ウマピロプラズマ病が陽性で確定すれば、殺処分のおそれすらある件

 伝染病感染の疑いが浮上してシンガポールに足止めされているコスモバルク(道営ホッカイドウ競馬、牡=おす=5歳)について、農林水産省は17日、当初「陽性」と伝えられた1次検査の結果は、陽性か陰性かが判然としない状態だったことを明らかにした。
 http://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/news/20060517ie33.htm

 当初、読売新聞がかなり先走って「ウマピロブラズマ病の陽性反応」と報道していた件ですが、結局は上記の通り、二次検査の結果が判明するまで真偽不明の状態にあるというところのようです。しかも実際には、一次検査は精度が高くはなく、陰性でも陽性と出ることがままある(須田鷹雄氏談)らしいので、二次検査待ちといってもそれほど深刻な事態ではないとのことです。
 そんな「ウマピロブラズマ病」についてなのですが、万が一、これが本当に陽性反応ということになると、「日本では発症例がなく、治療法も確立されていないため、帰国のめどが立たない」どころでは済まない話になってしまいます。

家畜伝染病予防法 第17条(殺処分)
1 都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるときは、次に掲げる家畜の所有者に期限を定めて当該家畜を殺すべき旨を命ずることができる。
 1.流行性脳炎狂犬病水胞性口炎リフトバレー熱炭疽、出血性敗血症、ブルセラ病結核病、ヨーネ病ピロブラズマ病、アナプラズマ病、伝達性海綿状脳症、鼻疽、馬伝染性貧血アフリカ馬疫、豚コレラ豚水胞病家きんコレラ、高病原性鳥インフルエンザ、ニユーカツスル病又は家きんサルモネラ感染症患畜
 2.牛肺疫、水胞性口炎リフトバレー熱、出血性敗血症、伝達性海綿状脳症、鼻疽、アフリカ馬疫、豚コレラ豚水胞病家きんコレラ、高病原性鳥インフルエンザ又はニユーカツスル病の疑似患畜
2 家畜の所有者又はその所在が知れないため前項の命令をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。

 ここで、家畜伝染病としての「ピロプラズマ病」とは、農林水産省令で定める病原体によるものに限られますが、罹患対象の家畜は馬と牛であることが明記されています(家畜伝染病予防法2条1項表13)。
 昔、テンポイントの祖母クモワカが伝貧(馬伝染性貧血)と誤診されて殺処分されかけた事件がありましたが、それと類似した事例がコスモバルクの身の上に起きかけているわけです。いずれにせよ、競馬好きのひとは、心臓に悪い毎日を、二次検査の結果が判明する5月24日まで悶々と過ごすはめになりそうですね。やれやれ―。
 多分、スポーツ新聞や競馬マスコミが、この事件について慎重な物言いで報じるに留めていたのは、真偽不明の現段階(一次検査は精度が高くはないらしく、陰性でも陽性と出ることがままある←繰り返し)で本格的に報じることによる波紋の大きさを懸念してのことだったと思われるのですが…。
 読売新聞は容赦ないですね。(文責:ぴ)
 追伸:北海道新聞が読売新聞・第一報の後追い記事を5月18日付で掲載してしまった模様です。ひょっとして、道新の5月18日付朝刊に掲載されるのかしら?