吉田照哉・社台ファーム代表「競争社会における当然の危機感をつねに抱いている」

 http://www2.shadaitc.co.jp/coffee_break/series_report/top/main.asp?article_id=82

 たとえば持ち込み馬の価格や人気が極端に二分化されるようになったことからも明らかです。種付料の相場や繁殖牝馬の価値、そして馬体が総合的に検証され、英表記の父名が放つ漠然としたブランド感覚や希少価値だけでは通用しません。視線の鋭さとは、表面的な情報にとらわれることなく、個々の馬ごとの評価を冷静にかつ正当に下すマーケットの成熟ぶりを意味しているとも言えそうです。(社台グループ月刊誌『Thoroughbred』平成17年8月号)

 社台サラブレッドクラブの今年度募集は、第次募集まで終了した時点の集計で90%を超える口数が埋まっており、昨年度をさらに上回る売れ行きとなったことは確実な情勢とのことです。
 そんな数字にも慢心することなく、最新の馬産マーケット状況を上記の通り分析されている吉田照哉代表は、「『「社台の一人勝ち』と言われることを再三否定しているのは、けっして謙遜などではなく、競争社会における当然の危機感をつねに抱いているからです。これからの真剣勝負はさらに激しさを増していくことでしょう。」と引き締めを怠らないのでした。
 今回のプレゼンテーションのポイントは、実は「競争社会における当然の危機感をつねに抱いているからです」という箇所にあると主張してみたい次第。
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 JBBA日本軽種馬協会生産対策部では、平成17年度の軽種馬生産振興事業の一環として、「軽種馬経営構造改革支援事業」を実施しています*1。これは、軽種馬生産牧場の経営体質を強化する目的で、家族経営の枠を超えて、生産牧場の経営主体を一般企業並みに法人化することを推奨する事業であり、具体的には、経営計画の策定支援や、法人化に伴う必要経費に対して補助金を支給するというものです。
 要するに、今後、日本国内の軽種馬生産事業で生き残っていくためには、経営主体をある一定規模以上に法人化して合理的な企業経営をするほかないという判断が、少なくとも業界団体レベルではコンセンサスを形成しつつあるのが現実というわけです。プチ「社台」化*2するか、廃業しろ*3、と割り切ったとすらいえるでしょう。
 ところが、この事業の利用率が非常に芳しくないという話題が「馬事通信」2005年7月1日号に掲載されていました。その理由付けは、何と、「こっちから吸収する合併は構わないが、吸収される合併はしたくない。株式の持ち合いで共同経営することには抵抗感がある」と考える人が多い、というものでした。
 (`・ω・´)
 21世紀のマーケットブリーダーは、馬産ビジネスという競争社会の真っ只中にいるはずだというのにもかかわらず、御家族をとても大切にする人もいるんなあ、と思いました(投げっぱなし)。 (文責:ぴ)

参考資料|軽種馬生産牧場の経営タイプの諸類型(1999年7月調査値)

経営タイプ 頭数規模 労働力規模 経営形態 分布比率
企業的経営(企業経営) 16頭以上 管理者+従業員 専業 13.4%
企業的経営(家族大経営) 11〜15頭 家族+従業員 専業 17.4%
家族的経営(家族専業経営) 6〜10頭 家族のみ 専業 50.2%
家族的経営(家族複合経営) 1〜5頭 家族のみ 兼業 19.0%

(岩粼徹「競馬社会をみると、日本経済がみえてくる」(源草社、2002年)92頁[岩粼徹・小山良太氏作成資料]より)

競馬社会をみると、日本経済がみえてくる―国際化と馬産地の課題

競馬社会をみると、日本経済がみえてくる―国際化と馬産地の課題

*1:「JBBA NEWS」2005年5月号51頁以下。

*2:下記の軽種馬生産牧場経営タイプでいうと、家族専業経営クラス以下から家族大経営クラス以上への転換が求められているという趣旨です。

*3:http://www.netkeiba.com/breed/column/index.html?param%5Bno%5D=6561