[中央]第10回NHKマイルカップ(GI)|優勝:ラインクラフト|父:エンドスウィープ|生産:早来町・ノーザンファーム

 5月8日、東京競馬場で行われたマイルの3歳GI、NHKマイルカップ(GI)は、2番人気のラインクラフト(牝3歳)[福永祐一騎手、瀬戸口勉厩舎(栗東)]が優勝した。勝ちタイムは1:33.6。1 3/4馬身差の2着の10番人気の伏兵デアリングハート、さらにクビ差の3着に、マーガレットSを勝ってここに臨んだ4番人気のアイルラヴァゲインが入り、三連単は63,150円の波乱となった。

 【JRA日本中央競馬会】 [3歳限定:東京・芝1600m:定量・曇・良]

 レースは、昨年の野路菊S勝ち馬で、クリスタルカップ(GIII)5着のエイシンヴァイデンが内枠を利してハナに立ち、クリスタルカップ勝ち馬ディープサマーアーリントンカップ(GIII)勝ち馬ビッグプラネットは控える展開に。前半1000mが59.4秒と道中はかなりのスローペースで進み、好位にいたラインクラフトはそのまま内から進出し、直線半ばでは早くも先頭に立って押し切った。ラインクラフトをマークする形のデアリングハート、中団から外に持ち出したアイルラヴァゲインが懸命に差を詰めにかかったが、スローペースで楽をしていた分前が止まらずそれぞれ2着、3着まで。武豊騎手騎乗で一番人気に推されたペールギュントは、後方待機から追い込んだものの4着まで。3番人気に推されたニュージーランドトロフィー(GII)勝ち馬マイネルハーティーは、このスローペースではどうしようもなく後方儘の12着、先行したビッグプラネットは直線伸びず7着に終わった。

 勝ったラインクラフトは、父エンドスウィープ、母マストビーラヴド(母父サンデーサイレンス)という血統構成。北海道・早来町ノーザンファームの生産で、馬主は大澤繁昌氏。昨年10月の京都開催で新馬勝ち。続くファンタジーS(GIII)を制して臨んだ阪神ジュヴェナイルフィリーズ(GI)は3着に終わったが、今期は緒戦のフィリーズレビュー(GII)、桜花賞(GI)と連勝していた。

 ラインクラフトは、府中コースのマイルGIとは到底思えないようなスローの流れを絶好位につけ、そのまま抜け出しての勝利。この器用さは大したものだし、まがりなりにもGIを連勝しているのだから能力があるのは間違いないが、今回も桜花賞に続いて展開一本の勝利だろう。ただ、この器用さは大きな武器でもあり、今後も牡馬相手でやれるかどうかは微妙だが、器用さの要求される秋の秋華賞(GI)では大いにチャンスがありそうだ。

 2着のデアリングハートはこれこそまさに展開が全て。エンドスウィープ産駒と母父Danzigの馬が府中のマイルでワン・ツーなのだからペースのぬるさが窺い知れるというものだろうか。この馬自身はやはりベストは短距離で、1200〜1400mが理想のように思う。

 3着のアイルラヴァゲインは、後ろから行った組の中では最も好内容の競馬だった。最後脚色が同じになったあたりは、展開が向かなかった分かそれとも若干距離が長かった分か。もう一度この距離でのレースを見てみたいところではある。能力の高さは疑うべくもなく、いつでも重賞を勝てる器だろう。

 ペールギュント武豊騎手で人気を集めたが、根が詰めの甘い馬だけに、展開が向かなければこういう結果になるのも致し方ないところ。そもそも展開に注文がつかない馬ならとっくにGIを勝てていたはずなわけで、今後もGIではパンチ不足に泣きそうだ。

 展開が向いたはずのビッグプラネットは追っ手からがだらしなかった。ディープサマーともども、現状はハナを切ってこそなのかもしれない。

 マイネルハーティーも展開が不向き。それに戦前から指摘があったように、一瞬の足を生かすタイプで、以外に府中コースは向かないのかもしれない。

 今年のNHKマイルカップ桜花賞の上位馬がそのまま流れ込む形でのワン・ツーフィニッシュ。これを歴史的出来事と見る向きもあるが、やはり牝馬がワン・ツーを決めてしまうのは、マイル路線全体の低調振りを示しているものと思わざるをえない。創設当初○外のチャンピオン決定戦だった頃とは明らかに状況が変わっており(クラシックが○外に開放され、購入される○外が以前に比べて中距離型の割合が増えているように感じられることも、マイル路線の低調に拍車をかけているのかもしれない)、このレースのあり方も少し考えなければならない時期に来ているようにも思う。