するが、ハードクリスタルの方はまだ動かず中団のまま。

 直線を向くとジンクライシスカイトヒルウインドが抜け出しての叩き合いとなり、完全にこの2頭で決まるかと思えたが、外を回って進出してきたパーソナルラッシュがジワジワと差を詰め、3頭が並んだところでゴール。ハナハナの接戦をパーソナルラッシュがギリギリ捉えていた。

 ジンクライシスが2着、カイトヒルウインドが3着。人気を集めたハードクリスタルは、直線も伸びきれずに5着に終わった。

 以下、武豊騎手騎乗で3番人気に推されたサイレントディールはスタートで出遅れ、特に見せ場なく6着。函館記念(GIII)4着のマチカネメニモミヨは、後方待機から差を詰めただけの7着。前走KBC杯を買ってここに臨んだエドモンダンデスは、後方侭の8着。3歳馬のドンクールは、好位追走も勝負所で手応えが怪しくなり、4角での不利もあって10着に沈んだ。

 勝ったパーソナルラッシュは、父Wild Rush、母Personally(母父Alydar)という血統構成の米国産馬で、馬主は深見冨朗氏。2歳9月の阪神開催で新馬勝ちし、その後は気性の問題もあってやや伸び悩んでいたが、3歳春に昇竜Sを勝って頭角を現し、ユニコーンS(GIII)で3着。秋は緒戦のエルムS(GIII)を古馬相手に快勝し、続くダービーグランプリ(統一GI)ではレコードで圧勝。さらに、米国に遠征してのBCクラシック(米GI)でも世界の強豪相手に6着と健闘した。帰国後にリズムを崩し、東京大賞典(統一GI)、フェブラリーSと連敗してものの、続くダイオライト記念(統一GII)で復活の勝利。その後は一息入れてここに臨んでいた。

 パーソナルラッシュは、昨年のような快勝とはいかなかったものの、59kgの斤量を背負いながらも最後は力で捩じ伏せた。もともと鉄砲駆けするタイプでもあり、ここでは力が違ったということだろう。勝ちタイムが平凡なのは気にかかるところだが、道中のおっつけどおしの感じや、ダービーグランプリダイオライト記念を勝った時のレース振りから、2000m以上あった方がいいような感じを受ける。それだけに2100mのジャパンカップダートは歓迎だろうし、気性の難しさを出さなければ大いに期待できるのではないか。

 ジンクライシスは正攻法でレースに臨み、一旦は勝ったかと思わせたが最後の最後で捩じ伏せられてしまった。レース内容はそうも悪くなかったし、パーソナルラッシュにハナ差なら少なくとも一時期のスランプは脱したといえそうだ。ただ、この平凡なタイムでも勝ちきれなかったあたり、以前からの詰めの甘さが解消されているのかは疑問も残る。実績的に今後もGI級でも好走が期待できるだろうが、まずは一つキッチリ勝ち切れないと、いつまでも善戦マンで終わる懸念もなくはない。

 カイトヒルウインドは一叩きでキッチリ変わってきた。この相手でこれだけやれれば、いつでも重賞を勝ち負けできるレベルまでは来ていると言えそうだ。ただ、この馬もやや詰めの甘いところがあるだけに、そのあたりが今後の課題となるだろう。

 ハードクリスタルは、+10kgでもそう悪くは映らなかったが、道中の行きっぷりも一息だったし、追っての伸びもなかった。結果的には太目が堪えたということだろう。