[大井]第12回アフター5スター賞(南関東G3)|優勝:ロッキーアピール|父:ヴァリッドアピール|生産:米国・Mockingbird Farm, Inc

 8月31日に大井競馬場で行われた、一昨年の距離短縮により南関東の「夏の短距離王決定戦」に生まれ変わったトゥインクルレースの名物重賞、アフター5スター賞は、単勝6番人気の伏兵ロッキーアピール(牡7歳)[今野忠成騎手、山崎尋美厩舎(川崎)]が、道中2番手追走から直線半ばで抜け出し、後続の追撃を振り切って優勝した。勝ちタイムは1:11:6。

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 イシノファミリーが躓いて落馬する波乱のスタートの中、好発を切ったロッキーアピールが行きかかるものの、このレース3連覇のかかる父アジュディケーティング産駒のハタノアドニスが内から押して先手を主張する展開に。ここが転入初戦ながら内田博之騎手騎乗で単勝1.8倍と断然の一番人気に推された2003年のグランシャリオカップ(統一GIII)勝ち馬エコルプレイスは先団を追走。これをマークするような位置に昨年のテレビ埼玉杯を勝った父アジュディケーティング産駒のベルモントソレイユがつけ、前走サンタアニタトロフィーで重賞初制覇を飾り、ここは2番人気に推されたスピニングアローは中団から。昨年のこのレースを3着した父ナグルスキー産駒の8歳の古豪ブラウンシャトレーがその後ろからの競馬となった。

 レースは、ハタノアドニスロッキーアピールが並んで平均ペースで進み、勝負どころにかかるとエコルプレイスが馬群を縫って進出。ベルモントソレイユスピニングアローも外目を上がっていき、ブラウンシャトレーは内を狙って上がっていく。

 直線を向くと、内で粘るハタノアドニスロッキーアピールが並びかけていき、軽量50kgの伏兵アンフィーイモンとベルモントソレイユもこれを追いかけていく。直線半ばでロッキーアピールが抜け出すと、逆にベルモントソレイユとアンフィーイモンは伸びが止まり、このまま前2頭で決まるかと思われたが、外目を伸びたスピニングアローハタノアドニスを捉え、ロッキーアピールに1/2馬身差まで迫ったところでゴールとなった。

 勝ったロッキーアピール、1/2馬身差2着のスピニングアローから2馬身差離されての3着争いは、逃げたハタノアドニスが粘りこみ、中団から差してきたブラウンシャトレーは4着まで。見せ場を作ったベルモントソレイユは、ラスト伸びを欠いて5着。

 以下、大井記念2着のウエノマルクンは、後方追走から直線追い込んだものの、さすがにここは忙しく7着まで。先行した昨年の北関東クイーンカップ2着馬アンフィーイモンは、ラスト失速して8着。人気のエコルプレイスは直線バッタリと脚が止まり14着に沈んだ。

 勝ったロッキーアピールは、父がMan o'War→Intent系のValid Appeal、母がDame's Rocketで、母の父がTeddy→Sun Teddy系のTimeless Nativeという血統構成のアメリカ産馬。馬主は金子真人氏。旧3歳の11月に松田国英厩舎(栗東)からデビューし、中京競馬場でデビュー勝ち。3歳時にファルコンS(GIII)で2着に入ったものの、結局重賞勝ちがないまま昨年の秋にJRAの登録を抹消。ホッカイドウ競馬で1戦した後、川崎の山崎尋美厩舎に移籍。移籍後2戦続けて圧勝し、昨年のさきたま杯(統一GIII)で待望の重賞初制覇。7歳となった今期は、初戦の黒船賞(統一GIII)で3着と好走したものの、連覇のかかった続くさきたま杯では10着と大敗。その後は埼玉新聞杯サンタアニタトロフィーを3、4着してここに臨んでいた。

 ロッキーアピールは、もともと下見で良く見せるタイプではあるが、今回はデキが良く映った。何より、気難しいところはあるものの揉まれずに行ければスピードが生きるタイプ。今回に関しては距離短縮が良かったというよりは、外のエコルプレイスが控えてくれたおかげで外の番手を被されずに行けるという理想の展開になったのが大きかった。もともと能力的には統一重賞でも通用するものを持っていることは、過去の実績からも証明されており、今後もあくまで展開一つということになるだろう。

 スピニングアローは、ここへ来て2連勝の勢いの通りに好調を維持しており、今回もしっかり伸びての2着確保。爆発力のあるタイプではないだけに統一重賞クラスで通用するかとなるとなんともだが、南関東の短距離重賞なら今後も堅実に活躍できそうだ。

 ハタノアドニスは、この中間に転厩した影響もあったのか馬体が減ってデキの方も一息に映った。それでもこの馬のスピードを見せて実力の片鱗は示した。年齢的にさすがにピークは過ぎているだろうが、大きな衰えもないようで、ブラウンシャトレーともどもまだまだ見限ることはできないだろう。

 エコルプレイスは、転厩を挟んでの休み明けということを考えても、まずまずの仕上がりであるように映ったが、レースではまさかの失速。これまでの実績から力負けとは到底思えず、もともと気難しいところのある馬だけに、馬群に入っていったのが失敗だったのか、それとも大井の砂が合わなかったのか。前者であれば展開一つで巻き返しもきくだろうが、後者の場合は今後に向けてどう立て直していくかということになるが、さてどうだろう。いずれにしても、今回はちょっと人気になりすぎたと言えそうだ。(文責:ま)