さようなら〜2004年供用停止種牡馬外伝その1「アイシーグルームの場合」
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JRHR日本軽種馬登録協会から2004年供用停止種牡馬一覧が公表されたのを受けて、MilkyHorse.comではニュースコンテンツ「文芸欄」の企画として、まよ氏@MilkyHorse.comの執筆による供用停止種牡馬の馬生を簡単に振り返る外伝を2002年版以来2年ぶりに連載します。
アイシーグルーム(USA)→2004年6月1日、死亡
青森供用ながらJRA重賞勝ち馬を2頭輩出した、隠れた名種牡馬。
1983年生。父は、アラジ、Nashwan、Rainbow Questなど、名馬を多数輩出し、Nasrullah→Red Godのラインを大いに発展させた大種牡馬のBlushing Groom。母はガーデンシティBCH(米GI)を制した活躍馬Hey Babeで、母の父は、ブライアンズタイム、リアルシャダイなど、日本における名種牡馬を多数輩出しているRobertoという血統構成。
現役時代は、3歳時にサンタアニタダービー(米GI)で同年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に輝くこととなるSnow Chiefの2着に入りクラシック路線に浮上。しかし、ケンタッキーダービー(米GI)ではファーディナンドの8着と完敗。その後、芝路線に転じたもののなかなか重賞勝ちのチャンスは巡ってこず、5歳のペンシルヴァニアガヴァナーズS(米GIII)でようやく重賞初制覇となった。結局、重賞勝ちはこの一つで、通算成績31戦7勝の成績を残し、この年一杯で現役を引退した。
現役引退後は種牡馬として輸入され、青森県の東北牧場で供用(後にミウラファームに移動)された。近年はかつての勢いにない青森での供用だけに、交配される牝馬の質・量については決して恵まれたものとは言いがたいものではあっただろうが、その中から1994年の中日スポーツ賞4歳S(GIII)、1996年の中京記念(GIII)などGIIIを3勝し、1993年の朝日杯3歳S(GI)では後の三冠馬ナリタブライアンの5着と健闘したイナズマタカオーや、1998年の函館スプリントS(GIII)、1999年のダービー卿チャレンジトロフィー(GIII)を制し、けれんみのない逃げでファンを沸かせたケイワンバイキングなど、渋い脇役を輩出した。
残念ながらGI級の一流馬を輩出するまでには至らなかったが、青森供用という環境でこれだけの活躍馬を輩出したことは賞賛に値するというべきだろう。Red God、Roberto、Northern Dancerと日本向きの血脈を集めたこの馬の血統に注目し、輸入した関係者の慧眼はお見事というべきである。晩年まで、青森の馬産地では人気種牡馬の1頭として遇されていたようであるし、自身の競走成績を思えば、恵まれた種牡馬生活だったともいえるのではないか。
なお、代表産駒の1頭のケイワンバイキングは、現在、かつて父が供用されていた東北牧場で功労馬として余生を送っているようである(「競走馬のふるさと案内所」より)。 (文責:ま)