[盛岡]第17回マイルチャンピオンシップ南部杯(統一GI)|優勝:ユートピア|父:フォーティーナイナー|生産:早来町・ノーザンファーム

 秋のダートマイル王決定戦南部杯(統一GI)は、2番人気のユートピア(牡4歳)[横山典弘騎手、橋口弘次郎厩舎(栗東)]が、スタートからハナを切ってまんまと逃げ切った。勝ちタイムは1:35:9。

 【Keiba.co.jp地方競馬総合サイト】 [盛岡・ダート1600m:曇・やや重]

 レースは、ユートピアと、サマーチャンピオン(統一GIII)勝ち馬ニホンピロサート、OROカップ勝ち馬トキオパーフェクトの先行争いからユートピアがハナを切る展開。トキオパーフェクトが2番手、ニホンピロサートユニコーンS(GIII)勝ち馬トップオブワールドが好位を追走し、昨年の勝ち馬アドマイヤドン、同2着のコアレスハンター、昨年のジャパンダートダービー(統一GI)勝ち馬ビッグウルフが中団を追走していく。

 勝負どころにかかるとアドマイヤドンが徐々に進出し、これをマークするようにビッグウルフも上がっていく。

 直線を向くと、ようやく追い出されたアドマイヤドントキオパーフェクトニホンピロサートを交わしてユートピアに迫るものの、すんなり単騎で逃げたユートピアがそのまま粘りきった。アドマイヤドンは、結局ユートピアを捉えることができず1/2馬身差の2着。直線外から追い込んだビッグウルフが、久々にこの馬らしい末脚を発揮して3着に入った。

 以下、好位追走も直線で存外伸びを欠いたトップオブワールドは4着、岩手代表として臨んだ水沢・金杯勝ち馬のウツミジョーダンがマイペースの中団追走から直線内を衝いて差を詰めて5着。ニホンピロサートは直線失速して6着。コアレスハンターは、直線伸びず7着。トキオパーフェクトは、直線失速して9着。高知から遠征してきた建依別賞勝ち馬ストロングボスは、ここでは相手が強く後方儘の10着に終わった。

 勝ったユートピアは、父がダートの活躍馬を多数輩出している名種牡馬フォーティーナイナー、母がドリームビジョン(母父ノーザンテースト)という血統構成で、半兄に1997年の中京記念(GIII)、函館記念(GIII)を勝ったアロハドリーム(父クリエイター)、半姉に1997年のローズS(GII)2着のメイプルシロップ(父へクタープロテクター)がいるという良血馬。2歳の11月の京都開催でデビューし、折返しの新馬で初勝利。続くシクラメンS(OP)を勝って臨んだ全日本2歳優駿(統一GI)を制してGI初制覇。3歳となった昨年は、毎日杯(GIII)2着から始動し、NHKマイルカップ(GI)4着、ジャパンダートダービー2着とあと一歩でGIに手が届かなかったが、秋のダービーグランプリ(統一GI)を逃げて圧勝。その後はしばらくスランプが続き、今年の安田記念(GI)で4着とようやくこの馬らしさが垣間見られたが、続く北九州記念(GIII)では一番人気を裏切る5着に終わり、その後は一息入れてここを目標に調整されていた。

 ユートピアは、すんなり単騎で行けて、久々にこの馬らしいスピードと粘りを発揮した。今回はアドマイヤドンの仕掛け遅れに助けられた感もあり、早めにこられた場合にどうかという懸念はあるが、自分のペースで競馬をできればやはり力はあるということだろう。こういう気性だけに忙しい競馬は不向きで、府中コースや盛岡コースなど、ゆったりしたペースになりやすい広いコースが向くように思われる。

 アドマイヤドンは、スンナリ行けばしぶといユートピアをマイペースで逃がした挙句仕掛けが遅れた武豊騎手のボーンヘッドも大きかったが、それでも昨年までのような爆発的な伸びが見られなかった。フェブラリーS(GI)で終いを生かす競馬を試して以来、どうも追ってスンナリ反応できないズブい面が出てきているのは気がかり。もともと競り合って強いタイプではないだけに、かつてのような行きっぷりを取り戻せないようなら、今後も取りこぼしがありえそうだ。いずれにせよ、主戦の安藤勝己騎手に手綱が戻る次走が試金石となりそう。

 ビッグウルフは、帝王賞以来久々にこの馬らしさを見せた。とにかく気性的にアテにならない面はあるが、気分よく走ったときの末脚は堅実。これで相手関係が楽になれば確勝というタイプではないが、条件が向けば強敵相手でも好走することもあるだろう。トップオブワールドは、古馬の一線級相手ということを考えればまずまず走っているとはいえるものの、もう少しやれるような期待があっただけにやや期待はずれ。どうも成長を欠いているような気がしないでもなく、しばらくは過大に評価しないほうがいいのかもしれない。ウツミジョーダンは、ゆったりとした流れで追走が楽になり、距離や状態面に問題がある馬がいたことによる入着という面が大きい。着差がそれほど大きくなかったのも、ゆったり流れたことによる面が大きいだろう。少しづつ力をつけているのは確かだが、まずはGIII級で勝ち負けできるようなレベルになっていくことが先だ。ニホンピロサートは距離、コアレスハンターは状態にそれぞれ問題があった。条件が揃えば巻き返す余地はあるだろう。高知最強馬のストロングボスは、テンから行けず自分の競馬ができなかった面もあるように思う。イブキライズアップとの力関係から、GIIIクラスならそこそこやれる力はあるはずだし、今回の経験を今後に活かしてもらいたいところだ。