もしも、HBA北海道市場で、競落人が落札当日に「ゆう癖」未公表を理由にキャンセルを申し出たとするならば

 http://www.daisakustable.com/cgi-bin/variable/variable.cgi?act=resform&num=81 (大作ステーブル掲示板)
 http://www1.ocn.ne.jp/~saitost/keiba05.9.z.html (2005年9月2日付)

日高軽種馬農業協同組合北海道市場業務規定*1 第20条(売買契約の解除)
4項 せり落とし人は、せり落とした馬について当該馬の上場日に公表のなかった第5項に定める事項を発見した時は、当該馬の売買成立時点から当該市場終了日の翌日より3日以内に、診断書等を附した書面をもって開設者に届け出ることができる。但し、せり落とし人が、販売申込者からせり落とした馬の引渡しを受けた場合はこの限りではない。
5項 第4項で定める事項は、次に掲げるものとする。
 (1)悪癖(さく癖、旋回癖、ゆう癖、身喰い)
 (2)目の異常(白内障、黒内障、緑内障 、月盲)
 (3)関節部の外科手術歴
 (4)開腹手術歴
 (5)去勢
 (6)歯の欠損
 (7)全身麻酔を伴う外科手術歴
 (8)トレーニングセールにあっては喉頭片麻痺による喘鳴症
6項 開設者は、せり落とし人より第4項に定める届け出があった場合、速やかに販売申込者に通知し、開設者または開設者の指定する獣医師が、せり落とし人の届け出た事項について確認し診断結果をせり落とし人に通知する。
7項 せり落とし人は、前項で定めた通知内容が申し出内容と一致した場合、開設者を通じて売買契約を解除することができる。

 市場業務規定の文言を読む限り、落札後に瑕疵担保責任(未公表のゆう癖*2 )を理由に売買契約を解除するのならば、開設者(日高軽種馬農協)又は開設者(日高軽種馬農協)が指定した獣医による確認・診断を経て、結果を競り落とし人に通知する手続(規20条6項)が必要不可欠のように思われます。
 確かに、文言上は「開設者(日高軽種馬農協)」の確認だけで診断結果を通知できるようにも読むことができます。しかし、市場業務規定20条5項各号の列挙事由を踏まえるならば、この市場業務規定20条6項は、去勢(規20条5項5号)や歯の欠損(規20条5項6号)のように獣医学上の知見を要さずとも外形的に判断が可能な事項に限って、獣医学の知見を備えない開設者(日高軽種馬農協)による確認であっても規20条6項7項所定の通知に代えることを許容する趣旨に過ぎず、悪癖(規20条5項1号)、目の異常(規20条5項2号)、喘鳴症(規20条5項8号)その他獣医学上の専門的知見なくして判断できない事項については、開設者(日高軽種馬農協)が指定した「獣医」という専門家による診断でなければ、規20条6項7項所定の通知に充てることを許さない趣旨と考えることが、契約当事者間における合理的意思解釈ではないかと思われます。
 まあ、そういう考え方もあり得るということで!*3
 詳しくは、『先生、馬で裁判所に通うんですか?』で知られる「海川道郎法律事務所」か「ひだかひまわり基金法律事務所*4へ、相談に行くといいんじゃないでしょうか? (文責:ぴ)

先生、馬で裁判所に通うんですか

先生、馬で裁判所に通うんですか

いろいろありますねぇ。 (おうまのバケツ)

 http://www.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=52698&log=20050903

*1:http://www.hba.or.jp/sales/kitei2005.pdf

*2:熊癖、船ゆすり、ともいいます。

*3:そうでない考え方としては、公表事項届出義務違反を理由とする解除(規12条3項→規16条1項2項5項→規20条1項)の余地が考えられます。もっとも、規20条1項「せり落とし人又は販売申込者が、その売買において市場業務規程に違反したときは、開設者を通じて売買契約を解除することができる」は、随分と包括的な条項です。結局は、具体的にどのような市場業務規定違反に問われているのかに応じて、個別具体的な検討を経ない限り、規20条1項解除を正当化することはできないと思われます。そして、獣医学上の知見を要する事項についての市場業務規定(公表事項届出義務)違反の存否については、獣医学上の知見を備えない開設者(日高軽種馬農協)がこれを容易に判定することはできるものではないというべきです。とするならば、規20条1項による解除があり得るとしても、本件の場合では、獣医の診断を経させることが望ましい運用であることには違いありません。もちろん、これもひとつの考え方に過ぎませんので!

*4:http://www.tomamin.co.jp/2005/tp050401.htm